2023年10月鑑賞映画ひとことレビュー | (ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

(ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

月一で初鑑賞映画の感想を書いてます。
あくまで個人の感想です。立派な考察・評論は出来ませんのでご容赦下さい。

2023年10月鑑賞映画映画ひとことレビュー

 

10月の鑑賞本数は27本。ちょっと持ち直しました。

 

■「悪魔の受胎」

 古き良きエログロSF。このお話でぜひ現代版でリブートしてほしいです。

【55】

 

□「コカイン・ベア」

 実話(!?)をベースに、コカインをキメまくったクマさんの殺り放題食い放題が妙に楽しく爽快なアニマルパニックホラー。

というよりはまあ薬中クマさんを巡るおバカな人々の悲しくもおかしい運命を描いたホラーコメディといったところです。

 さすがに「ピッチ・パーフェクト」や「チャーリーズ・エンジェル」などでツボを押さえたエンタメを作ってるエリザベス・バンクス監督、今回もきっちり手堅い演出で退屈無しでサクサク見せてくれます。ハイな姿がやたらかわいいクマさん一家はもちろんの事(しかしクマさんにはコカインの致死量ってないのでしょうか)、超極悪害獣を取り巻く愛すべきバカキャラたちも、王道をちょっと外れたところを歩かせるような絶妙ないい加減さは、他の監督作も踏まえこの監督さんのセンスなのでしょう。逆に言えばそんなお遊び部分に感度が合わないと結構キツイ映画なのも事実で、タランティーノ的なビザールかつブラックなユーモアは、正直現代においては(過剰なグロ描写も含め)ちょっと食傷気味な感じもしました。

 まあこのシノプシスでこういうユーモアあふれる映画にした製作者のセンスと悪趣味は嫌いではないし、それにノリノリで答えた監督さんの心意気も買ってあげたいという気分にはさせてくれるだけの映画ではありました。

 何よりもレイ・リオッタ氏の遺作という、それだけで価値があります…合掌

【65】

 

□「沈黙の艦隊」

 かの壮大なスケールで話題をさらったポリティカル戦争コミックの映画化三部作の第一弾…ていうくらい導入部のみ、お話が始まる前に終わってしまったのがどうにも微妙な実写映画化でした。

 こちらは原作読破、結構なファンでありましたので、物語についてはラストまで把握しておりますのでこの終わり方もまあ始まりとしてはアリかなと思った次第ですが、初見の方は「いやこれで終わり?」感が半端なかっただろうと推察されます。とにかく海江田氏の目的が一切わからないまま、あれよあれよと反乱・逃亡・独立宣言。ラストで明かされるのかと思いきや、B’zの主題歌が高らかに鳴り響いた日にゃそれこそ頭の中ははてなマークだらけになるってもので。なので、原作のボリュームも踏まえ、最低3部作を作るのはこれに手を出した製作者の責務だと思います。

 そんなお話はさておき、映画自体はなかなかの迫力。潜水艦映画といえば戦争映画の花形ですが、これもそんな系譜を受け継いだ戦争シーンのスリルとサスペンスはそれなりに。キャストの小物感が少々切ない面もありますが(特に大沢たかおの海江田は正直実力不足かと。なんというか変に思わせぶりな感じがいやらしくて、とにかく圧倒的にカリスマ感が足りないなあと。まあ海江田四郎を演じられる役者さんなんてそうはいないのですが)、それでも玉木宏なんかは頑張ってたし、これからメインとなっていくであろう政治家の面々の面構えは小物感も含めいい感じ。何気に潜水艦に女性が乗艦している事が現代的だなあなんて変なとこで感心してしまいました。

 とにかくまだ何も始まっていないこの映画、ほんとに面白くなるのはこれからなので、続編お待ちしております。

【65】

 

□「イコライザー THE FINAL」

 ”なめてた人が実は最強でした”ジャンルの西の横綱に君臨する(東の横綱はもちろんジョン・ウィック)マッコールさんの最後の聖戦をグロ描写倍増、R-15で描いたオトナのための終活アクション映画。

