2026年6月 鑑賞映画ひとことレビュー

 

6月の鑑賞本数はだいぶ少なめ25本。これはもう完全にW杯のせいです。

 

□「ザ・レイク

 タイ産モンスターパニック。それなりに頑張ってます。

【60】

 

□「ジュラシック・レイク」

 トンデモB級バカ映画としては楽しめます。

【55】

 

■「シラート

 なんだかやたら評判が高く、新しい映画体験的な売り方をしていた本作。

 失踪した娘を捜すため砂漠のレイブパーティに参加した父と息子の旅の行方を、奇想天外なストーリーとクールなダンスミュージックを融合させて描き、本国スペインをはじめヨーロッパ各国で話題を集めたロードムービー。(映画.comのあらすじより)

 クールなダンスミュージックと奇想天外なストーリーの融合と言えば聞こえはいいですが、なんというか、個人的には言ってしまえば非常に苦痛な映画でした。オープニングの、テクノの低音リズムが鳴り響く、白日夢のようなレイブパーティのシーンに乗れれば多分ハイな体験と新たな映画体験が出来るのでしょうが、延々と続くハイな人たちのグニュグニュダンスをグラグラ画面で見せられた時の猛烈な眠けと嫌悪感に早々に降伏。娘を探す父と息子には至極同情したものの、どことも知れぬ荒野を延々と彷徨う、おおよそ感情移入出来ない薬中どものたわけでつまらない思想・行動を見せられるのはやっぱり苦痛でした。

 中盤の大事件から後半のバカすぎる展開はまあいいとしても、それを奇想天外でまとめるのはどうかとも思うし、もちろん、悪夢のような荒野の風景の見事さや役者たちの熱演(父親の天啓はなかなかすごかった)も素晴らしいし、こういう雰囲気にテクノを併せるその新鮮味と慧眼は見事だとは思いますし、この映画(物語)を製作した監督の意図もなんとなく理解は出来るのですが、あくまで個人的意見として、映画は観客がいてナンボ。意図や思想、思考をあえて伝えようとしない(ように見える)のはいかがなものかと。例えばリンチなんかは監督が考えうる中で最高のエンタメを提供しようとしている意思が見えるのだけれど、この映画にはそういう思考が垣間見えないのがなんとも腹立たしい思いでした。

 映像の完成度的に評価が高いのももちろんわかるけれど、やっぱりこの手の映画は苦手な事を改めて思い出しました。

【55】

 

■「マスターズ・オブ・ユニバース

 この2026年にあのヒーマンが映画化されるとは!といいつつおもちゃの方は全く無知で、ドルフ・ラングレン様が主演なされた「マスターズ 超空の覇者」のみの知識という有様。正直予告編だといかにもなヒーローもので、この令和の時代にこの流れで大丈夫なのかしらと不安だったのですが、監督がかのトラビス・ナイト。コマ撮りアニメで頭角を現し、かの傑作スピンオフ「バンブルビー」をモノにした大金持ちのおぼっちゃん。これはもしやと一縷の望みをかけての鑑賞でしたが…

 惑星エターニアの王子アダムは、幼少期に起きた戦乱から身を守るため地球へと送られ、正体を隠して成長する。15年後、偶然手にした伝説の剣「パワーソード」に導かれ故郷へ戻った彼は、エターニアが宿敵スケルターによって支配されている現実を知る。エターニアとその人々を救うため、アダムは戦士ヒーマンとして悪の軍団との死闘に身を投じていく…(映画.comより) 。

 というあらすじからはいかにもヒーロー映画の王道って感じですが、これがまあ昨今稀にみるバカ映画。中二病真っ只中の主人公がめちゃ強のマッチョヒーローに異世界転生するも、敵はバリバリ現実派のブラック企業のボス。さて主人公は夢と現実のギャップにどのように立ち向かっていくのでしょう…という、まるで自己啓発セミナーのようなお話が、華麗なアクションと迫力満点の特殊効果、圧倒的に金を掛けまくったビジュアルと豪華なキャストで描かれるという奇天烈さ。多分普通に英雄譚として描けばそれなりの映画になるものを、あえて王道を外しまくり、それでもバカにしているパロディにするわけでもなく、あくまでリスペクトを持ってコメディ色満載で描くその感じは、最近話題になった「ダンジョンズ&ドラゴンズ」臭がしまくりで、本国で大コケしたのもむべなるかな。そりゃ普通にマスターズフィギュアの映画化だと思ったらなんだかゆるーい自己啓発コメディ見せられたらたまったもんじゃありませんが、「D&D」と同じくハマる人にはとことん突き刺さる、まさにオタクのかゆいところに手が届きまくる映画でした。ブライアン・メイのギターが鳴り響く昨今稀にみる壮大な主題曲(最近のヘビーローテ)と共に、イケメンすっとこヒーローの自分探しの大冒険と、コスプレがお似合いな凶悪(だけどコケティッシュ笑)スケルター(トレーニングウェア姿が最高でした)に癒される、今年一番の癒し系ムービーです。

