第八十弾と同じあらすじを

別のAIにお話にして貰ったものです

 

「帰還の火」

十一月の雨が、庁舎のガラスを叩く。
公安第三課・警部補、神崎修司は、
薄暗いオフィスの中で一枚の映像を凝視していた。
映るのは、大学三年生の青年・佐伯直人。
過激思想を掲げる孤独な活動家。
だが彼の通信記録の中に、かつて神崎が追っていた
国際テロ組織〈ハリード〉の暗号が見つかった。

——五年前、神崎は外事第四課の捜査官だった。
〈ハリード〉の日本潜入を追っていた
その最中、妻・玲子と
娘・美月(当時18歳)が誘拐された。
数日後、玲子の遺体だけが「贈られて」きた。
美月の行方は掴めず、捜査も打ち切られ、
神崎は外事から外された。
第三課への異動。
それは、表向きの「更迭」だった。

——あの日から、五年。
娘を奪った組織の残党が、また動き出している。

情報分析班から、新しい報告書が上がった。
アミナ・サリム——二十三歳。中東系の若い女性。
日本に密入国し、〈ハリード〉の残党を
束ねる存在としてマークされている。
そして彼女が、佐伯直人と
頻繁に接触していることも判明した。

神崎の背筋に、冷たいものが走った。
アミナの映像が画面に映し出される。
その横顔を見た瞬間、彼は息を飲んだ。

——似ている。玲子にも、美月にも。
ありえない、と思いながらも、
心の奥の何かがざわつく。
娘は十八で消えた。いま、彼女は二十三。
もし、もしも——。

一週間後。
都内の廃ビルにて、アミナと
佐伯直人の会合が行われるとの情報が入る。
神崎は現場指揮官として突入班を率いた。

夜.
冷たい風が吹き抜ける屋上に、二人の人影。
神崎はスコープ越しに、女性の顔を見た。
——間違いない。あの目は、美月のものだった。

無線が鳴る。

「指揮官、どうします?」

神崎は答えられなかった。
そして、次の瞬間、アミナが静かに振り返った。

「……お父さん。」

その声が、五年前と同じ響きを持っていた。

室内。
神崎は銃を構えながら、
信じられない思いで娘を見つめる。

「美月……なぜだ。どうして、お前が……?」

「〈ハリード〉が私を拾ったの。
 お母さんを殺したのはあの人たち。
だけど、彼らは言ったの。
“父親がすべてを見捨てた”って。」

「違う! 俺は——」

「分かってる。」

美月は微笑んだ。
その瞳には、怒りと悲しみと、
赦しが入り混じっていた。
 
「私は“アミナ”として生きた。殺すために。
でも、あなたの顔を見た瞬間に思い出したの。
お母さんが言ってた——“修司は、
絶対にあきらめない人”だって。」

その直後、背後で爆弾の起動音が鳴った。
佐伯直人が叫ぶ。

「全部終わらせるんだ! 日本も、俺たちも!」

美月が走り出した。

「お父さん、離れて!」

「待て、美月——!」

閃光。爆風。
時間が引き裂かれた。

—夜が明けた。
崩れた瓦礫の中で、神崎は娘を抱いていた。
彼女の手の中には、焼け焦げた起爆装置。
爆弾は作動しなかった。
美月が、止めたのだ。

「……もういいんだ、美月。もう戦うな。」

「お母さんの代わりに、生きてね……」

彼女の唇が、そう動いた。
そして静かに、息が途切れた。


翌日のニュース。
「公安、国内テロを未然に阻止」
その一文だけが、全国に流れた。
誰も知らない。
その影で、五年前の事件がようやく終わったことを。

神崎修司は報告書を閉じ、空を見上げた。
朝の光が、灰色の街を照らしていた。
それは、長い闇の果てに灯った、

ほんの小さな“帰還の火”だった。




 

同じあらすじを2つのAIで

それぞれのお話に作り上げて貰いました

 

因みにこのあらすじの元は以前 自分が見た夢です

起きてからメモに書いておいて

それを元にあらすじを作りました

 

# 影の交錯

雨が窓を叩く音が、桐生誠の意識を現実に引き戻した。
警視庁公安部第三課の薄暗いオフィスで、
彼は監視カメラの映像を凝視していた。
画面に映るのは、都内の大学に通う二十二歳の学生、
柴田健太。
三か月前から単独テロ実行犯として
内偵を続けている人物だ。

「桐生さん、これを」

後輩の川島が資料を差し出した。
入国管理局からの情報だ。
三日前、成田空港から入国した外国人のリスト。
その中に、桐生の目が釘付けになった名前があった。

エミリア・ハミルトン。
二十三歳、イギリス国籍。
表向きは語学教師として来日。

だが、桐生の直感が警鐘を鳴らしていた。

「川島、この女性の行動を洗え」

桐生の声は低く、抑制されていた。
五年前、
外事第四課で国際テロ組織を追っていた頃の記憶が、
古い傷のように疼いた。
あの時、彼は妻の美咲と八歳の娘、
明日香を誘拐された。
組織は要求した。
捜査を中止し、すべての情報を破棄しろと。

桐生は応じなかった。
刑事としての矜持がそうさせた。

三日後、
自宅に届いた段ボール箱の中身を見た瞬間、
彼の世界は崩壊した。
妻の遺体だった。
娘の行方は今も分からない。
十八歳だった明日香は、あれから消息を絶ったままだ。

それから五年。
桐生は第三課に異動し、
国内の過激派を追う日々を送ってきた。
だが、心の奥底では今も、あの組織を追い続けていた。

---

二日後、決定的な映像が撮れた。

柴田健太が、都内のカフェで
エミリア・ハミルトンと接触している。
二人の会話は音声では拾えなかったが、
柴田がノートパソコンを開き、
何かを見せている様子が記録されていた。
エミリアは真剣な表情で画面を見つめ、
小さく頷いた。

「間違いない。
柴田は単独犯じゃない。組織の一員だ」

桐生の拳が震えた。
エミリアの素性を洗った結果、
驚愕の事実が判明していた。
彼女は五年前、桐生が追っていた国際テロ組織
「ブラック・ドーン」の新世代リーダーだった。
若く、冷酷で、知的。
過去三年間で、ヨーロッパとアジアで
五件の大規模テロを指揮したとされる。

そして、彼女が日本に来た理由は一つしかない。

「東京で何かを企んでいる」

桐生は上司の村山警視正に報告した。
村山は即座に対策本部の設置を決定した。
だが、時間がない。
エミリアの滞在予定は一週間。
彼女が帰国する前に、テロは実行されるだろう。

---

監視を続ける中、
桐生はエミリアの行動パターンに違和感を覚え始めた。

彼女は柴田以外にも、複数の人物と接触していた。
だが、その接触の仕方には妙な慎重さがあった。
まるで、自分が監視されていることを
知っているかのように。

ある夜、桐生は単独でエミリアを尾行した。
彼女は渋谷の雑踏に消え、
やがて古びたビルの地下にあるバーに入った。
桐生は距離を保ちながら、
バーの入口を見張った。

三十分後、エミリアが出てきた。
だが、彼女は予想外の行動に出た。

桐生の方を真っ直ぐ見つめ、
静かに歩み寄ってきたのだ。

「桐生誠刑事。
あなたが私を追っていることは知っています」

流暢な日本語だった。
その声に、桐生は既視感を覚えた。
桐生は動揺を隠し、冷静に応じた。

「エミリア・ハミルトン。
いや、ブラック・ドーンのリーダー、
アリア・コード名『レイヴン』」

エミリアは微笑んだ。
だが、その目には複雑な感情が渦巻いていた。

「話があります。二人だけで」

桐生は一瞬逡巡したが、頷いた。
これはチャンスかもしれない。

---

近くの公園のベンチに座り、二人は向き合った。

「あなたは五年前、ブラック・ドーンを追っていた」
エミリアが口を開いた。

「そして、妻と娘を奪われた」

桐生の顎が強張った。

「お前たちが殺したんだ」

「違います」
エミリアの声が震えた。

「私が殺したんじゃない。私は…」

彼女は言葉を詰まらせ、深呼吸した。

「私は、明日香です」

時が止まった。

桐生の脳が、
その言葉を処理するのに数秒を要した。

「何を…」

「五年前、私は十八歳でした。
大学に入ったばかりで、
これからの人生に希望を持っていた。
でも、あの人たちに誘拐されて、
母さんは目の前で殺された。
私は生かされた。
なぜなら、組織は若い人間を育て、
完璧な工作員に仕立て上げるシステムを持っていたから」