 今回の舞台はイタリア。シチリアでの仕事で負傷したマッコールさんが流れついた先はアマルフィ海岸沿いの小さな街。心身ともに限界だったマッコールさんを温かく迎え入れてくれたこの街をマッコールさんは安住の地として考えるようになる。しかしそんな街にも悪の手が忍び寄る。街の人々は次々と凄惨な事件に巻き込まれていく中、怒り心頭のマッコールさんは”仕事”を再開していく。それは更なる暴力を呼び、イタリア全土を巻き込んだテロへと発展していくのであった…

 とあらすじをみるとものすごくスケールの大きい一大アクション巨編みたいに思えますが実際はそれほど派手なわけでは無く、どちらかと言えば仕事人マッコールさんの心情をきっちりと描いたドラマといった印象です。それがまた妙に心地よいのは細かい心理描写や日常をきっちり見せる構成と名優デンゼル・ワシントンの余裕ある演技。アマルフィの絶景と街の異世界的な雰囲気が最高で、マッコールさんでなくても安住の地にしたいと思える美しさです。そんな人情ドラマの中、結構な主張を感じさせるほどの凄惨かつ残酷な暴力描写は、壮絶な人生を歩んできたマッコールさん自身の生き様を表現しているようで趣がありました。盟友アントワーン・フークアの”わかってらっしゃる”演出と相まって、非常に見ごたえのあるアクションドラマでした。

【75】

 

■「ヘルレイザー:レベレーション」

 ピンヘッドの役者さんが変わっていただけでもダメなのですが、凡百の才能ではこの世界に手を出してはいけない事が良くわかりました。

【50】

 

■「ノーウェア 漂流 (NETFLIXオリジナル映画)」

 絶望感が半端ない究極の監禁映画。閉所恐怖症でなくてもかなりつらいシチュエーションで進む物語はアイデアの宝庫。いろいろツッコミどころはあったりもしますが、それを感じさせないサスペンスとスリル(と絶望と少しの希望)が楽しい拾い物の1作。

【70】

 

■「テラフォーム 侵略」

 ザ・B級。でもそれでいい。

【55】

 

■「パルス」

 大傑作「回路」ハリウッドリメイク版。ようやく観ましたが「回路」のリメイクと思わなければそれなりに楽しいのではないかと。

【55】

 

□「死霊館のシスター 呪いの秘密」

 ”死霊館”と”インシディアス”のシリーズがごちゃ混ぜになってしまって混乱している私ではありますが、(というかパトリック・ウィルソンが悪いのです笑)死霊館の前日譚「死霊館のシスター」の続編という、なんとも複雑な立ち位置の映画。実際今作も前作を観ていない難易度の高い映画となっておりました。

 という訳で鑑賞前は前作の復習は必須。1956年のフランスを舞台に、最凶のシスターヴァラクさんVS薄幸の修道女の壮絶オカルトバトルが展開されるのですが、なんというかそのバトルが正直退屈。Jホラーの影響大な暗~い雰囲気の中、ヴァラクさんのいたずら心に満ちた追い込みがひたすら繰り返され、それに驚き、怖がり、逃げ惑う人たちがまた繰り返されるという構図。しかもそれぞれが似たり寄ったりな展開とシチュエーションで飽きるというか慣れてきてしまいます。いやまあヴァラクさんの豪快なモンスターっぷりと、いかにも幸薄そうでひ弱なヒロインの構図は、ヒロインの心の強さと信仰心を盛り上げていて良いのですが、いかんせんワンパターンで一本調子。途中睡魔という悪魔と戦うのに必死でした。

 ブラムハウスがユニバース化したのでこれからもこのシリーズ(スピンオフも含めて)続いていくのでしょうが、昨今の配信オリジナルも含めかなりの濫造っぷりで観客としても食傷気味であるのは事実、。新機軸を打ち出していかないと結構苦しいのはと感じてしまう出来でありました。

【65】

 

■「ザ・タンク」

 密室スリラーとしてはよくある設定だし、内容もよくあるで終わってしまった映画。まあよくあるだからそこそこ楽しめます。

【55】

 