 まあこういう題材をこういう感じでしか描けない(描いてはいけない)昨今の風潮に若干の寂しさも感じましたが…

【75】

 

□「ナイト・オブ・アルカディアン

 なんだか評判悪いですが、普通に丁寧に作られた面白いアポカリプス青春ものでした。モンスターがなかなか個性的で良し。

【70】

 

□「片腕サイボーグ

 昔懐かし80年代B級SF映画の代表作。いやーヒロインとの関係なんて今じゃ考えられない展開でやっぱり楽しいですね。

【60】

 

□「スーパーディープ」

 ロシア製のSFパニックアクション。ロシア製だからなのかやたらハードでダークで無慈悲なのが良いです。

【60】

 

■「Never After Dark/ネバー・アフター・ダーク

 昨今のJホラーとは一線を画した感じがなかなか良かったオカルトホラー。

 監督・脚本がアメリカ人という事もあるのか、所謂「お化け屋敷」系のいかにもお話が、Jホラーとも、ハリウッド製のホラーとも違う、融合された独特な雰囲気を持っているのがこの映画の良い所。

 霊媒師一家に生まれた愛里と、ある事件により霊となった姉・美玖は、霊と交信できる力で全国の怪事件を解決してまわっていた。そんな姉妹のもとに、ある屋敷に現れる男の亡霊を祓ってほしいという依頼が舞い込む。亡霊を目撃した張本人の禎子は愛里の仕事に興味津々だが、息子の群治は霊の存在に懐疑的だった。屋敷で怪現象が次々と起こるなか、除霊の儀式を始めた愛里は、おぞましい姿の亡霊に遭遇する。亡霊は部屋の壁に隠された何かを必死に捜していた。やがて、屋敷の秘密と亡霊の正体、姉妹を縛る恐ろしい過去が明らかになっていく…(映画.comより)

 昨今濫造のJホラーだと、この手のお話は主人公にアイドル系のタレントを持ってきたり、「呪怨」や「リング」の丸パクリ的なこけおどし系であからさまにティーン受けを狙いに行くのですが(それが悪いとは言いませんが)、この映画の場合、その内容なのに、あきらかにターゲット層がアート系というか、ちょっと違うところに定めているのが面白いというか無謀というか。舞台となる屋敷の美術や、暗めだけど意思を感じる色遣い、あからさまなジャンプスケアに頼らず雰囲気を感じさせようという演出など、明らかに違うものをやろうという心意気は立派。なので昨今のティーン向けのお手軽Jホラーに食傷気味な身としては、なかなかに新鮮味がありました。

 まあ決してそれが成功しているわけでもなく、実際、逆にそのアート系な雰囲気が映画を壊しているところ(木村多江の演出はあきらかに間違ってる気がする)もあるし、正直その洋風な感じが映画全体の統一感を無くさせていてチグハグな印象もあるし、主役の穂志もえかの個性は素晴らしいのだけれど、いかにもな設定で興ざめしてしまうところもあったので、決して傑作!というわけではないのですが、製作の賀来賢人(この方はなかなかに気骨がありそうで好みです)との共同会社1作目としては上々の出来ではないでしょうか。

 ただ吉岡睦雄さんは反則です(苦笑)。

【70】

 

■「モータルコンバット/ネクストラウンド

 前作のヒロユキ・サナダから、今回は推しのカール・アーバンの晴れ姿を大画面で堪能しなけれればと、わざわざIMAXで鑑賞するというファンの鏡のような行動をしてしまった、トンデモ格闘映画第2弾。