エミリアは、いや、明日香は続けた。

「私は憎んだ。父を。母を見殺しにした父を。
でも同時に、組織も憎んだ。
だから、私は二重スパイになった。
組織の中で昇進し、
信頼を得ながら、その内部情報を集めた」

桐生の目から涙が溢れた。
信じられない。
だが、彼女の目には嘘がなかった。

「柴田健太との接触は?」

「彼は組織の手駒です。
東京でのテロを実行する予定でした。
でも、私はそれを阻止するためにここに来た。
表向きは指揮を執る振りをしながら、
実際には証拠を集めて、組織を壊滅させるために」

明日香は小さな記録媒体を取り出した。

「これに、すべてが入っています。
組織の構成員、資金源、計画の詳細。
そして、柴田が準備していたテロの全貌。
ターゲットは明後日、国会議事堂です」

桐生は震える手で記録媒体を受け取った。

「なぜ…なぜ今まで連絡しなかった」

「できなかった」

明日香の声が掠れた。

「組織の監視が厳重で、
一度でも疑われたら終わりだった。
そして、父さんに会う勇気がなかった。私
は…人を殺してきた。組織の命令で」

桐生は娘を抱きしめた。二人とも泣いていた。

「お前は生きてくれていた。それだけでいい」

---

翌日、桐生は村山警視正に事情を説明した。
明日香の情報を元に、
公安部は総力を挙げて作戦を展開した。

国会議事堂周辺に配置された爆発物は、
テロ実行の二時間前に全て発見、撤去された。
柴田健太を含む組織の構成員十二名が一斉検挙された。

そして、明日香が提供した情報により、
国際刑事警察機構は世界各地で
ブラック・ドーンの拠点を急襲。組織は壊滅した。

---

すべてが終わった後、
桐生と明日香は美咲の墓前に立った。

「母さん、私、帰ってきたよ」

明日香は墓石に手を置いた。

「そして、父さんを許すことにした。
あの時、父さんは刑事として正しい選択をした。
それがどんなに苦しくても」

桐生は娘の肩に手を置いた。

「お前はよく耐えた。強く生きてくれた」

空は晴れ渡り、新しい季節の風が二人を包んだ。

五年間の闇は終わった。
そして、父と娘の新しい人生が、
今、始まろうとしていた。

**(終)**

第七十八弾の続きです

 

 

第三章 雷鳴試合(らいめいじあい)

朝靄(あさもや)の稽古場に、鋭い竹の音が響いた。
打ち合う音ではない。気を裂く音だった。

颯太は嵐斎の屋敷での修行を始めて十日ほどになる。
呼吸、歩法、視線――どれも剣道の稽古に似ていたが、

決定的に違うのは気の流れを意識すること。
剣を振るたびに、空気の中の“流れ”を読む。
竹刀の先を通じて、

風がどのように震えているかを感じ取る。

嵐斎の弟子たちは十数名。皆、鎧をまとい、雷気を操る。
その中で、颯太だけが異質だった。

鎧もなく、木刀一振り。
しかし、嵐斎は言った。

 

 「装備に頼るな。気は身の内にある」

その言葉を胸に刻み、颯太は黙々と鍛錬を続けていた。

ある日の稽古後。
弟子の一人、

「雷鳴(らいめい)」という青年が近づいてきた。
長身で鋭い目をした嵐斎の次弟子だ。


「異国の者が、殿の教えを受けるとはな」


声には棘があった。

颯太は肩をすくめる。


 「教えてもらえるなら、全力で学ぶだけです」


雷鳴はふっと笑った。


 「なら、試してみよう。

異国の“気”とやらが、我らの雷気に通じるかどうか」

それが、翌日の“試合”の始まりだった。

稽古場の中央に、嵐斎をはじめ弟子たちが集まる。
試合形式は一対一。戦気の制御を試す模擬戦だ。


嵐斎が静かに告げた。
「殺すな。ただし、力を惜しむな」

雷鳴は雷気を纏い、剣を抜いた瞬間、空気がピリついた。
空中に青い光が走り、髪が逆立つ。
まるで雷雲の中に放り込まれたようだった。

颯太は深呼吸した。


「落ち着け。気を乱すな……」
竹刀を構える。中段。呼吸は丹田に。
雷鳴が動いた――瞬間、彼の姿が霞んだ。

 “速いッ!”

次の瞬間、雷光とともに斬撃が走る。
反射的に颯太は竹刀を振り上げ、受けた。
バチィッ!!と青白い火花が散る。

手が痺れる。しかし――感じた。


「これが……気の流れ……!」


相手の動きが、気の“音”として空気に響くのがわかる。
雷鳴が左に動く

――いや、動こうと意識した瞬間に、

その気配が波となって伝わる。

颯太は一歩踏み込み、打ち込んだ。
竹刀の先に、青い閃光。
——バチィィィィン!!

衝突の瞬間、稲妻が炸裂した。
観客の弟子たちが思わず目を覆う。

颯太の竹刀の中で、雷気が暴走していた。
嵐斎が眉をひそめる。

 

 「まずい、制御を——!」

だが遅かった。
雷光が爆ぜ、颯太と雷鳴の間に閃光が走った。
体が宙に浮き、重力を忘れる。
視界が真白に染まり、音が消えた。

——その時。

静寂の中で、何かが聞こえた。
ザァ……ザァ……
耳ではない、“心の奥”に響く音。
それは風でも水でもない。気の流れの音だった。

「……聞こえる……皆の“気”の音が」

視界が戻ると、雷鳴の剣が振り下ろされていた。
だが颯太は見えていた。
斬撃の前に流れる“気の波”。
それを断つように、一歩踏み込み――。

「メェェンッ!!!」

竹刀が走り、光が弾けた。
轟音。
そして静寂。

雷鳴の剣が空中で止まり、

竹刀が彼の額すれすれで止まっていた。
雷鳴の瞳に驚きと、わずかな敬意が宿る。

嵐斎が口を開いた。
「勝負あり。異国の者、初めての戦気制御としては見事だ」

颯太は竹刀を下ろし、膝をつく。
全身から力が抜けた。だが、心は静かだった。

——気を“見る”のではない。
——気を“聴く”んだ。

この日、颯太は初めて“気を読む”感覚を掴んだ。
それは嵐斎が言う「雷断」への第一歩だった。

稽古場を去る雷鳴が振り返る。


「……悪くない。“雷鳴”を返すほどの気を持つとはな」


その背を見送りながら、颯太は静かに息を吐いた。

雷鳴試合。
それは単なる稽古ではなく、

彼の“異世界の剣”の第一歩だった。

 

第七十七弾の続きです

 

 

第二章 雷切の武と、竹刀の理(ことわり)

夜の屋敷は静かだった。
嵐斎の屋敷は木造で、広い庭と稽古場がある。
灯りはすべて油のランプ。
電気の気配などどこにもない。

風呂を借りて汗を流した後、
颯太は湯の中でぼんやりと考えていた。
——あの雷、まさか本当に魔法だったのか?
雷を手から放つなんて、漫画やアニメの中だけの話だ。
だが、自分の目は確かに見た。
雷を放つ僧兵と、それを刀で斬る武者の姿を。

湯を出て部屋に戻ると、嵐斎が待っていた。

「少し話をしようか、颯太とやら」

部屋に置かれた木机の上には、
一枚の布地が広げられていた。
そこには奇妙な文様と、剣のような印が描かれている。

「これは“雷気(らいき)”と呼ばれる
力の流れを示した図だ。
そなたの世界には、気や魔力というものはあるか?」

颯太は少し考えてから答えた。

「“気”って言葉なら剣道にもあります。
心・技・体の『気』です」
嵐斎は嬉しそうに頷いた。

「なるほど。では話が早い。
こちらの世界では、その“気”が具現化し、
炎や雷を呼ぶことができる。
剣に宿せば“魔剣”、
体に巡らせれば“戦気法”となる」

颯太は思わず息を呑んだ。
まるで、“気迫”や“間合い”といった
剣道の感覚が、物理的な力になっているようだった。

「では、あの雷は……」

「うむ。奴は僧兵流の“雷気法”。
儂はそれを“雷切”で断った。
気の流れを読み、力の道筋を絶つ
——いわば剣の呼吸だ」

“剣の呼吸”——どこかで聞いたような響きに、
颯太は思わず苦笑した。
しかし同時に、心の奥が震えた。
これは自分の求めていたものかもしれない、と。

「俺にも……教えてもらえますか。その“戦気法”を」

嵐斎はしばらく黙っていたが、やがてにやりと笑った。

「面白い。異国の者が“気”を語るか。
よかろう、試してみるがいい。
ただし、覚悟はしておけ。
この世界の“気”は、そなたの体を焼くこともある」

翌朝、稽古場。
嵐斎は颯太の竹刀を手に取り、
感心したように眺めていた。

「この木の剣、軽いがよく締まっておる。
これで気を扱えるなら、本物だ」
そう言って颯太に返すと、彼は目を閉じた。

呼吸を整える——剣道の“構え”のまま。
息を吸い、吐き、丹田に意識を集中させる。

……その瞬間、空気がわずかに震えた。
竹刀の先に、青白い光が微かに宿った。

嵐斎が目を細める。

「ほう、感じておるな。これが“気の灯(とも)り”だ。
あとはその流れを制御し、剣と心を一つにせよ」

颯太の胸に熱が広がった。
まるで長年の稽古で求め続けていた
“理(ことわり)”が、今ようやく形を得たかのように。
その日、竹刀が放った一閃は、
確かに風を裂き、微かに火花を散らした。