□「オペレーション・フォーチューン」

 安定のガイ・リッチー&ステイサムコンビ作。軽快なテンポで魅せるちょっと軽めでおしゃれな、だけど結構しっかりどっしりなアクションが楽しめる良作です。

 100億ドルで闇取引されるやばいブツ回収の任を受けたMI6の敏腕エージェント・ステイサム(役名はフォーチューン笑)が即興チームを率いて行動を開始する。その即興チームが結構魅力的。飄々としたコーディネイター、毒舌凄腕女ハッカー、新人スナイパー、そしてハリウッドアクション映画のトップスター。それぞれの役割をきっちりと描いているので、それぞれが魅力的かつ個性的で、彼らの掛け合いの楽しさや見せ場の巧みさはさすがガイ・リッチー。

巻き込まれたトップスターがだんだんと楽しくなって成長していくお約束(ジョシュ・ハートネット、ほんと救われて良かったねえ…涙)も含め、スパイ映画の王道を踏襲しつつ、自分の得意のフィールドで存分に力を発揮しています。

 とはいえこの映画の真の主役はヒュー・グラント。ここ最近のキャリアの幅広さに(精神的な)一抹の不安もありますが、裏世界で強大な権力を持つ好色な武器商人をほんとに楽しそうに、嬉々として、水を得た魚のように演じております。小物感満載でありながら、クライマックスあたりの裏の顔のド迫力はさすがのキャリア。軽快かつかっこよすぎなキレキレアクションとともに、そんなヒュー・グラントの真骨頂(「ダンジョンズ&ドラゴンズ」とキャラ同じやんという話もありますが)を楽しめる痛快スパイ娯楽映画です。

【75】

 

■「エイリアン・フロム・メテオ 侵略」

 好きこそものの上手なれっていう意味では、そもそも制作陣みんなこの手の映画があんまり好きではなかったのかもしれません。

【50】

 

■「サイコ・ゴアマン」

 好きこそものの上手なれっていう意味では、ほんとこの制作陣はこの手のジャンル映画を愛しまくっているのがわかって愛らしかったです。着ぐるみモンスター大暴れのグロ描写といい、クソビッチなヒロインの少女も含め、完成度の低さなどものともしない、夜中のラブレターのような熱愛に満ちたクソ映画です。

【65】

 

■「裁かるゝジャンヌ」

 ほんとに今になってこんな古典を観ている自分の勉強不足を恥じつつ、映像としての映画というものはもはやこの時点でほぼ完成していたのだなあと痛切に感じた天才のお仕事。とにもかくにも絵の持つ力が凄すぎる。

【75】

 

□「メドゥーサ デラックス」

 ヘアコンテストの会場で発生したスター美容師の殺人事件を巡るミステリー…というよりは、トップを目指す美容師やモデルたちのエゴと欲望むき出しなドロドロの人間模様と、業界の闇を描いたドラマと言った方がしっくりくる映画です。

そしてその手法はワンショット。ドラマはリアルタイムで進行していくわけですが、そもそもワンショット映画の醍醐味ってリアルタイムならではの臨場感。編集という空間や時間を良きようにいじる(書き換える)のではなく、あくまでその時の空気をそのまま伝える事が最大の強みだと思うのですが、それ故使いようによっては焦点が合いにくく間延びしてしまうのですが、この映画についてはそもそのの内容がワンショットに不向き。ミステリーとしての謎解きに時間制限的な緊張感も無く、そもそもすべての要素に時間としての制限が無い内容でなぜにワンショットにしたのかというところ。正直奇を衒ったとしか思えないその手法のせいで映画自体が間延びし緊張感が無くわかりづらい、そして熱演してた役者の方々の演技を見世物にしてしまうというという悪循環に落ちてしまいました。

 ラストクレジットがすごく楽しそうなだけに、新人監督の野望が自信過剰になってしまったのがなんとも切ない映画でした。

【60】

 

□「ザ・クリエイター 創造者」

 きっと「ローグワン」を途中退場させられた代わりに作らせてもらった(かもしれない)最近ほんとに珍しいノンシリーズのSF超大作。と思ったら8000万ドルという、結構破格な製作費で作られていたのがなんともこの監督っぽくて良い話。それも含め、とにかくこういうスケールのオリジナルSF映画がI-MAXなんかで観れるだけで、SFファンとしてはなんともうれしい気分にはなります。

