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【第00話『エピローグ』】

帰り道


仲良く並んだ影が3つ



茜色に染まった空を眺め、彼女は言う



『夕陽に向かって競争しよう!』



いつもの笑顔を、

私はいつもの苦笑いで見つめる



「子供じゃないんだからさ・・・」



『いいからいいから。いくよ?ヨーイ、ドン!!』


「ちょ、ズルくない?」


「里英ちゃん、置いて行くよ?」


「ゆきりんまで?」



仲良く並んだ影は、バラバラに走り出す


傍から見れば、3人とも酷く滑稽に見えることだろう



臆病な、以前の私ならそれを気にしていたはずだ


しかし、今の私はそんな甘ちゃんじゃないのさ



しょうがない。なんて呟いて、

でも、顔には嬉々とした表情を浮かべて走っている




きっとさ、他人の目なんか気にする必要ないんだよ


本人が、どう思っているかが重要なんだから




そんな大切な事を彼女は、

多分、いや絶対、



無意識のうちに教えてくれた





夕暮れに染まる頬


君を想って流した涙を忘れない



この先の道を、君の隣で駆け抜ける



他人から白い目で見られても、笑顔を振り撒いて進もう




現実的で打算な人生じゃ、退屈を凌げないでしょ?



非現実的な人生が、私達には丁度いい






「ってか、ゴールはどこだよー?」






私の大切な大切な、”ひじき”と呼ばれた高城亜樹との話








非現実的思考主義


【終】

【第29話『君の名前は』】

私が校舎裏に着いたのは、

彼女が丁度板野さんに胸倉を掴まれる瞬間だった



(間に合った・・・)



私は有りっ丈の声で、

彼女の名前を呼んだ






「亜樹!」



―あぁ、良かった―



その声に導かれるように振り向いた彼女の顔には、

私の望んだ笑顔が浮かべられていた



『初めて・・・、名前で呼んでくれたね』


「当たり前じゃんか」




だって君は、



「私の友達に、手ぇ出してんじゃねぇよ!」



私の友達なんだ




顔も知らない誰かが付けたあだ名じゃない


高城亜樹という、

私の大切な友達なんだから




泣き顔に笑みを浮かべて近づく私を、板野さんは鼻で笑った



いいよ、もう


いくらでも笑ってくれ




この3人をどうやって追い払おうか・・・



上手い考えも思い浮かばないまま、

私は1歩ずつ彼女達へと歩み寄った













その後の事はあまり思い出したくない



私が板野さん達の目の前に立つのと同時だったのだろうか


板野さんの目に映ったのは、

グシャグシャで醜い顔をした私と、

ゆきりんが連れて来た担任のたかみなの揺れる赤いリボンだった






柏木さん・・・、私の勇気を返して!なんて言葉は、

板野さんたちの後姿を見送るゆきりんの表情を見たら口には出せなかった



あの、ブラックスマイルが怖すぎて・・・



まぁ、何の策もなかったから、助かったと言えば助かったんだけどさ

もうちょっとカッコ付けさせてくれても良いじゃないか



諸々の不満を含めた視線に気付いたのか、

ゆきりんが顔をこちらへ向けた



「里英ちゃんの勇気、無駄になっちゃったね」



先ほどとは打って変わって、爽やかな優しい笑顔を浮かべている


ってか、やっぱり確信犯だったのね・・・



「でもね、」


彼女は太陽に目を細める


「私だって友達なんだから。忘れないでよね」



きっと、罪を背負ったのは私だけじゃない


傍にいたいと願いながら、叶わなかった彼女もまた、同様に錘を抱えていたのだろう


私を叱咤しながらも、彼女は彼女で、1歩踏み出したんだ



「ゆきりん・・・」



先ほどやっと止まった涙腺が再び揺れる


最近泣き虫になったのは、年を取ったという事なのかな?



