HERO【最終話『英雄なんていない』】
辺りを包む風の音色
繋いだ手は冷え切っていた
『きっとさ、私たちの事は後世に語り継がれるよね』
「絵本にでもなったりして」
『うん。そうじゃなきゃ、浮かばれないよ』
「じゃあさ、私達はどっちなのかな?」
『どっちって?』
「ハッピーエンドと、バッドエンド」
風に触れる萌乃ちゃんの目は、細見を増してその場所を見つめる
『死んじゃうからね』
「でも、世界は救われるよ」
そう言った彼女は、優しく微笑んでいた
1ヶ月しか一緒にいなかったけど、私はこの笑顔が好きだった
出来る事ならもう少しだけ、この笑顔の隣に入れたら良かったのに
『まぁ、それはさ、絵本を読んだ子供達に任せよっか』
私は早々に話を切り上げる
きっと、大半の子供は悲劇の話として私達を読むのだろう
ゆっくりと1歩ずつ踏みしめた
私達の最後は、残り数歩でやって来る
不意に、握った手の温もりが強くなる
それに答えるように、私も右手を強く握った
堅く閉ざした私達の手が、消えてしまうまで離れない事を願うように
あと僅か
その場所が目前に迫った時、萌乃ちゃんの目が私へと向けられる
「莉乃ちゃんは?私達の結末、どっちだと思う?」
縋る様な、甘えた様な声に私は思わず微笑んだ
猫の様に細くなった目には、私と同じ答が浮かんで見えた
最後の時へと近づく
私の声はもう、強い風に掻き消されて彼女には届かない
それでも、彼女は分かってくれているのだろう
その笑みが、最後まで絶える事はなかったのだから
『どっちでも構わないよ。きっとさ・・・』
-萌乃ちゃんとなら、バッドエンドだって幸せだ-
『HERO』~あらすじ的なヤツ~
ネタはMr.Childrenの”HERO”って曲から
パラレルワールドとして別々に存在していたはずの2つの世界が、
時空の捻れによって互いに干渉してしまう
それによりバランスは崩れ、徐々に世界が崩壊へと近づいていく
完全に世界が終わるまでのタイムリミットはわずか1ヶ月
近代化世界側は、『一つの生命エネルギーによって捻れを収まる』という安易な解決策を掲げた
所謂、生け贄
その生け贄に選ばれてしまった不運な少女:指原莉乃
若く未来のある少女を、大人たちは適任だと崇めて止まなかった
幽閉された指原に会いにやって来た、近代化世界に住む少女:仁藤萌乃
”例えば誰か1人の命と
引き換えに世界が救えるとして
僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男だ”
世界が終わって、世界が始まったあの日
仁藤萌乃という少女によって、へタレで情けない自分が半強制的に変わった日
”でもヒーローになりたい
ただ1人君にとっての
つまづいたり転んだりするようなら
そっと手を差し伸べるよ”
冷酷に単純に刻まれる時は、いとも簡単に私を大人へと近づける
手に入れたものは多くて、失ったものも多くて
その中に、大切なものはいくつ入っていたのだろうか
友達がいて、家族がいて、十分に潤った生活は、静かに私を蝕んだ
『死ぬのが怖い』単純にそう思う
大人は醜い
自らの保身の為に、誰かが死ぬのを期待している
そんな醜さに、微かに染まった自分が嫌いだった
たった1人の
”僕の手を握る少し小さな手
すっと胸の淀みを溶かしていくんだ”
細い、強く抱きしめたら壊れてしまいそうなほど繊細な少女に出会うまでは
溶け合う
暑すぎる・・・
先日、直射日光を浴びながたの無謀な行動をした為か、
見事なまでに焼けました(・∀・)ノ
こんがりですww
1ヶ月前に書き始めたまま放置してる『HERO』ですが、
書き上げる暇なんて何処にも見当たらないので、
全体のあらすじと、書き終わってる最終話だけうpしようかなww
上手い具合に課題が一段落ついたら、また別の内容で文章でも書く
相変わらず書かないくせにネタは貯めてあるんで←
【第3話『もう1つの終焉宣言』】
どうやら世界は終わるらしい
近代化が進みすぎた世界
車は自由に空を飛び、扉1つで何処へだって行ける
ロボットは起用に喋り、人と区別が付かないくらいで、
耳に機械をはめれば、あらゆる国の人と気軽に話せた
昔話の世界に住む神の存在なんて誰も信じてなくて、
まるで人間が1番偉いかのように振舞い続けてきた
その代償は散々たるものだった
人々は心を忘れ、
国ごとの権力争いは悪化を辿る
先進国が後進国を食い尽くすと、次は先進国同士が世界のトップを決めようと躍起になった
その結果、数え切れないほどの戦争が起こり、ついにたった1国を残してこの世から消えてしまう
私達は全てを手に入れ、同時に、その全てを失った
近代化なんて何の意味も持たない、寂れた世界
耳にはめた便利な機械も、他の言葉を喋る人間がいなければただのガラクタに過ぎない
人々が愚かな傷跡を忘れかけた頃、私達の世界に異変が起こった
今じゃ役立たずの、偉そうな専門家達は口を揃えて叫ぶ
『戦争の代償だ』と
『世界が終わるのだ』と
私はそれでもいいと思う
私達人間が、生きていたって何のプラスにだって働かないのだから
国中の人がそれに恐れて家に閉じこもる中、私はただ1人外へと身をやった
空に浮かぶ、2つの太陽を眺めて