 実際、映像的にはきらりと光るものがてんこ盛りで、巨大なものが空に浮かんでいる絵っていうのはなんて男の子の心を揺さぶるのだろうと改めて感動したりしましたし、AIというか、なんとも味のあるドロイドちっくなロボットたちがてんこ盛りなのはやっぱり楽しいもので、AIロボットたちのキャラ達はもとより、クライマックスあたりの大スケールの中の細かいディティールの詰め込み方も、いかにも好き者なオタク魂満載で、ほんとに”絵”としてのSF映画としては非常に楽しい映画でした。

 …なんですが、内容的には。「AI」vs「人類」の滅亡を掛けた戦いにアジアとアメリカ(西洋)という現実世界の反映させようという事で、アジア世界をAIの世界と設定したのは精神的文化が根強いアジアがAIの世界となるアイロニー的な面白さがあると考えたんだろうし、圧倒的武力で世界を牛耳ろうとするアメリカはまさにそのまま。それはそれで良いのだけれど、そんな思考があまりに短絡的というか浅はかで、AIに感情移入させようとする際に、アジア世界を貧乏で、貧祖で、可哀そうでそれでいて複雑で魅力的な世界と描いてしまうその発想の陳腐さ(というか古臭さというかワンパターンさ)がどうにも致命的。どうにも差別的というか、圧倒的な上から目線が感じられてしまうのだ、もちろん監督にはそんな意図は微塵も無く、ただそのオリエンタルな要素が大好きなだけなのだろうけれど、そんなオタクの無邪気さをこんな大作で見せてしまうのは、あまりに考えが足りないと思うのですが。世界観の作りこみの足りなさ(ニューアジアの政治形態や国家のありようなども含め、決定的に説明不足かと)など、アラというか稚拙さが目立つのはイメージと趣味優先で作ってしまうこの監督の悪い癖(「ローグワンはそれでおろされたわけだし、「ゴジラ」を観れば一目瞭然)。この監督はこういう大スケールの世界では無く、もう少しミニマムな世界を作らせた方が絶対面白いと思うのですが(「モンスターズ」なんてまさにそう)。オタクが趣味全開で好きなようにやってしまった悪い見本のような映画です。

 でも映像的には嫌いにはなれないのですが。

【65】

 

■「プロジェクト ユリシーズ」

 何気に地味だけどちゃんとしたSF映画。

【55】

 

■「ディストピア 2043 未知なる能力」

 結構変わり種だけどこちらもちゃんとしたSF映画。

【60】

 

■「アニマル・パージ」

 動物大暴れでグログロなわりに妙にあっさりな感じが切ない。

【50】

 

■「提督の艦隊」

 英蘭戦争で活躍した海軍提督の運命を描いたものすごく真面目で重厚なアクションアドベンチャー。これ結構な大迫力かつ満足する出来の佳作です。映画館で観てみたい。

【65】

 

□「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

 上映時間3時間26分。全く中だるみする事なくあっという間に過ぎてしまう、巨匠スコセッシが手掛けた映画の王道たる傑作。

 語弊があるかもしれませんが、久しぶりに”映画”を観たという幸福感と満足感を味わいました。

 なんというか、自分が映画を観始めた頃一番楽しみにして、そして感動していたアメリカ(ハリウッド)映画、まさにそんな雰囲気を久しぶりに味わったような、そういう気分。時代を読む名プロデューサーが目をつけた企画を、言葉と構成のプロたるシナリオライターが見事に構築、名監督たちが自分のイメージを元に腕を存分に発揮、名優達がその期待に答え魂のこもった演技を披露し、円熟のカメラマンなどのブロフェッショナルが、監督のイメージを何倍にも素晴らしいものに昇華させていく。そんな