そんな私から顔を背け、小さくなった板野さんたちの背中を見つめなおす


綺麗な横顔が、徐々に滲んでいく


ゆきりんも、私と同じ気持ちなn・・・



「里英ちゃんと亜樹ちゃんの仲を取り持って、且つ邪魔者を安全に取り除く。


私の作は完璧だね♪」




前言撤回


やっぱコイツの腹は真っ黒だ




黒く微笑む彼女に、私も板野さんも踊らされてたのだろうか?



夏の太陽が照り仕切る中、私の背中に寒気が走る


涙腺も、綺麗さっぱり止まっていた




策士・柏木由紀


彼女がこの日見せた笑顔を、私は一生忘れる事はない










これで、私の人生で最も色濃い夏の話しは終わり



板野さんたちがこれで大人しくなったのか、

私達の中はこれからどうなっていくのか


それは皆、自由に想像してくれたまえ




物語に、終わりはない



語り手が居なくなっても、誰かの頭の中で静かにそいつらは動き回る




私達のこれからは、皆の想像力に任せるとしよう



板野さんと仲良くさせるもよし


新たなトラブルメーカーを作り出してくれても構わない



好きに描いてくれ






そうそう、最後にこれだけは言っておく




私達にもし、新しい友達を考えるなら、





天然や、酷く臆病だったり、腹黒でもない



ごく普通の奴を頼むよ

【第28話『エゴイストの優しさ』】

「本当はね、初めの頃は嫌だったんだ。


振り回されて面倒臭いし、周りから変な目で見られるし・・・」



ゆっくりと、心の汚い部分を吐き出すように言葉を選ぶ


そんな私を、ゆきりんはただ見守ってくれている



「ひじきの言ってる事、1/3も伝わんないし


いつも無駄にヘラヘラしてて、

ドリンクバーで紅茶何杯もおかわりしてさ、

好物だからって梅干をタッパーで持ち歩いてんだよ?


そんな奴と友達だと思われるのなんて、冗談じゃない!って」



「うん」



彼女の顔に微かに笑みがこぼれる


それは私も同じで


この夏は

ひじきの隣で過ごしたこの夏は、思い出してみれば馬鹿馬鹿しくも笑える日々だった



靴を神社まで探しに行って、

ねずみ花火と追いかけっこをした


蝶々を追い掛け回したり、

サプライズを前もって宣言もされた


いじめに巻き込まれないようにと避けられて、

雨上がりの帰り道に泣く姿を見せてくれて・・・



これはくだらない噂話じゃなくて、私が彼女の隣で見た姿


歴とした、ひじきの本当の姿




その隣で、私はどんな表情だった?



思い出せ


いつだって笑ってたじゃないか



バカだなぁ。なんて思いながらも、

彼女と同じ笑顔で、


私はいつだって笑ってた



噂なんかじゃない、

ちょんと彼女自身を見てたはずなのに・・・



自分の保身の為に、その笑顔を易々と手放して、

これで良かったんだ。って笑えるか?



ひじきの為に、一緒に泣こう。なんて強さを私は持ってない


ならさ、自分の為でいいじゃんか


私が笑う為に、ひじきは笑ってなきゃいけないんだ



これは優しさなんかじゃない


偽善にすらなれやしない


ただ単純に、私が笑いたいっていうエゴ



でも、これでいい


踏み出す一歩は、ちっぽけな理由で十分


大義名分掲げてちゃ、怯えて足も竦むでしょ?




小さい頃に憧れた、誰もが好きなヒーローに、私はなれそうもない


仲間の為に戦う、麦わら帽子の主人公だって似合わない




けど、傍観者のフリはもう止めよう


嫌われるのが怖くて、大切なものを見失う為に、無駄に16年も生きて来た訳じゃない




俯いていた顔を上げる


きっと、その顔はクシャクシャだ



「ゆきりん、私、行って来るよ」



見上げた先は、優しい笑顔


でも、ちょっとだけ潤んだ瞳



「うん、行ってらっしゃい」




勢いよく駆け出す


運動会の徒競走でさえ、こんなに全力で走ったことはないだろう


周りのクラスメイトの、驚いた顔も目には入らないんだ






私は一歩目を踏み出した


不恰好で、無様で、思い出すたび笑い話に変わるような一歩


それでも、その時の私には精一杯の一歩




ねぇひじき、今から迎えに行くよ


たった一言だけ、どうしても伝えたくて



私がこんな事を言ったら、君はどんな顔をするんだろう?