 人間界と魔界の命運をかけた格闘大会「モータルコンバット」では、人間界がすでに9度の敗北を喫しており、あと1敗で世界の存亡が危ぶまれる状況にあった。最終決戦を前に、人間界の戦士たちは新たな仲間としてハリウッドスターのジョニー・ケイジを迎え、魔界の皇帝シャオ・カーン率いる勢力との戦いに挑む…(映画.comより)

 ”魔界の皇帝”というもう中二病には堪らない二つ名を持つ大ボスと、”ゴーストハンターズ(ハリウッドでギャグになる位メジャーな存在なのがなんだかとっても嬉しいです…)”ライデン率いる人間界の戦士たちの、血で血を洗う壮絶なるゴアバトルを、何よりもサービス精神ファーストで描いた、生粋のバカ映画。1作目もそうでしたが、とにかく”わざわざこの映画を選んで観に来てくれた人々”に楽しかった!面白かった!と言ってもらう事に全振りしてるその潔さが素晴らしい。1作目で死んだ人気キャラをわざわざ生き返らせきちんと見せ場を与えたり(ヒロユキ・ザナダ最高です)、それでいて新たに萌え系カンフーヒロインを登場させたりするそのナンでもありのサービス精神、それはもう「モータル・コンバット」というIPの精神そのまま。なので、これ以上ないほどの愛と尊敬に満ちた映画化だと思います(ただゲーム自体は未プレイなのであくまで映画としての感想ですが)。

 もちろん全部上手くいってるわけでもなくて、アクションの出来不出来が激しかったり(実際全て役者の方がやってるって聞くと素晴らしいとは思いますが)、思いのほかわが推しルーク・ケイジが活躍しなかったり(というか主役じゃあないです)とかとにかくナンでもありなのでお話としてはまとまり皆無だとか色々引っかかりところはありますが、それはもうどうでもいい事。目から喉から発光しまくる人間LED浅野忠信だけでもうお釣りが来る楽しさは、そんな細かい事を気にしたら負けな位のノリで楽しむべき映画です。サードラウンド、めちゃ楽しみです。

【70】

 

□「ホラーマニアvs5人のシリアル・キラー

 設定も面白いし、お話もまずまず。あとは演出に個性とキレがあれば結構な良作になったのになあと。

【60】

 

□「最”新”絶叫計画

 愛があるのは素晴らしいです。

【55】

 

■「尋秦記 バック・トゥ・ザ・パスト

 香港の人気小説を原作とする2001年製作のテレビシリーズ「尋秦記 タイムコップ B.C.250」の続編となる歴史SFアクション映画。という事で、ドラマの事を全く知らなかった不勉強な自分としては、オープニングのダイジェストからハテナが出まくったのですが、そこはB級アクション映画慣れしてる身。そういうものと割り切ってしっかり楽しんで参りました。

 戦国時代の秦にタイムスリップした元香港警察の要人警護官・項少龍(ホン・シウロン)は、歴史の転換点に深く関わった後、人里離れた地で妻子とともに静かに暮らしていた。かつて項少龍が帝位へと導いた弟子・秦王は、師である項少龍を警戒し、2人の因縁はくすぶり続けている。一方、現代の香港では、タイムマシンの発明者で項少龍が戻らなかった責任を問われ20年服役していたケンが出所する。すべてを失った彼は、秦王の座を奪って自らが始皇帝となることをもくろみ、娘のゲイリーらとともに戦国時代へ向かう。ケンの襲撃により窮地に陥った秦王は、逃亡の末に項少龍の元へたどり着く…(映画.comより)

 というわけで結構ガチガチのB級SF。まあ九龍城塞がなければ公開なんてされなかっただろう位のB級度合いなのですが、とにかくルイクーさんが本当に楽しそうで。歴史の重要な転換期にめちゃくちゃ関わった現代人という、ものすごく微妙な立場の癖に、二人の嫁と出来の良い息子に囲まれ幸せな生活を営むという、ある意味ものすごく無責任なキャラを好々爺っぽく演じたかと思えば、現代から来た因縁のある敵とのバトルではカッコつけまくりのアクション全開。とにかくルイクーさんがどのシーンでも本当にアイドルなので、ルイクーファンはもう鼻血もの。かたやレイモンド・ラムさん。ドラマではどうやら秦の始皇帝となっていく上で、ルイクーさんとの行き違いやその重圧、責任なんかで結構残酷非道で頑なな人になっているようですが、この映画でもなんだか一人で真面目な部分を背負っている感じで少々かわいそう。ルイクーさんの伸び伸びとは対照的で、これはこれでファンにはたまらないのでしょう。