古き良きアメリカ映画の底力を久しぶりに感じました(もはやこれを感じられるのはイーストウッドかスピルバーグ位になってしまいました…)。

 元ネタとなった事件はかなり有名で、FBI側目線で描いたドラマなどが結構昔からあるようで、原作自体もその方向のようなのだけれど、それを犯人側目線のサスペンスとしたところがこの映画のミソ。3時間半事件の謎が一本の筋として通っているため、色々なところに寄り道しても。本道に戻ってこれる安心感がこの映画の醍醐味。複雑怪奇なようで、実はかなりシンプルなストーリーは往年のハリウッド大作の基本であり得意技。寄り道がしっかりと本道に寄り添っていて、本道を豪華に発展させていくその方法論は昨今のハリウッド映画で忘れ去れた匠の技であり、今回、久々にその技術・技法に興奮させられまくりでした。

 オセージ族を取り巻く白人たちのエゴと強烈な差別意識はまんま現代社会の縮図だし(実際オセージを全く同じ人間と認識していないキャラ達はそのまま今のイスラエルと同じように感じます)、そのオセージ族にしても迫害の歴史がありながら生活が欧米化していく事に悦楽していく様をあえて見せている事により、安易な勧善懲悪で無い目線も感じます。魔王たるデ・ニーロ(さすがの得意キャラ)の家畜を扱うがごとくのオセージへの対応が本当に恐ろしく、主人公である小悪党(チンピラですな)ディカプリオ(この人はこういう開き直った小悪党演技が本当に上手)の、部族に溶け込んでいるようでいてその実根本にある差別意識が滲み出る様は本当に狂気。そんな狂気と悪意の塊に対抗する立場となっているリリー・グラッドストーンのなんと崇高で気高い事か。心と体に問題を抱えながらひたすら人を信じつつ、決してそれに飲み込まれない尊厳と強さ。そんなオセージを代表するキャラをまさに憑依・体現した演技は(個人的には)アカデミー賞確定。裏切られ、蔑まれても生きていく芯の強さを滲み出させる一世一代の名演でした。

 テーマとしての社会問題の重さが結構ハードルを上げているような本作ではありますが(もちろん上映時間も)、サスペンスミステリーとしても超一級。エンタテインメントとしても存分に楽しめる傑作でした。

【90】

 

■「ザ・ソウルメイト」

 マブリーがかわいいからもうどうでもいいです。

【60】

 

□「SIS シス 不死身の男」

 いかにも男の子が大好きそうなザ・B級グラインドハウス系ミリタリーアクション。壮絶な苦労の末発見した金塊を奪われた男と、奪ったナチスドイツ部隊の血で血を洗う抗争劇。男の武器は1本のつるはしと折れない心=SISのみ!といういやあほんと世の大きい男の子たちが燃え(萌え)まくる設定であります。どれだけ痛めつけられ、殴られ、殺されそうになっても立ちあがり、敵を殺しまくるカッコよすぎる老兵の非現実な戦いが、ケレンミたっぷり、血しぶきどっぷり、グロたっぷりな、ありえないけれど痛快すぎる展開で映画は進んでいくので、細かいツッコミは野暮以外の何物でも無し。とにかく老兵の暴れっぷりをひたすら堪能すればそれで良し。そういう意味では豪快過ぎる快作ではありました。

 とはいえ完成度的には今二つ。もう少しまとめてテンポよく、そしてフラインドハウス的なお遊びをきちんと真面目に(ここ重要)遊べていればもっと良い映画になったのになあというのが正直なところ。できればファンタジーに昇華するような想像を超える展開を期待していたのですが、そこまでは行けなかったのはなんとも勿体無いというか切なかったです。

【65】

 

□「ザ・キラー (NETFLXオリジナル映画)」

 ネットフリックスで配信されていますが劇場で鑑賞。なんてったってデビッド・フィンチャー久々の新作とあっては期待せずにはいられません。

 …正直なところなんともつかみどころのない妙な映画。とある”ニアミス”により岐路に立たされる独り言の多い(笑)完璧主義者の殺し屋が、雇い主や自分自身にさえ抗いながら世界を舞台に追跡劇を繰り広げていく…という、あらすじだけみればスケールの大きな一大アクションかと思いがちだけれど、実際は妙にミニマムで言ってしまえば地味な映画。世界中の都市を巡るのだけれど、どこも取り立てて印象に残らないという、なある意味贅沢な映画とはなっています。