私の好きな、あの笑顔で、迎えてくれたらいいな

明日になれば・・・

文章書いた後に、言い訳するのは最早恒例(・∀・)ノ←




書いてる途中で某動画サイトを開くのが基本



なんだけど、いつもは音楽を聴いてるだけなのに、

今日はAKBの動画を開いたから大惨事ww




俗に言う集中散漫ってやつです(・∀・)ノ





『only today』聴こうと思ったのが間違いの始まりだったね




結局中途半端で投げた僕ですww




約1ヶ月以上かかったこの文章も、残すところあと3話



『全29話』と宣言したにもかかわらず、何故だか31話になってる・・・


此処まで来ると、どの話が増えたのかも分からない始末ww





あぁ・・・、こんなことしてる暇があったら、課題やんなきゃいけないのに←←

【第27話『非現実逃避(後編)』】

その背中を、何度見送れば気が済むのだろう


私の短い手じゃ、精一杯伸ばしたところで届かない



その場に立ち尽くして、ただ君の無事を祈るだけ


祈る相手も知らないくせに




昼休み


少しだけ静かになった教室で、私はひっそりとお弁当を広げた


頭の中はひじきの事で留まっているのに、手だけはしっかりと動く


吐きかけたタメ息も、私には似合わない



「里英ちゃん?」



いつの間にか、私の目の前にゆきりんが立っていた


その目を見れず、お弁当箱をじっと見つめる



「亜樹ちゃんいないね。どこ行ったか知らない?」



―知らない―


そう答えられれば楽なのに


嘘に嘘を積み重ねられない私は、無邪気さを忘れた子供の様



「あのさ・・・」



震える瞳で、ゆきりんの目を見つめる


いっその事、罵倒された方が胸の錘が取れる気がした




そうやって、


私の罪を、無責任に彼女へと押し付けた




「そっか・・・」



予想に反して、彼女は悲しげな表情を浮かべただけ


私が欲した非難は、彼女の口から出ない



「里英ちゃんは、それでいいの?」



ゆっくりと、言葉を選ぶように、子供を諭すように、私に尋ねる


責められた方が楽なのに・・・



錘が少しだけ、重くなったような気がした



「だって、私はゆきりんみたいに強くない


怖いものは怖いんだよ」



良い訳がない


そんな事は分かってるのに、口は勝手に動き出す


間違いを素直に認められるほど、大人にだってなれてない



「私だって怖いよ!


それでも友達だから


一緒に傷ついても構わないって思えるんだよ!」



静かな教室には似合わない怒鳴り声に、

教室に残った数人の目がこちらに向けられる



それに気付いたのか、ゆきりんは眉間に皺を寄せたまま俯く



責められる事が正しいのに、それすらも許されない




「里英ちゃんは違う?私たちの事、友達だと思ってない?」



私を見ずに、震えた声だけがそっと告げた



彼女はずっと、私の事を”友達”だと言ってくれたのに


それに甘えて逃げ回っていたのは私自身




そのせいで、ひじきを傷つけて、ゆきりんを苦しめた


これが、私が望んだ答な訳がないのに、私が招いたのは事実






私にとって、この2人は何なのだろうか?


最も簡単な問いに、私は遠回りをしすぎていたんだ



私は素直じゃない




だから、


だけど、




自分に嘘をつくのだけは止めにしよう






開く口が震える



単純な言葉を吐くのに、こんなにも勇気が要るのか・・・