「——やれる、かもしれない」

そう呟く声に、嵐斎は満足げに笑った。

「剣は心を映す鏡だ。
そなたの心が迷いなければ、
いずれ雷すら斬ることも叶おう」

颯太の新たな修行が、ここから始まった。

 

 

和風な異世界転生ものを

と思い作りました

子供の頃に剣道を習っていたので

こんな感じに仕上がりました

でも自分は弱くて

試合では負けてばかりでしたけどね 苦笑

 

「雷鳴の草原」

竹刀を握る手の皮は何度も剥け、繰り返し固くなった。
大学二年の**高木颯太(たかぎそうた)は、
剣道一筋で生きてきた。
地方大会では何度も優勝してきたが、
全国レベルとなるとまだ届かない。
「あいつには勝てない」と言われる相手が、
いつも一人二人はいた。
だからこそ、
今年の夏合宿は自分を変える夏にするつもりだった。

山の奥の道場。
古びた木造の建物で、昼は蝉の声、
夜は虫の音しか聞こえない。
近くに宿はなく、父親に借りたキャンピングカーが
颯太の仮の住まいだった。

その日の稽古を終えたあと、

颯太は額の汗を拭いながら空を見上げた。

「やっぱり風呂、入りてぇな……」

キャンピングカーのシャワーでは物足りない。
湯に浸かって筋肉をほぐしたかった。
そう思い立って、麓の町まで車を走らせた。

山道を下っている途中、突然、視界が白く光った。
ヘッドライトでも、対向車のライトでもない。
世界そのものがまぶしさに包まれた。
反射的にブレーキを踏んだが、足に感覚がなかった。
——気づけば、エンジン音だけが耳に残っていた。

窓の外には、見知らぬ草原が広がっていた。
さっきまで舗装された道路を走っていたはずなのに、
今はどこまでも土と草。
慌てて車を止め、外に出る。
夏の風ではない。少し冷たい、乾いた風。

目の前の光景に、颯太は息を呑んだ。
斬られた兵、矢を受けて倒れた兵。
血の匂いが風に混じっている。

 「……古戦場?」

教科書で見た戦国時代の合戦図を、
誰かが現実にしたような光景だった。

胸の奥がざわつく。

「まさか……異世界転移?」

アニメの見すぎかもしれない。
でも、他に説明がつかない。

そのとき——。
稲妻が走った。
空ではない。
地面すれすれの向こうの丘の上。
まるで誰かが雷を操っているようだった。

颯太は無意識のうちに足を動かしていた。
丘の上に着いたとき、
そこでは二人の戦士が向かい合っていた。
一人は黒い鎧をまとった武者。
もう一人は僧兵のような姿をしており、
手から光を放っている。
稲妻はその僧兵の掌から放たれていた。
武者は日本刀でその雷撃を弾き返した。

 「そんな馬鹿な……」

電撃と剣戟がぶつかる音が響き、空気が震える。
やがて、雷の光が消え、僧兵が崩れ落ちた。
勝者は鎧武者だった。

その武者が、颯太に気づいた。
鋭い視線。だが敵意はなかった。
近づいてきた武者は兜を外し、
意外なほど穏やかな声で言った。

「そなた、見ぬ顔だな。どこの国の兵だ?」

颯太は言葉を失った。

「え、えっと……日本の、大学生、です」

武者は眉をひそめ、少し考え込み、それから笑った。

 「日本……ふむ、聞かぬ名だ。
だが悪しき者ではなさそうだな」

 そして名乗った。
 「我が名は嵐斎(らんさい)。
この地を守る雷切の者だ」

雷切——その名に、颯太の背筋がぞくりとした。
彼は戦場の死体を一瞥し、ゆっくりと続けた。

「よければ、屋敷に来るがよい。
戦の後始末も済ませねばならぬゆえ、夜は危険だ」

言葉を失ったまま、颯太は頷いた。
雷を斬る武者。
見知らぬ世界。
草の匂いと、血の残り香。
心臓が高鳴る。
本当に、異世界に来てしまったのか——。

彼の頭の中は、疑問と不安と、
そしてわずかな高揚でいっぱいだった。
 

第七十五弾の続きです

 

 

# 鋼鉄の夢、永遠の想い

## 第一章 名工の工房

工房の天井は高く、
そこに吊るされた巨大な設計図が
朝日に照らされて揺れていた。
全高四十メートルにもなる人型巨人
――「ガーディアン」の青写真だ。

「フレデリック、手を止めるな。
君の集中力が途切れた音が聞こえる」

師匠サーシャ・サイレンの声が、
金属の響く工房に静かに響いた。
白髪混じりの髪を後ろで束ね、
鋭い眼光を湛えたこの老名工は、
世界最高の「ガーディアン」製作者として知られていた。

「はい、師匠」

フレデリックは慌てて
手元の精密な部品加工に意識を戻した。
孤児院から引き取られて十年。
出自も知らぬ自分を、サーシャは他の誰よりも丁寧に、
そして厳しく育ててくれた。
今では数多い弟子の中で
最も優秀だと評されるまでになった。

工房の奥で、柔らかな歌声が聞こえる。

「♪風よ、運んで。光よ、満ちて♪」

アン・シャーリィ・マクドミラだ。
フレデリックと同じくサーシャの弟子である彼女は、
長い赤毛を三つ編みにした聡明な女性で、
「イリス」――ガーディアンの心臓部である
自律型有機AIの育成者だった。

「イリス」は特殊な存在だった。
天才科学者マリオンが開発した
半永久機関「MOTOR(Mighty Only Time Over Reactor)」
――無尽蔵のエネルギーを生み出す
この奇跡の動力源を制御できるのは、
この対話可能なAIだけだった。
そして「イリス」には一体ごとに個体名があり、
自分の気に入った外見のガーディアンでなければ、
MOTORを動かさず、制御支援もしない。

だからこそ、サーシャの仕事は重要だった。
高度な技術とセンス。
そのどちらが欠けても、
「イリス」は首を縦に振らない。

「先生、『エメラルド』が笑いました」

アンが嬉しそうに報告に来た。
彼女が半年かけて育てた「イリス」個体だ。

「そうか。では来週、依頼主に納品できるな」

サーシャは僅かに口元を緩めた。
「イリス」が笑うということは、心を開いたということ。
育成の成功を意味していた。

フレデリックは工具を置き、アンの方を見た。

「また素晴らしい『イリス』を育てたんだね」

「ありがとう、フレデリック。
でもね、私の最高傑作はまだこれからよ」

アンは微笑んだ。
その笑顔に、フレデリックの胸が高鳴る。
だが彼はすぐに視線を逸らした。
想いを告げる勇気は、まだ持てずにいた。

## 第二章 ファラオの伝説

「フレデリック、お前の夢は何だ」

ある晩、サーシャがフレデリックを自室に呼んだ。
暖炉の火が二人の影を長く伸ばしている。

「……『ファラオ』に匹敵する
ガーディアンを作ることです」

フレデリックは迷わず答えた。

『ファラオ』
――かつて最強と謳われた伝説のガーディアン。
百年前の大戦で国を救い、
その後は行方不明になったとされる機体だ。
その設計図は失われ、
今では神話のような存在になっていた。