 映画はドラマのファンダムに向けた感謝祭みたいなものなので、細かい事は言いっこ無し。SFとしてはツッコミどころしかないのだけれど、ファンのためにという方向性にブレが無いので、そういうものと割り切って観れば十分楽しめる映画でした(ラストシーンを2種類公開するサービス精神はさすが香港)。

 しかしラムさん、あまりにも昔と違いすぎるのですが…(苦笑)

【65】

 

■「Michael/マイケル

 ミュージシャン伝記映画の真打登場!というかマイケル・ジャクソンの伝記映画なんて物凄くハードル高いと思っていたので、全米公開後の批評家の低評価はあまり気にならず。それよりも観客の評価がものすごく高かったので、ある程度の期待を持って鑑賞いたしました。

 映画は1960年代ジャクソン5の時代から1980年代後半のBADツアーまで、マイケルが世界的スターへと昇り詰めていく様を、父親との確執をメインに描いていくわけですが、自分達の年代だとスーパースター中のスーパースター。その奇抜なファッションや様々な奇行の噂も含め、その存在全てが世界一のスターという認識なわけです。もちろんかのセクハラ訴訟やベビーぶら下げ事件なんかもある意味世界最高のエンターテイナーとしての光と影な訳で、全てがマイケル・ジャクソンというアイコン。なので伝記映画というからにはその裏の”人間”マイケルを語る事が必須だと思う訳です。そういう意味ではこの映画、人間マイケルという意味ではちょっと物足りないというか、かなり浅い。この映画のマイケルは、絶対的支配者である父親からの脱却、そして自己の開放という目的に向かって苦しみ、闘い続ける人間となっているのだけれど、そのマイケルがなんだか人形のように空疎。それはもうマイケルというスターのアイコンから逸脱出来ない(しない)制作側の逃げであって、まあある意味物語をシンプルにするには上手い手なのだけれど、やっぱりマイケルという幻想を残しておきたいという遺族たちのエゴが透けて見える気がするのは性格悪すぎかもですが。ただ、いいひとのように描かれてる母親や、兄弟たちについても、良く良く観ると結局誰も父親と戦わなかった、守らなかったという事が(ひっそりとだけれど)きっちり描かれているところなんかには監督の矜持が見えたりもしましたが。総じて父親以外の登場人物全員に気を使っているように感じてしまいました。

 だからなのか甥っ子のジャファー君、ほんとめちゃくちゃ頑張ってたし、ダンスなんかほんとに素晴らしいのだけれど、その空疎な人形キャラのせいか正直物まねにしか見えない。完コピのダンスやライブシーン、ミュージックビデオなんかはほんとに素晴らしいし、そこに文句を言うつもりは全く無いし、ジャファー君の努力はほんとに見事なのだけれど、やっぱりキャラクターとしての人間性が足りない分、非常に勿体ない気がしました。

 だけどやっぱりライブやダンスは最高だし、スリラーでジョン・ランディスがちょびっと登場した時はめちゃ嬉しかったし(スコセッシも登場してほしかったです笑)、父親にはめちゃくちゃ腹が立ったし、ダンディなクインシーはカッコよかったし、ボディガードのビル・ブレイは優しかったし、素直に楽しめる映画ではあるのですが、マイケル・ジャクソンという不世出の天才を得ガイた映画だからこその深みが欲しかったというのが正直な感想でした。

【75】

 

■「黒牢城

 あの黒沢清の初時代劇!しかも原作が、数々のミステリー賞を席巻した米澤穂信の「黒牢城」という事で、時代劇と本格ミステリー、そして黒沢清と、自分の好きなものがここまで重なった世紀の企画、これは期待するなという方が無理ってなもので。