 まあこの映画に関してはディティールが命。偏執的な主人公の細かすぎるルーティーンやこだわりが徹底的に作りこまれ、それを観ているだけでも結構満足したりします。イケメンファスベンダーの個性を殺した無表情さもなんともいい味出しているし、ハードボイルドにしてはしゃべりすぎだけれど(苦笑)そんな無個性イケメン殺し屋からにじみ出る冷徹な狂気と熱がなんとも癖になります。

 暗いけれどやたらおしゃれでキメキメな構図がかっこよすぎるカメラや、結構複雑なストーリーを極めてシンプルに整えてる編集など、完成度はずぬけて高め。淡々・飄々をしている分だけ観る人を選ぶ映画ではありますが、フィンチャー独特の、人を食たような人間嫌いな完璧主義を堪能できるという意味ではつかみどころが無いというのは褒め言葉かもしれません。

【70】

 

□「ドミノ(2023)」

 なんだかよくわからい予告編に魅せられて鑑賞しましたが、何のことは無い、かの傑作「スキャナーズ」のロドリゲス=アフレックリブートでした。

 脳をハッキング出来る悪党に絡まれた主人公がやがて自分の秘密を知る…ってまんま「スキャナーズ」なんですが、お話自体は結構楽しい。実際二転三転するストーリーは確かに先は読めないし、それでも(髪の毛一本分程度ですが)筋は通っていて、無理矢理感は半端ないですが、十分許容できる範囲。なので決してつまらないという訳ではないのですが、これはもうひとえに監督の力量不足というか、相性の悪さ。

 実際、この内容であれば大げさなアクションは不要だし、かえって邪魔。ハッカー同士の心理戦・騙しあいに重点をおけば十分サスペンスとして魅力的だし、そうすべき内容。だのにロドリゲスは自分の得意ジャンルに強引に持っていったものだから、アクション映画的な演出がどうにも違和感。”死んだ魚の目をした男”アフレックも、ヒーローにしてしまったものだからなんとも精彩を欠いた演技。なんというかすべての歯車がかみ合ってないという悲しい映画でした。

 【65】

 

□「カンダハル 突破せよ」

 我らがヒーロー、漢ジェラルド・バトラー主演の実話ベースの戦争アクション。今回も兄貴はやってくれます。

 全世界に素性がばれてしまったCIA工作員トム・ハリスは脱出のため潜伏先のイランからアフガニスタン南部のCIA基地を目指す。その行く手を阻むのはイランの精鋭集団、パキスタン軍、タリバンゲリラや傭兵たち。トムを巡って繰り広げられる敵味方入り乱れての壮絶な死闘の中、絶体絶命のトムは制限時間30時間内でのカンダハル到着を目指す…

 とまあ素敵すぎるストーリーの中、我らが兄貴は一介の工作員とは思えないスキルと剛腕で次々と危機を突破していきます。そこはもうお約束なので文句のあろうはずもありませんが、今回は実話ベースという事もあり、中東情勢の複雑さがエンタメとしての爽快感を結構殺してしまっている感。ド派手な戦闘シーンや一対一の西部劇チックな銃撃戦がちょっと浮いてしまっているのが難しくも切ない。兄貴の不死身の強さも今回ばかりはリアリティに欠けた部分が目立つので(いや世界観がリアルすぎるからなんだけれど)、そういう意味ではちょっと物足りない感じではありました。

 とはいえスリルとサスペンスはなかなかのものだし、アフガンの広大な大地の中繰り広げられるド派手アクションは単体としてみれば十分満足。普通の人間ドラマもきっちり出来る兄貴としては今回はそっち方面にバランスを置いた方が良かったのかもしれません。ちょっともったいない映画でした。

【70】

 

■「シティハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」

 シティハンターにあまりなじみがないので何とも言えないですが、元もこんなにふざけたコメディなんでしょうか。

オゲレツすぎて結構引きました(苦笑)

【55】

 

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