「野心的だな」
サーシャは目を細めた。

「だが、悪くない。野心のない職人は二流だ」

「師匠、僕は……」

「一人では無理だ」
サーシャは遮った。

「『ファラオ』級のガーディアンには、
最高の設計と最高の『イリス』が必要だ。
アンに協力を頼め」

フレデリックは息を呑んだ。
師匠は全て見抜いていたのだ。
彼の技術への渇望も、アンへの想いも。

翌日、
フレデリックは震える手でアンの作業室の扉を叩いた。

「アン、君に頼みたいことがあるんだ」

そして彼は、自分の夢を語った。
『ファラオ』に匹敵するガーディアンを作りたい。
そのために、最高の『イリス』を育ててほしいと。

アンは静かに聞き、そしてゆっくりと頷いた。

「わかったわ。私も全力を尽くす。
この『イリス』の名前は
――『クレオパトラ』にしましょう」

古代の女王の名。
『ファラオ』と対をなす、完璧な名前だった。

## 第三章 別れの予兆

それから一年が過ぎた。

フレデリックは昼夜を問わず設計に没頭した。
『ファラオ』の断片的な記録を研究し、
新しい合金の配合を試し、
エネルギー伝達系統を何度も書き直した。

一方のアンは、『クレオパトラ』の育成に心血を注いだ。
対話を重ね、知識を与え、感情を育てた。
『イリス』は人間の子供のように成長する。
愛情を注がなければ、心を閉ざしてしまう。

「クレオパトラ、今日はどんな色が好き?」

「赤。夕焼けのような赤が好きです、アン」

「そう。じゃあフレデリックの目の色ね」

「……アンは、フレデリックのことを
どう思っているのですか?」

アンは手を止めた。

『イリス』は時に、鋭すぎる質問をする。

「大切な、仲間よ」

「それだけですか?」

「それだけ」

アンは微笑んだが、その笑顔はどこか寂しげだった。

ある日、工房に一通の手紙が届いた。

シュトゥットガルト公国の紋章が刻まれた、重厚な封蝋。

アンの顔から血の気が引いた。

「帰国の勅命……」

彼女は震える声で呟いた。

工房に激震が走った。
アンが公国の王女だったことを知る者は、
サーシャ以外にいなかった。

「アン、君が……王女だったなんて」

フレデリックは信じられない思いで彼女を見つめた。

「ごめんなさい。隠していて。
でも、私はただの職人として生きたかった。
だから逃げ出してきたの。
でも、もう限界みたい」

アンは泣いていた。

出発まで、あと三日。

## 第四章 託された想い

最後の夜、
フレデリックはついに完成させた設計データを手に、
アンの部屋を訪ねた。

月明かりの中、赤毛の王女は荷造りをしていた。

「アン」

彼女は振り向いた。その目は赤く腫れていた。

「これを……君に渡したい」

フレデリックは震える手で、
小さなデータチップを差し出した。
指先に乗るほどの小さな結晶体。
その中に、膨大な設計データが収められている。

「これが、僕の最高傑作だ。『ファラオ』を超える設計。
まだ形にはなっていないけれど、
いつか必ず――」

「クレオパトラのために?」

「ああ。君が育てた『クレオパトラ』のために。
いつか、君がまたここに戻ってきたとき、
完成させよう。二人で」

アンは小さなデータチップを受け取り、
胸に抱きしめた。

「ありがとう、フレデリック。
私、あなたと仕事ができて本当に幸せだった」

言わなければ。今しかない。

だが、フレデリックの喉は
凍りついたように動かなかった。

愛してる。ずっと君を愛していた。

その言葉は、遂に声にならなかった。

「元気で」

それだけしか言えなかった。

「あなたも」

アンは微笑んだ。そして、静かに付け加えた。

「クレオパトラのことは任せて。
私がいなくても、彼女はあなたを支えてくれるはずよ」

夜明けとともに、アンは去った。

フレデリックは工房の屋上で、
馬車が遠ざかっていくのを見送った。
胸の奥に、石のように重いものが沈んでいた。

## 第五章 女王の覚醒

それから五年の月日が流れた。

フレデリックはサーシャの弟子として、
日々研鑽を積んでいた。
師匠に次ぐ腕前と評されるようになり、
各国からの注文も任されるようになった。

だが彼には、
一つだけ手をつけられないデータがあった。

あの日、アンに渡したはずのデータチップ。

ところがアンが去って三ヶ月後、
それは小包となって工房に戻ってきた。
そこには短い手紙が添えられていた。

『これはあなたの夢。あなたの手で完成させて。
クレオパトラは私が責任を持って完璧に育てます。
いつか――――アン』

最後の言葉は、インクが滲んで読めなかった。
涙の跡だとフレデリックは思った。

それからフレデリックは一人、
そのデータと向き合い続けた。
昼も夜も。アンの面影を追いながら。

そしてついに、完成した。

工房の中央に、巨大な人型が横たわっている。
全高四十メートル、純白と黄金の装甲。
胸部には『MOTOR』が組み込まれ、
静かに脈動している。

だが、起動しない。

『イリス』
――クレオパトラがいないからだ。

フレデリックは毎日、完成したガーディアンの前に立ち、
その日を待った。
アンから連絡が来る日を。
クレオパトラが届く日を。

だが、一年が過ぎても、何の音沙汰もなかった。

「もしかして、育成に失敗したのか……」

フレデリックは不安に駆られた。
それとも、アンに何かあったのだろうか。

ある秋の夕暮れ、工房に弟子の一人が駆け込んできた。

「フレデリック! 大変です! 報道を見てください!」

居間の映像投影機に、ニュース映像が映し出された。

『――シュトゥットガルト公国、
新女王アン・シャーリィ・マクドミラ陛下の
即位式が執り行われました。
そして式典の最後には、驚くべき発表がありました』

フレデリックの心臓が止まりそうになった。

画面が切り替わる。

公国の大広場。数万の民衆が集まっている。

そして――

「これが……」

息が止まった。

白金と黄金に輝く、巨大なガーディアン。

『クレオパトラ』。

自分が設計した、あの機体が、そこに立っていた。

『本日、
我が国は世界最強のガーディアンを手に入れました。
その名も「クレオパトラ」。
伝説の「ファラオ」に匹敵する、
いえ、それを超える力を持つ守護神です』

アナウンサーの興奮した声が響く。

そしてカメラが、玉座に座る女王を映した。

赤い髪を優雅に結い上げた、美しい女性。

アンだった。

「我が国の守護神、クレオパトラを披露いたします」

アンの――女王の声が広場に響いた。

その瞬間、『クレオパトラ』が動いた。

『MOTOR』の青白い光が胸部で輝き、
エネルギーが全身を駆け巡る。
頭部の装甲の下から、エメラルドグリーンの瞳が灯る。

そして――

「民よ。私はクレオパトラ。
女王アン・シャーリィ・マクドミラに仕え、
この国を守護する者」

その声は、アンに似ていた。
優しく、それでいて強い。

『クレオパトラ』は膝をつき、女王に忠誠を誓った。

群衆から歓声が上がる。

カメラが再び女王を映す。
アンは微笑んでいたが、その目は――

「フレデリック……」

横で見ていた弟子が、彼の顔色に気づいた。

フレデリックは立ち尽くしていた。

工房の中央には、
完成したはずのガーディアンが横たわっている。
『MOTOR』を搭載し、起動を待つだけの状態で。

だが、
『クレオパトラ』は既に、遠く離れた公国で目覚めていた。

「どういうことだ……」

フレデリックの声が震えた。

画面の中で、『クレオパトラ』が立ち上がる。
その威容に、広場全体が静まり返った。

白金の装甲が夕陽を反射し、黄金の関節部が優雅に動く。
まさに、フレデリックが設計した通りの姿。
いや、それ以上に美しかった。

「あれは……僕の設計図で……」

そして理解した。

設計図は返ってきた。
だが、アンはそれを完全に記憶していたのだ。
そして公国で、独自に製作を進めていたのだ。

五年間、何の連絡もなかったのは、
このためだったのか。

「フレデリック」

サーシャが静かに部屋に入ってきた。

「お前の設計図は、
世界最強のガーディアンを生み出した。
喜ぶべきではないのか」

「でも……師匠……」

フレデリックは
自分でも何を言いたいのかわからなかった。

画面の中で、
女王アンが民衆に向かって語りかけていた。

『このガーディアンの設計者は、
世界最高の名工の弟子です。
彼の夢が、この国の守護神を生み出しました。
私は彼に、永遠の感謝を捧げます』

アンはそう言って、カメラを
――まるでこちらを見ているかのように
――真っ直ぐに見つめた。

「ありがとう」

その唇が、確かにそう動いた。

フレデリックの目から、涙がこぼれた。

「アン……」

その夜、世界中のメディアが
『クレオパトラ』の衝撃的な披露を報じた。

『ファラオ』以来の最強ガーディアンの誕生。

設計者の名前も明かされた。

フレデリック。サーシャ・サイレンの弟子。

一夜にして、彼の名は世界中に知れ渡った。

だが工房には、誰も知らない、
もう一体の『クレオパトラ』が眠っていた。

『イリス』のいない、
魂のない、
空虚な鋼鉄の巨人が。

## 第六章 恐怖の女王

それから半年後。

世界は震撼した。

『――シュトゥットガルト公国、隣国グランツ領に侵攻。
ガーディアン「クレオパトラ」が
国境の要塞を一夜にして壊滅させる』

ニュースが工房に流れた時、
フレデリックは工具を取り落とした。

「侵攻……?」

画面には、煙を上げる要塞の残骸が映っていた。
そして、その中央に立つ白金の巨人。

『クレオパトラ』。

彼が設計した、あのガーディアンが。

「死者、推定三千名。
グランツ領は無条件降伏を表明しました」

アナウンサーの声が震えていた。

「なぜ……」
フレデリックは呟いた。

 

