この映画を初めて観たのは40年近く前でしょうか。当時ひとり暮らしをしていた神奈川県の厚木のレンタルビデオ屋さんで2泊3日1000円くらいだったと記憶しています(高っ!)。その後、一年くらい前にレンタルしていますが特別割引で7泊8日50円でした。映画そのものより取り巻く環境の違いに驚きですね

 

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「アラバマ物語」

1962年/アメリカ(129分)

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ロバート・マリガン監督、グレゴリー・ペック主演の法廷ドラマの傑作!

 

 

<監督>

 

ロバート・マリガン

 

以前、”思い出の映画音楽”で紹介した「おもいでの夏」(70)、マックイーンの「マンハッタン物語」(63)、そして、大好きなロック・ハドソンとジーナ・ロロブリジーダのラブコメ「九月になれば」(61)など多数

 

<キャスト>

 

グレゴリー・ペック/アティカス(弁護士)

メアリー・バダム/娘

フィリップ・アルフォード/息子

ジョン・メグナ/兄妹の友だち

 

ブロック・ピーターズ

ロバート・デュヴァル

フランク・オーヴァートン

ローズマリー・マーフィ

 

グレゴリー・ペックは、40年代から70年代に活躍したアメリカの名優で「ローマの休日」(53)での新聞記者役はあまりにも有名ですが、ヒッチコックの「白い恐怖」(45)「子鹿物語」(46)そして、隠れた名作として名高い「渚にて」(59)「頭上の敵機」(49)「マッケンナの黄金」(69)「紳士協定」(47)「大いなる西部」(58)一部ファンに根強い人気の「ナヴァロンの要塞」(61)オカルト映画の快作「オーメン」(76)など多数!娘役のメアリー・バダムは「サタデーナイト・フィーバー」(77)のジョン・バダム監督の妹で、この映画による10才でのアカデミー助演賞にノミネートは、74年テータム・オニールに破られるまで最年少記録でした。そのほか、驚いたのはこの映画デビューのロバート・ディバルで、この10年後に「ゴッドファーザー」(72)にファミリーの弁護士役で出演し、俳優としての地位を固めます

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*以前レビューしています

「ローマの休日」オードリー・ヘプバーン特集

「白い恐怖」ヒッチコック特集

 

 

不況の嵐が吹き荒れる1932年アメリカ南部の町が舞台_

幼い息子と娘を抱える弁護士のアティカス(グレゴリー・ペック)は、親子三人で平穏に暮らしていた。そこへ、暴行事件で訴えられた黒人の弁護を引き受けることになが、偏見の根強い町の人々たちから冷たい目でみられる・・・

「人を理解するには、その人のクツを履いて歩いてみなさい」

 

アメリカの良心を体現した弁護士アティカス(グレゴリー・ペック)が素晴らしく、彼の人柄がそのまま映し出されたような温かい作品です。彼の人柄を語るときに欠かせないのが、物語中盤で、狂犬が家の周りにいて子供たちが危険だと連絡を受けた時、忙しい中にクルマで駆け付け銃で躊躇なく仕留めるところです。悪には敢然と立ち向かう姿、家族を守る姿にためらいがありません。前半は、父と子どもたちの団らんや子どもたちの冒険譚、後半は一変して法廷モノで盛りだくさんながら味わい深い作品です。さらに、音楽の使い方が非常にうまく緊張感もあります

 

▲主演のグレゴリー・ペック

▲裁判で二階で傍聴していた黒人たち

(当時一階での傍聴は白人しか許されなかった)

 

この映画は、主人公の娘であるスカウト(メアリー・バダム)が大人になってからの回想として語られ、子ども目線で描かれています

 

物語は、黒人の人種差別問題が主題ですが、父と子供たちとのドラマでもあります

 

この映画の舞台となる1930年代当時は、今よりも人種差別の厳しいアメリカ南部で、黒人を弁護することになったアティカス(グレゴリー・ペック)は、周囲の心無い人々から中傷を受けることになります

 

「パパが今、弁護をやめたら、お前たちを叱る資格がなくなる」

 

陪審員がすべて白人という被告人にとって絶望的な状況にもかかわらず、アティカス(グレゴリー・ペック)が偏見を糾弾する場面は迫力があり、感動的でもあります。さらに、裁判が終わり、彼が退廷するとき二階で傍聴していた黒人たち(一階には白人しかいなかった)が全員立ち上がって敬意を表するシーンが印象的です

 

この映画の一年後に

「I Have a Dream」(私には夢がある)

人種差別運動のキング牧師のスピーチで有名なワシントン大行進があります。この時代にこの映画が撮られたことが驚きです

 

▲黒人を弁護するアティカスの演説が心を打つ

 

この作品で、主演グレゴリー・ペックは第35回(62年)アカデミー賞主演男優賞を受賞しています

 

この時のノミネートの顔ぶれがすごい!

 

グレゴリー・ペック/「アラバマ物語」

バート・ランカスター/「終身犯」

ジャック・レモン/ 「酒とバラの日々」

マルチェロ・マストロヤンニ/「イタリア式離婚狂想曲」

ピーター・オトゥール/「アラビアのロレンス」

 

フランス映画の名作、セルジュ・ブールギニョンの「シベールの日曜日」が外国語映画賞に輝いており、その他にも以前レビューした「何がジェーンに起こったか?」「奇跡の人」「ミンクの手ざわり」「リバティ・バランスを撃った男」など素晴らしい映画が勢ぞろいした年です。何を見ようかと迷った時に、こうした60年代~のノミネート作品など手にしてはいかがでしょう?

 

*以前レビューしています

「何がジェーンに起こったか?」

 

 

近所に住む「ブー」と呼ばれる怪物?を探す冒険ごっこなど子供たちの他愛ないイタズラの数々と大人の歪んだ世界との対比、そして限りない親子の愛情をわかりやすく描いているのがいいですね。偏見に満ちた時代に父親と子供たちの団欒と冒険譚、そして、社会派ドラマでホームドラマ、法廷ドラマ、ミステリーとして内容はてんこ盛りの物語です

 

偏見に満ちた大人の世界の中に、純粋な子供たちの視線が好対照に描かれています


 

「この映画は何点だ?!」

 

よく友人から「その映画は100点満点中何点だ?」と質問を受けることがあります。かつて25才くらいまで「映画ノート」に批評をかいて、あらゆる角度から点数をつけ総合点を記していました。今はもうそういうことをしておりませんが、もし、点数をつけるのであれば、この映画は「満点(100点)」を付けざるを得ないでしょう。それほど欠点のない(少ない)映画だからです。だからといってそれらの映画がすべて名作かと言うとそれも難しい(笑)ただ、この映画は間違いなく素晴らしい映画です!

 

まさに満点映画!必ず観るべき一本です!

 

この映画では、弁護士としても父親としても決してぶれないアティカス(グレゴリー・ペック)は子供たちのヒーローであり、アメリカの理想の正義の姿です!

 

見どころ満載の古典の名作!

是非ご覧ください!