 荒木村重は織田信長の暴虐なやり方に反発して謀反を起こし、有岡城に立てこもる。織田軍に包囲され孤立無援となった城内で、村重は血気盛んな家臣たちを抑えつつ、妻・千代保を心の支えに、城と人々を守ろうと苦心していた。そんな中、城内で少年が殺害される事件が起こり、その後も怪事件が続発する。容疑者は密室と化した城内にいる家臣や身内の誰かで、城外には敵軍、城内には裏切り者という状況に、誰もが疑心暗鬼に陥っていく。追い詰められた村重は、信長の使者として説得に訪れ牢に囚われた天才軍師・黒田官兵衛に協力を仰ぎ、事件の解決に挑む…(映画.comより)

 多分映像化するだろうと思い、原作は未読。なのでこの映画が初体験。物語は包囲されている城内での約1年間に発生した4つの事件の謎解きと、その犯人探しと動機を巡るいわば連作的な感じで展開。包囲されているという極限状態の中で、家臣や身内の焦燥や思惑などが事件を通して描かれていくというのが主な筋なのですが、この映画、ミステリーとしては結構失敗作。事件の概要説明や、伏線の張り方、ミスリードなどがなんとも下手というかやる気が無い感じで、謎解き自体もなんというかいい加減というか力が入っていないのがミエミエ。物語自体はかなり複雑というか、いろいろな要素が混じっていて、テーマを含め複合的な重厚さがあるのだけれど、皆が期待するミステリー映画というエンタメとしては正直不出来な映画だと思います。

 ただ、その事件以外のドラマがすこぶる面白い。戦国時代という、何もかもがかなり特殊な世界。独特すぎる武士の死生観や倫理観、権謀と策略渦巻く乱世で、それぞれの役割の中で生きるしかない人々の葛藤や苦悩を、監督は時代劇という伝統芸能の形式を継承ししっかりと描写(時代劇調セリフがしっかり頭に入ってくるのがなんだか普通に嬉しかったですし、おっさんだらけなのに登場人物が非常にわかりやすかったのも親切でした。このあたりは上手です)。主人公を荒木村重というある意味戦国時代では異物に設定することで戦国時代の異常さをある意味わかりやすく教えてくれます。大げさな描写や過度なアクションを避けつつ、特殊な状況下における特殊な人々の中で、唯一普通(現代的な意味で)な主人公を丁寧に描く事で、狂気が蔓延する世界の中で正気を保とうと苦闘する、黒沢清映画としていつものテーマをきっちりとやっているのがさすがだなあと感じました。

 菅田将暉とモッっくんは流石のうまさでしたが、個人的には舘様が思いの外時代劇にあっていたのがなんだか発見でした。

【70】

 

■「億万長者の不都合な終末

 もしビリオネアだけが罹患する奇病が蔓延したら世界はどうなるのか…という思考実験を映画化した一応ブラックコメディ。怪作「プラットフォーム」の監督が同じようなシミュレーション手法で製作しているのだけれど、今回は資本主義の崩壊から世界が終末するまでを結構なスケールで描いておるのですが、映画の出来としては今ひとつでした。

 まず、ビリオネアだけが罹患する奇病という設定。これ歯がめちゃ白く光るのが初期症状という、お笑い以外の何物でもない設定なのですが、その病気とお話しの深刻具合がどうにもチグハグ。それも含め映画全体がユーモアと深刻さのアンバランスさが激しくて、笑っていいのか怖がっていいのか感心していいのかなんともわかりづらいというか難しいというか。なので、いけすかない主人公がかなり悲惨な目にあっていくのだけれど、笑うに笑えず、ムカつくやつだから泣くに泣けず、どうにも中途半端。アイデア自体は面白いだけに、作劇としての下手さがなんとも勿体無い映画でした。もういっその事モンティ・パイソンくらい弾ければ良かったのに、下手に現代の社会問題をちょっと真面目に論じてみようなんて思ったりするものだから却ってこういう中途半端な出来になるのだなあと改めて映画制作の難しさを感じた次第です。

 ただ、先進国と発展途上国の立場が入れ替わるとか、アイデアは本当に魅力的なので、この監督さん、いい脚本家と巡り会えばもっと化けるだろうなあと感じました。

【65】

 

□「城市特警

 ジョニー・トー、アンドリュー・カム共同監督の香港バイオレンスリベンジアクション。ハードでシリアス、かつ立派なエンタメ。流石です。

【65】

 

□「REDCON-1 レッドコン1 戦闘最大警戒レベル

 所謂ゾンビVS軍隊のミリタリー系B級ホラーですが、結構しっかり作ってあるのが良。ちょっとしたアイデアや工夫もあり、悪くない出来でした。

【65】

 