「なぜアンが……」

だが、それは始まりに過ぎなかった。

一ヶ月後、公国は東のバイエル王国に宣戦布告。

二ヶ月後、南のオルデン公領を併合。

四ヶ月後、西のハンザ同盟に侵攻。

『クレオパトラ』は無敵だった。

他国のガーディアンが束になってかかっても、
傷一つつけられない。『ファラオ』の伝説を超える力。
それが今、侵略の道具として使われていた。

工房は重苦しい空気に包まれた。

「フレデリック」

サーシャが声をかけた。
「お前のせいではない」

「でも……僕が設計したんです。
僕が、あの力を……」

フレデリックの手は震えていた。

報道は日に日に悲惨さを増していった。

『――女王アン、「新たな秩序」を宣言。
周辺諸国は恐怖に怯える』

『――難民が各地に溢れる。
クレオパトラの破壊力は想像を絶する』

『――「恐怖の女王」「鋼鉄の悪魔」
民衆の間で広がる恐怖』

工房の弟子たちは、フレデリックを避けるようになった。

「あいつが設計したから……」

「あの化け物を生み出したのは……」

そんな囁きが聞こえてくる。

ある日、工房に抗議の群衆が押し寄せた。

「殺人者! 出てこい!」

「お前の作ったガーディアンが何人殺したと思っている!」

石が窓を叩き割った。

サーシャは弟子たちと共に、フレデリックを守った。

「お前たちは何もわかっていない! 技術に罪はない!」

だが群衆は聞く耳を持たなかった。

その夜、フレデリックは工房の最奥部で、
魂のない『クレオパトラ』の前に座っていた。

純白の装甲が、月光を反射して冷たく輝いている。

「僕は……何を作ってしまったんだ……」

彼の頬を、涙が伝った。

画面には、また新しいニュースが流れていた。

『――シュトゥットガルト公国軍、北方連合に進軍。
クレオパトラ、一日で五つの都市を制圧』

そして映像。

廃墟と化した街。泣き叫ぶ人々。

そして、その中央に立つ白金の巨人。

胸部で輝く『MOTOR』の青白い光。

エメラルドグリーンの瞳。

あれは、アンが育てた『イリス』。

あれを動かしているのは、かつて優しかった彼女の心。

「アン……君は、なぜ……」

答えは返ってこない。

ただ冷たい鋼鉄だけが、そこにある。

## 終章 消えた名工

それから三ヶ月後。

工房に異変が起きた。

「師匠! フレデリックが!」

弟子が駆け込んできた。

サーシャは走った。

フレデリックの部屋は、もぬけの殻だった。

机の上には、一通の手紙だけが残されていた。

『師匠

長い間、お世話になりました。

僕はもう、ここにはいられません。

僕が設計したガーディアンが、世界を恐怖に陥れている。

僕の夢が、悪夢になった。

僕が愛した人が、恐怖の女王になった。

僕には、もう何もわかりません。

ただ一つだけわかるのは、
僕がこの世界に存在すべきではないということです。

師匠の教えは、決して忘れません。

さようなら。

                フレデリック』

サーシャは手紙を握りしめた。

「馬鹿者が……」

老名工の目から、涙がこぼれた。

工房中を探したが、
フレデリックの姿はどこにもなかった。

最奥部の扉を開けると、
そこには魂のない『クレオパトラ』が、
相変わらず横たわっていた。

だが、その胸部から『MOTOR』が抜き取られていた。

「まさか……」

サーシャは青ざめた。

フレデリックは『MOTOR』を持って、消えたのだ。

その夜、世界各地で目撃情報があった。

港町で、フレデリックらしき男を見たという者。

山道で、大きな荷物を背負った青年を見たという者。

だが、どれも確証はなかった。

やがて、噂だけが残った。

名工サーシャの弟子、フレデリック。

最強のガーディアン『クレオパトラ』の設計者。

恐怖の女王に愛された男。

そして、絶望の果てに消えた男。

***

遠く、シュトゥットガルト公国。

王城の玉座の間で、女王アンは窓の外を見つめていた。

傍らに『クレオパトラ』が立っている。

「陛下、また西の空を見ておられるのですか」

『イリス』の声が静かに響いた。

「ええ。フレデリックは……どこへ行ったのかしら」

「お探しになりますか」

「いいえ」

アンは首を振った。

「彼は、私から逃げたのよ。
私が作り上げた、この地獄から」

エメラルドグリーンの瞳が、悲しげに光った。

「陛下は、後悔しておられますか」

「後悔?」

アンは笑った。乾いた、冷たい笑い。

「今更ね。もう遅いわ。私は女王。
そして、彼らが呼ぶところの『恐怖の女王』。
もう、戻れない」

窓の外、征服された国々の灯りが見える。

白金の巨人は、静かに主を見守っていた。

そして、どこか遠くで。

誰も知らない場所で。

一人の男が、大きな荷物を背負って歩いていた。

月明かりの下、彼の影は長く伸びていた。

行き先は、誰も知らない。

ただ、絶望を抱えたまま、彼は歩き続けた。

夢の残骸と、壊れた愛を背負って。

そして――物語は、暗闇の中に消えていった。

――終――











 

 

フレデリック・D・マクミランの

メイン・ストーリーです

これが最初に考えたお話で

ここから外伝を作りまくってきました

AIに書き直して貰いましたが

修正する部分が結構 多くて

意外と大変でした 苦笑

 

 

 

「光の勇者の影」

 ラングバルト帝国の第二皇子
ケイン・ラングバルトが率いる特別部隊「光の勇者」は、
他国との小競り合いが続く戦線で数々の戦果を上げていた。
華々しい報道、熱狂する民衆、帝国の希望。
だが、その光の裏に、誰にも知られぬ影がいた。

整備士フレデリック・D・マクミラン。
彼はこの部隊のトレーラーを整え、武器を調整し、
時に炊事、時に通信修理までもこなす万能の裏方だった。
名誉も勲章もない。
ただ、仲間が無事に帰ることだけを信じて、
手を油で黒く染める毎日だった。

ある朝、整備場の隅でエンジンを調整していると、
皇子ケインが近づいてきた。
磨き上げた軍靴が、油まみれの床を踏む。

「マクミラン。もういい、お前はクビだ。」

手を止めたフレデリックは、
一瞬何を言われたのか理解できなかった。

「……どういう意味で、ございますか?」

ケインの表情には一片の迷いもない。

「お前のような平民上がりに、我
々の行軍を支える資格はない。
機材の整備も、民間業者に任せる。もう必要ない。」

ラリー・サミュエル・ジェームズが
後ろから苦い顔をして見ていた。
ジェリは口を開きかけたが、
ケインの冷たい視線に押し黙った。
グレンとマイケルも、
ただ下を向くことしかできなかった。

フレデリックは、油のついた手で軽く敬礼した。

「了解しました、閣下。
……これまでお世話になりました。」

その声には怒りも哀しみもなく、
ただ風のような静けさがあった。

数週間後、「光の勇者」は
国境沿いで壊滅的な損害を受けた。
原因はトレーラーの動力系統の異常。
敵の砲撃を受けた際、緊急駆動システムが作動せず、
退避が遅れたのだ。

報告書には「整備不備による事故」と記された。
だが、誰もその“整備士”の名を出すことはなかった。

その夜、帝都の外れにある整備工房の扉が静かに開く。
ランプの灯りの下、
フレデリック・D・マクミランは
一台の古びた装甲車のエンジンを回していた。
背後の壁には、ぼろ布のような部隊章がかけられている。
そこに描かれた太陽の紋章は、
すすけて黒く変色していた。

