第八十弾と同じあらすじを
別のAIにお話にして貰ったものです
「帰還の火」
十一月の雨が、庁舎のガラスを叩く。
公安第三課・警部補、神崎修司は、
薄暗いオフィスの中で一枚の映像を凝視していた。
映るのは、大学三年生の青年・佐伯直人。
過激思想を掲げる孤独な活動家。
だが彼の通信記録の中に、かつて神崎が追っていた
国際テロ組織〈ハリード〉の暗号が見つかった。
——五年前、神崎は外事第四課の捜査官だった。
〈ハリード〉の日本潜入を追っていた
その最中、妻・玲子と
娘・美月(当時18歳)が誘拐された。
数日後、玲子の遺体だけが「贈られて」きた。
美月の行方は掴めず、捜査も打ち切られ、
神崎は外事から外された。
第三課への異動。
それは、表向きの「更迭」だった。
——あの日から、五年。
娘を奪った組織の残党が、また動き出している。
情報分析班から、新しい報告書が上がった。
アミナ・サリム——二十三歳。中東系の若い女性。
日本に密入国し、〈ハリード〉の残党を
束ねる存在としてマークされている。
そして彼女が、佐伯直人と
頻繁に接触していることも判明した。
神崎の背筋に、冷たいものが走った。
アミナの映像が画面に映し出される。
その横顔を見た瞬間、彼は息を飲んだ。
——似ている。玲子にも、美月にも。
ありえない、と思いながらも、
心の奥の何かがざわつく。
娘は十八で消えた。いま、彼女は二十三。
もし、もしも——。
一週間後。
都内の廃ビルにて、アミナと
佐伯直人の会合が行われるとの情報が入る。
神崎は現場指揮官として突入班を率いた。
夜.
冷たい風が吹き抜ける屋上に、二人の人影。
神崎はスコープ越しに、女性の顔を見た。
——間違いない。あの目は、美月のものだった。
無線が鳴る。
「指揮官、どうします?」
神崎は答えられなかった。
そして、次の瞬間、アミナが静かに振り返った。
「……お父さん。」
その声が、五年前と同じ響きを持っていた。
室内。
神崎は銃を構えながら、
信じられない思いで娘を見つめる。
「美月……なぜだ。どうして、お前が……?」
「〈ハリード〉が私を拾ったの。
お母さんを殺したのはあの人たち。
だけど、彼らは言ったの。
“父親がすべてを見捨てた”って。」
「違う! 俺は——」
「分かってる。」
美月は微笑んだ。
その瞳には、怒りと悲しみと、
赦しが入り混じっていた。
「私は“アミナ”として生きた。殺すために。
でも、あなたの顔を見た瞬間に思い出したの。
お母さんが言ってた——“修司は、
絶対にあきらめない人”だって。」
その直後、背後で爆弾の起動音が鳴った。
佐伯直人が叫ぶ。
「全部終わらせるんだ! 日本も、俺たちも!」
美月が走り出した。
「お父さん、離れて!」
「待て、美月——!」
閃光。爆風。
時間が引き裂かれた。
—夜が明けた。
崩れた瓦礫の中で、神崎は娘を抱いていた。
彼女の手の中には、焼け焦げた起爆装置。
爆弾は作動しなかった。
美月が、止めたのだ。
「……もういいんだ、美月。もう戦うな。」
「お母さんの代わりに、生きてね……」
彼女の唇が、そう動いた。
そして静かに、息が途切れた。
翌日のニュース。
「公安、国内テロを未然に阻止」
その一文だけが、全国に流れた。
誰も知らない。
その影で、五年前の事件がようやく終わったことを。
神崎修司は報告書を閉じ、空を見上げた。
朝の光が、灰色の街を照らしていた。
それは、長い闇の果てに灯った、
ほんの小さな“帰還の火”だった。
終