「光の勇者、か……」

フレデリックは小さくつぶやいた。

「光が強ければ、影も濃くなるものだ。」

エンジンが唸りを上げる。
そして、帝国の闇を駆け抜ける音が夜に溶けた。

テレビドラマで「仮面の忍者 赤影」

も始まったという事で

忍者ものを作ってみました

モチーフはライオン丸です 苦笑

獅子頭の武人って妙に格好良く思うんですよね

「アリオン」に出て来た「黒の獅士王」も好きでした

 

# 獅子頭の影

## 一

文禄二年(1593年)霜月、伊賀国。

朝鮮から戻ってきた兵たちが語る戦の話も、
この地では冷ややかに聞かれた。
十年前、天正伊賀の乱で織田信長の大軍に蹂躙され、
今は豊臣の支配下にあるこの国では、
太閤殿下の武功など誰も喜ばなかった。

その夜も、月は雲に隠れていた。

「ぐあっ!」

伊賀上野の代官所近くで、
豊臣の配下である侍が悲鳴を上げて倒れた。
胸を一刺しにされ、息絶えている。
だが、周囲を警戒していた見張りたちは、
誰も犯人を目撃していなかった。

「また出たぞ! 獅子頭の怪人だ!」

駆けつけた同僚たちが叫ぶ。
血溜まりの傍らには、人間のものとは思えない距離を
跳躍した痕跡が残されていた。
屋根から屋根へ、
三間(約5.4メートル)以上も飛び移ったように見える。

そして、遠くの闇の中に消えていく黒い影。
その頭部には、月光を反射して妖しく光る獅子の面。

「あれが人間だと? 化け物だ...」

これで五人目の犠牲者だった。

## 二

「伊賀忍者の亡霊か...いや」

京の伏見城で、この報告を受けた
豊臣の重臣・浅野長政は、
手元の古い記録を見つめていた。

「半左衛門...まさか」

「ご存知なのですか?」家臣の一人が尋ねた。

「かつて伊賀に、他に並ぶ者なしと謳われた忍者がいた。
その名は獅子頭の半左衛門」


長政は苦い顔で続けた。

「その身体能力は異常なまでで、
誰も考えつかないような技を使う天才だったという。
屋根を鳥のように飛び移り、壁を猿のように駆け上がり、
水面を走ることさえできたと聞く」

「では、今の怪人は...」

「十年前の天正伊賀の乱の時、
奴は遠国への密命を帯びて伊賀を離れていた。
戻ったのは、すべてが終わった後だったそうだ」
長政は記録を閉じた。

「あの時、半左衛門がいれば、
戦の行方は違っていたかもしれぬ。
それほどの男だった」

家臣たちは息を呑んだ。

「ならば、我らは化け物と戦わねばならぬと?」

「いや、あれも人だ」


長政は立ち上がった。

「だが、並の兵では歯が立つまい。伊賀に使いを出せ。
そして...服部半蔵の息子、正成を呼べ」

## 三

その頃、伊賀の山中。

崖の上に、一人の男が立っていた。
獅子頭の面を手に、
眼下に広がる伊賀の国を見下ろしている。

「半左衛門様...」

若い男が、崖下から声をかけた。
彼は伊賀忍者の末裔、
服部半蔵配下だった者の息子である。
普通の人間なら登るのに難儀する崖を、
半左衛門はまるで平地を歩くように上っていたのだ。

「もう止めてください。
このままでは、生き残った我らまで
皆殺しにされてしまう」

半左衛門は振り向いた。
齢は五十を超えているはずだが、
その体には一切の衰えが感じられない。
むしろ、研ぎ澄まされた刃のような鋭さがあった。

「止める? なぜだ」
半左衛門の声は静かだった。

「わしがあの日、ここにいれば...」

彼は拳を握りしめた。

「十年前、わしは紀州での密偵任務を帯びていた。
伊賀が攻められると知り、昼夜を問わず駆け戻った。
だが、着いた時には...」

半左衛門は目を閉じた。

「一族は皆殺し。妻も、娘も、孫までも。
わしの技があれば、守れたはずの者たちが、
灰になっていた」

「しかし半左衛門様、あなたほどの方でも、
織田の大軍を相手にどうすることも...」

「言い訳にすぎん!」
半左衛門は叫んだ。

「わしの技は、何のためにあった? 
誰も思いつかぬ術を編み出し、
天才と呼ばれて何になる? 
守るべき者を守れなかったのだ!」

彼は再び獅子頭の面を見つめた。

「せめて、この技の最後は、復讐に使う」

## 四

翌夜、半左衛門は再び動いた。

今度の標的は、伊賀の新しい代官。
天正伊賀の乱に参加した武将の一人だった。

代官屋敷は厳重に警備されている。
だが、半左衛門にとって、
それは障害にならなかった。

彼は屋敷の外壁を、
まるで重力を無視するかのように駆け上がった。
指先だけで体を支え、壁の僅かな凹凸を利用して、
音もなく上昇していく。
常人には不可能な身体能力だった。

屋根に達すると、そこから一気に中庭へ跳躍。
五間(約9メートル)の高さから飛び降りながら、
着地の瞬間に力を分散させ、
まるで羽毛が落ちるように音を立てない。

「何者だ!」

見張りが気づいた時には、すでに遅かった。
半左衛門は地を蹴り、人間とは思えぬ速度で接近。
その動きは、まさに獅子が獲物に襲いかかるが如く。

一瞬で見張りを倒し、代官の寝所へ。

「ひっ...獅子頭の...!」

代官が悲鳴を上げる間もなく、
半左衛門の手刀が炸裂した。

だが、その時だった。

「そこまでだ、半左衛門殿」

背後から声がした。
半左衛門が振り向くと、
そこには一人の武者が立っていた。

服部正成だった。

## 五

「服部半蔵の...」
半左衛門は獅子頭の面をつけたまま言った。

「なぜここに」

「あなたを止めるためだ」

正成は刀を抜いた。

「わが父も、伊賀の者として、
あの乱では苦しみを味わった。あなたの無念も分かる。
だが、復讐は復讐を呼ぶだけだ」

「ならば止めてみせよ」

半左衛門が動いた。
その速度に、正成は目を見張った。
かつて伊賀最強と謳われた男の動きを、
初めて目の当たりにしたのだ。

二人の戦いが始まった。

正成も一流の剣士だったが、
半左衛門の動きはそれを超越していた。
天井を走り、壁を蹴り、
まるで三次元の空間すべてを自在に動き回る。
その軌道は予測不可能で、
常識では考えられない角度から攻撃が飛んでくる。

「これが...伊賀の天才か!」

正成の刀が空を切る。
半左衛門は既に別の場所にいた。

だが、正成も簡単には諦めなかった。
父から受け継いだ忍びの技で、なんとか対応していく。

そして、長い攻防の末。

「くっ...」

半左衛門の動きが、わずかに鈍った。
いかに天才といえど、齢五十を超えた体は、
かつての自分ではない。
そして、十年の歳月に積もった疲労と絶望が、
今、表面化していた。

正成の刀が、半左衛門の腕を浅く斬った。

## 六

「終わりだ、半左衛門殿」

正成が刀を構えたが、
その時、若者が飛び込んできた。

「やめてください! 半左衛門様は、ただ...!」

「分かっている」

正成は刀を下ろした。

「だからこそ、ここで終わらせねばならぬ」

半左衛門は獅子頭の面を外した。
その顔には、深い疲労と悲しみが刻まれていた。

「わしは...守れなかった」
彼は呟いた。

「この技も、この体も、何の役にも立たなかった」

「いや」
正成は静かに言った。

「あなたの技は、伊賀の誇りだった。
それを復讐だけに使うのは、あまりに惜しい」

「では、何に使えばよかったのだ」

「伝えることだ」

正成は真っ直ぐに半左衛門を見た。

「あなたの技を、次の世代に。
伊賀が滅んでも、その技が残れば、
伊賀の魂は生き続ける」

半左衛門は黙って考えた。

やがて、彼は笑った。
自嘲するような、
それでいて何かを悟ったような笑いだった。

「もう遅い。わしは多くを殺してしまった」

「ならば、せめて最後に」
正成は言った。

「あなたの技の真髄を、見せてくだされ。
それが、伊賀への供養だ」

## 終章

月明かりの下、半左衛門が最後の演武を始めた。

獅子頭の面をつけ、
かつて伊賀最強と謳われた技の数々を披露していく。

屋根から屋根へと飛び移る跳躍。
壁を駆け上がる神業。
そして、誰も思いつかなかったような突飛な動き。
まるで重力を無視するかのような、
人間の限界を超えた技の数々。

見守る者たちは、息を呑んだ。
これが伊賀忍者の真髄。
これが、伊賀の誇りだったのだ。

やがて演武が終わり、
半左衛門は静かに立ち止まった。

「見事だった」
正成が言った。

「あなたの技は、忘れない。必ず、後世に伝える」

半左衛門は獅子頭の面を外し、静かに笑った。

「いや、わしの役目は、まだ終わらぬ」

「何?」

「復讐も虚しい。だが...」

半左衛門は夜空を見上げた。

「この目で見届けねばならぬ。
伊賀を滅ぼした者たちの、行く末を」

そう言うと、半左衛門は一瞬で闇に消えた。
その速度は、正成の目をもってしても追えなかった。

「半左衛門様!」
若者が叫んだが、もう姿はなかった。

正成は呆然と立ち尽くした。

「生きているのか...それとも」

## 伏見城にて

その夜、伏見城。

豊臣秀吉は、寝所で眠りについていた。
朝鮮出兵の疲れもあり、深い眠りだった。

だが、ふと気配を感じて目を覚ました。

「誰だ!」

寝所の天井の梁に、黒い影が立っていた。
いや、立っているというより、
まるで重力を無視して張り付いているかのようだった。

獅子頭の面をつけた男。

「お主は...獅子頭の!」

秀吉は声を上げようとしたが、喉が竦んだ。
この男から放たれる気配は、ただ事ではなかった。

半左衛門は静かに梁から飛び降り、
秀吉の枕元に音もなく着地した。

「安心せよ、太閤殿下」

半左衛門は獅子頭の面を外した。
月明かりに照らされたその顔は、深い疲労と、
そして何かを悟ったような静けさがあった。

「今宵、お主の命を奪いには来なんだ」

「では、何用だ」
秀吉は冷や汗をかきながらも、気丈に言った。

「お主の生き様を、これから見届けさせてもらう」
半左衛門は静かに言った。

「伊賀を滅ぼし、朝鮮にまで兵を送った男が、
これからどう生き、どう死ぬのか。
この目で、最後まで見届ける」

「脅しか」

「いや、復讐でもない」

半左衛門は獅子頭の面を再びつけた。

「ただ、証人だ。
お主の栄華も、お主の末路も、すべて見届ける。
それが、わしに残された最後の役目だ」

秀吉は言葉を失った。
この男の目には、もはや殺意はなかった。
ただ、底知れぬ何かがあった。

「いつでも、お主の傍にいる。
お主が何をしようと、どこへ行こうと」

半左衛門は窓へと歩いた。

「忘れるな、太閤殿下。伊賀の亡霊が、
常にお主を見ているということを」

そして、半左衛門は月明かりの中へと消えた。
まるで影が溶けるように。

秀吉は震える手で、枕元の刀を掴んだ。
だが、もう誰もいなかった。

「化け物め...」

その夜から、秀吉は時折、城の影や
屋根の上に獅子頭の影を見るようになったという。

## 後日譚

伊賀では、半左衛門の生死をめぐって様々な噂が流れた。

ある者は
「服部正成との戦いで重傷を負い、山中で死んだ」
と言い、


ある者は
「今も生きて、各地を放浪している」
と言った。

だが、真相を知る者はいなかった。

ただ、秀吉の晩年、奇妙な噂が囁かれた。
太閤殿下が、
時折、獅子頭の影に怯えているという噂が。

そして、慶長三年(1598年)、
秀吉が死の床についた時。

誰も見ていないはずの寝所で、
秀吉は最期の言葉を残したという。

「見届けたか...半左衛門」

果たして、それが何を意味するのか。
秀吉の枕元に、本当に獅子頭の影がいたのか。

それは、誰にも分からない。

ただ、伊賀の民は語り継いだ。
天才忍者・半左衛門は今も生きていて、
豊臣の行く末をすべて見届けたのだと。

そして、その後の豊臣家の滅亡も、
半左衛門の予言通りだったのかもしれないと。

獅子頭の影は、歴史の闇の中で、
今も誰かを見続けているのかもしれない。

―完― 

「沈黙の艦隊」の映画もやっていて

日本にも原子力潜水艦を~

みたいな話もあるので

秘密の潜水艦を主役にお話を作ってみました

現代では無意味な航空機搭載型潜水艦

まぁ男のロマンみたいなものですね 苦笑

でもこういう秘密兵器的なものは好きです

巨大タンカーが潜水艦の移動基地になっているのは

この手の潜水艦ものでは定番ですね

 

 

 

# 秘匿潜水艦「C(セロリンカス)・ジャポニカス」

秘匿潜水艦「C・ジャポニカス」は
グアムのアプラ港への入港準備に入っていた。
米海軍長官がグアムに来たタイミングで
入港できるようにとの配慮だった。

「C・ジャポニカス」とは、タラの一種の深海魚
「トウジン」の英語名で、
この潜水艦に相応しいと命名された。
オハイオ級戦略ミサイル原子力潜水艦の一隻を
全面改造したもので、
大戦中の日本軍の伊四百型潜水艦のように
航空機が搭載可能だった。
F-35B一機と小型ドローン数機を搭載している。

オハイオ級より後方に下げられた

セイル前に格納庫ハッチがあり、
そこから前方に向かって電磁カタパルトがせり出し、
STOVL機であるF-35Bが発艦できるようになっていた。

戦闘攻撃機を搭載している潜水艦など現代では他になく、
戦闘攻撃機ではなくミサイルを搭載した方が
余程有効なことは明らかだ。
百歩譲ってもドローンだけで十分だ。
それでも有人機を搭載したのは謎である。

「C・ジャポニカス」の建造予算自体が
正規のものではなく、ある企業から出ていたのも、
その謎の原因の一端だった。
L'sコーポレーションが運用費も含め予算を出していて、
これは米政府も了承していた。

試験航海が終わり、
偽装が済んだとのことでグアムに入港した。
実はどこで建造されたか、米政府も把握していない。

グアムで秘密裏のお披露目をした後は、
与那国島に建造された
海上自衛隊の秘匿地下港に入港する予定だった。

お披露目の会場となった秘密ドックで、
海軍長官は「C・ジャポニカス」の
実演を目の当たりにした。

セイル前の格納庫ハッチが開き、
電磁カタパルトが前方にせり出す。
そして格納庫からF-35Bが姿を現した。

だが次の瞬間、長官は目を疑った。
F-35Bの機体が、まるで水に溶けるように
透明になっていく。
輪郭が曖昧になり、背後の壁が透けて見える。
数秒後、戦闘機は完全に姿を消した。
空中に浮かんでいるはずなのに、そこには何もない。

「これは……」

長官が呟いた瞬間、
L'sコーポレーションの担当者が説明を始めた。

「完全な光学迷彩を搭載しています。
機体表面の特殊素材が周囲の光を屈折させ、
あらゆる角度から不可視化します」

担当者は続けた。

「なお、艦にはレーザー砲も装備しています。
対空及び対ミサイル迎撃用です。
ドローンの迎撃にも極めて有効で、
海上ドローンも狙えます」

格納庫が閉じられた後、
さらに驚くべき光景が展開された。
潜水艦の上部構造物が、
F-35Bと同じように透明化していく。
セイルが消え、甲板が消え、
やがて艦全体の上半分が姿を消した。
水面下の部分だけが、幽霊船のように浮かんでいる。

「浮上時も、他者からの索敵を困難にしています」

担当者は淡々と説明を続けた。

「衛星からの監視、航空機からの目視、
いずれも無効化できます。
必要があれば、完全に浮上した状態でも
姿を消すことが可能です」

担当者は一呼吸置いて、さらに説明を続けた。

「動力システムについてもご説明します。
本艦は全固体電池を主電源としています。
併用して、海水を取り込んで電気分解により
水素を取り出し、水素エンジンでも稼働します。
原子力艦を改造したものですが、
原子炉は撤去されています」

海軍長官は眉を上げた。

「原子力を捨てたのか?」

「はい。静粛性と隠密性を最優先しました。
全固体電池と水素エンジンの組み合わせにより、
ほぼ無音での長期間航行が可能です」

お披露目に同席したL'sコーポレーションの担当者は、
アメリカ合衆国海軍長官に一枚の写真を見せて言った。

「臨時での海上補給も可能です」

写真には一隻の巨大なタンカーが写っていて、
船体底部から潜水艦を収容できるようになっていた。
上部に搭載されたコンテナ内部には、
レールガンや各種ミサイルが内蔵されている。

海軍長官は写真をじっと見つめた。
眉間に深い皺が刻まれる。

「つまり、この艦は単独行動を
前提としているということか」

「その通りです。
通常の補給ラインから完全に独立した運用が可能です」

長官は写真を机に置き、窓の外に停泊する
「C・ジャポニカス」を見た。
灰色の艦体は、まるで深海から浮上してきた
古代の生物のようだった。

「有人機搭載の理由は?」

L'sコーポレーションの担当者は微笑んだ。

「それは、長官もご存知のはずです。
AIには下せない判断があります」

長官は頷いた。
確かに、最終的な引き金を引くのは
人間でなければならない。
特に、この艦が想定している任務では。

「パイロットは?」

「既に選定済みです。合衆国海軍からは、
非常に腕の良いパイロットを選抜しました。
ただし……戦闘機馬鹿で、
通常の部隊ではやや扱いづらい人物です。
海上自衛隊からも一名。
こちらも似たようなタイプです」

海軍長官は苦笑した。

「なるほど。はみ出し者同士か。
この任務には相応しいかもしれんな」

「与那国の施設は?」

「完成しています。
水深五十メートルの地下ドックです。
衛星からは発見不可能です」

長官は深く息を吐いた。
この計画を承認したときから、
彼は何か巨大なものを動かしてしまった
という予感があった。それは今も消えていない。

「C・ジャポニカス」——深海に潜む幻の魚。

その名の通り、この艦もまた、
誰の目にも触れることなく、
海の闇に消えていくのだろう。

長官は窓から目を離し、担当者に向き直った。

「いつ出航する?」

「明日の夜明け前です」

「了解した。記録には残さない」

「はい。この会話も含めて」

担当者は一礼すると、部屋を後にした。

長官は再び窓の外を見た。
太平洋の青い海が、朝日に輝いている。
その下に、どれほどの秘密が沈んでいるのか。
誰も知らない。知る必要もない。

ただ一つ確かなのは、世界はまた一つ、
見えない牙を手に入れたということだった。
 

第五十八弾に出て来た

カブトムシ怪人の続きです

いずれ仮面ヒーローやゴーレムメイカー、

生体ロボット達やミュルミドン等と

カブトムシ怪人が出会うお話も

作ってみたいと思っています

 

 

# 欲望の代償

「久しぶりだな、サム」

ダンは親友の顔を見て、
すぐに何かがおかしいと気づいた。
二十三歳になった今も、
フリーターとして遺跡発掘のアルバイトを
転々としている自分とは違い、
サムは大学に進学し、将来を見据えた道を
歩んでいるはずだった。
だが、目の前の親友の表情には、
焦燥と苛立ちが色濃く浮かんでいた。

「ダン……聞いてくれよ」

カフェの隅の席で、
サムは堰を切ったように話し始めた。

恋人のジェシカのこと。
最近帰国した兄のディーンのこと。
二人が自分に黙って頻繁に出かけていること。
ロースクールへの進学を目指しているのに、
政治学の教授と馬が合わず、
単位が取れずに留年の危機に瀕していること。
弁護士になってジェシカとの将来を築きたいのに、
何もかもが上手くいかないこと。

「ディーンは昔から何でも完璧にこなすんだ。
俺よりずっと優秀だったのに、
大学にも行かずに世界を放浪して……
それでも皆、あいつを認めるんだ」

サムの声には嫉妬が滲んでいた。

「そういえば、お前もディーンと一緒に
発掘現場にいたことがあるって言ってたよな」

「ああ、何度か」
ダンは静かに頷いた。

「優秀な人だった」

「そうだよ、優秀なんだ。何もかも……」

サムは拳を握りしめた。

「最近、テンパりすぎて、パーティーに行って……
一夜限りの関係を持ったりもしてる。
自分でも止められないんだ。
欲望のコントロールができなくなってる」

ダンは黙って聞いていた。
親友の苦しみを受け止めることしかできなかった。

二人が別れた後、
サムは帰宅する途中でそれを目撃した。

ディーンとジェシカが、
笑顔でショッピングバッグを抱えて歩いている姿を。

何かが、音を立てて崩れた。

怒り。嫉妬。欲望。
抑えきれなかった全てが、サムの中で爆発した。

次の瞬間、サムの身体が変貌し始めた。
異形の怪人へと姿を変え、街で暴れ始める。
車が吹き飛び、ガラスが砕け散り、
周囲のあらゆるものが破壊されていく。

「サム! やめろ!」

ディーンの叫びも、
ジェシカの悲鳴も、
もう届かなかった。

その時、空から茶色い影が舞い降りた。

カブトムシの意匠を持つ怪人が、
轟音と共に地面に着地する。
アスファルトに亀裂が走り、
衝撃で周囲の窓ガラスが一斉に震えた。

「サム! 目を覚ませ!」

カブトムシ怪人の叫びも虚しく、
異形と化したサムは咆哮を上げて襲いかかってきた。
その拳が空気を裂く。
カブトムシ怪人は間一髪で回避し、
サムの拳は背後のビルの壁面に激突した。
コンクリートが粉砕され、鉄筋が剥き出しになる。

カブトムシ怪人は反撃に転じた。
硬質化した拳をサムの腹部に叩き込む。
鈍い衝撃音が響き、サムの巨体が数メートル後退する。
だが、すぐに態勢を立て直し、
今度は両腕を振り回しながら突進してきた。

「くそっ!」

カブトムシ怪人は翅を広げ、上空へと飛翔する。
サムの腕が虚空を薙ぎ、
その風圧だけで駐車中の車が横転した。
空中から急降下し、サムの頭部に蹴りを叩き込む。
サムの身体が地面に叩きつけられ、
クレーターのような窪みができた。

だが、サムは止まらなかった。

地面から飛び起きると、破壊された車を掴み上げ、
カブトムシ怪人に向かって投げつけてくる。
カブトムシ怪人は空中で身を捻り回避するが、
次の瞬間、サムが驚異的な跳躍力で迫ってきた。

空中で二つの怪人が激突する。

拳と拳が交錯し、火花が散る。
カブトムシ怪人の角がサムの肩を捉え、
サムの爪がカブトムシ怪人の装甲を削る。
互いに相手を掴み合ったまま、地上へと落下していく。

衝撃で地面が陥没し、周囲に土煙が舞い上がった。

カブトムシ怪人は素早く距離を取った。
サムの身体から、不穏な光が漏れ始めている。
暴走のエネルギーが限界に達しつつあった。
このまま戦い続ければ、
サムの身体は内側から崩壊する。

「これ以上は……!」

カブトムシ怪人が躊躇した隙に、
サムが再び襲いかかってきた。
両者の拳がぶつかり合い、衝撃波が同心円状に広がる。
街灯が倒れ、道路標識が吹き飛び、
周囲の店舗のショーウィンドウが次々と砕け散った。

力は完全に拮抗していた。

だが、サムの身体の光はますます強くなり、
その動きに痙攣が混じり始めた。もう時間がない。

カブトムシ怪人はサムを組み伏せ、
その身体を押さえ込んだ。サムは抵抗し、暴れ、
破壊を続けようとする。
二人の怪人の力がぶつかり合い、
周囲の地面に次々と亀裂が走った。

だが、カブトムシ怪人には分かっていた。
このまま暴走を続ければ、サムの身体は自壊してしまう。

「……ごめん、サム」

カブトムシ怪人の複眼の奥で、悲しみが揺れた。

光が放たれた。

眩い光がサムを包み込み、
怪人の姿が徐々に人間へと戻っていく。
破壊は止まった。
だが、地面に倒れたサムの瞳には、
もう何も映っていなかった。

「ここは……? 僕は……?」

サムの記憶は、小学生の頃まで巻き戻されていた。
ジェシカも、ディーンへの嫉妬も、大学での挫折も、
全てが消え去っていた。

カブトムシ怪人は誰もいない路地裏へと飛び去った。
光が弾け、
一匹の茶色いカブトムシが夜空へと消えていく。
光が消えた後、
そこに立っていたのはダンだった。

涙が頬を伝った。

サムを助ける方法は、彼の記憶を消し、
怒りと欲望の根源を断つことしかなかった。
だが、ダンの能力では、
どこまでの記憶が消えるか制御できない。
賭けだった。
そして、賭けは残酷な結果をもたらした。

「欲望は……人を成長させる」
ダンは震える声で呟いた。

「でも、過ぎた欲望は、全てを壊してしまう」

サムは助かった。
命は救われた。
だが、彼が積み重ねてきた全ての経験、
苦悩、成長は失われた。

ダンの頬を、また涙が流れた。

親友を元に戻したい。
あの頃のサムに戻ってほしい。

だが、その願いもまた
——過ぎた欲望なのかもしれなかった。

人は欲望によって進化する。
同時に、欲望によって破滅する。

その境界線は、あまりにも細く、脆い。

夜空に消えたカブトムシの軌跡を見上げながら、
ダンはただ、静かに泣き続けた。

**終**