□「スクリーム6

 なんだかんだ色々ありながらしつこく続いてる「スクリーム」シリーズ第6弾(日本だと第5弾は「スクリーム」)登場人物たちが新たにゴーストフェイス殺人鬼に狙われる顛末を描く。今回はいつものアッテンボローを離れ大都会ニューヨークが舞台。というわけで舞台が変わって新鮮味はあるけれど、やってる事はおんなじなので、そこはそれ。シリーズお約束はそのままに新旧キャストが入り乱れての遣り過ぎスラッシャーはやっぱり楽しいです。犯人探しも安定のお約束なので、そこに面白さは無いけれど、シリーズを愛するスタッフの方々の気持ちが伝わってくるのがなんだかほのぼの。続投の監督コンビはやっぱり実力あり。

【65】

 

■「スクリーム7

 というわけで第6弾に(大人の事情で)あんまり活躍しなかったメインキャラ・ネーブ・キャンベルを主役にした、久々の(まさかの)劇場公開作。

 過去の惨劇を生き延びたシドニーはなんだかんだで子供を授かり平凡な幸せを送っていた。そこへ1本の電話をきっかけに新たなゴーストフェイスの惨劇が繰り返される。標的はシドニーの娘にも及び、彼女は再び恐怖と向き合うことになる…

 というわけでこちらは前作6の続き。このシリーズ、なんだかんだで全て繋がっているので過去作観ていないと結構わからない事が多くて、初心者にはかなりハドルが高いのですが、それなのに7を劇場公開した配給会社の勇気にまず拍手。同時期に最終絶叫計画の新作を公開するという暴挙にも出ているので多分配給会社の中にチャレンジャーがいるのでしょうが、彼・彼女の幸運を願うばかりです…

 それはおいておいて、今回は監督がシリーズの生みの親の一人であるケビン・ウィリアムソン。脚本家としてシリーズを立ち上げた人が人の脚本で監督するっていうのもなんだか不思議な感じですが、今回はお約束はもちろん、主人公とその娘の関係に焦点を当てた設定。トラウマな過去のため過保護になる母親と、反抗期の娘はある意味王道なので、シリーズお約束には則ってますが、とはいえやっぱりマンネリ感は否めないのも正直なところ。ここまで引っ張られるファイナルガールはある意味新鮮味はあるけれど、よくよく観るとこの方達、本書いたりマスコミに就職したりと承認欲求の塊でもあるので素直に同情できないのもなんだかなあと。あとこのメタ世界の「スタブ」人気が異常すぎるのものなんだか強引やら微笑ましいやら。映画としてはオーソドックスはスラッシャーなので普通に楽しめる出来ではありますが、やっぱりシリーズ全編を観ていないと理解できない事が多く、ハードルが高いのはマイナスポイントです。

【65】

 

■「スーパーガール(2026)

 さてさて、ジェームズ・ガンによるリブートDC第2弾。第1弾のスーパーマンが好評だっただけに、2作目の役割は重要なのですが、うーんなんとも言えない微妙な映画となってしまいました。

 スーパーマンが地球を救った後の世界。故郷クリプトン星を失ったカーラ・ゾー=エルは、唯一の心の拠りどころである愛犬クリプトと静かに暮らしていた。そんなある日、突如として現れた謎の敵クレムの攻撃により、クリプトが毒に侵されてしまう。カーラは解毒剤を手に入れるべく、同じくクレムに家族を奪われた異星人の少女ルーシーや凶暴な賞金稼ぎロボとともに、宇宙規模の壮大な戦いに身を投じていく…(映画.comより)

 とにかくこのスーパーガール=カーラ・ゾ=エル。やさぐれ飲んだくれで、自暴自棄で自堕落なはすっぱガール。友達は犬のクリプトだけ。そんな若者がヒーローとして自覚・覚醒していくも成長物語が本作。なので、観客がカーラを好きになり、応援して行く事が必須なわけで、そのためには彼女のバックボーンや内面をしっかり描く事が重要なのですが、どうにもこの映画そこのところが希薄。なんというかアクションやエンタメに集中しすぎてて、そういう大事なところないがしろにされている印象でした。映画全体がそんな感じで、ルーシーはわがまま役立たず少女にしか思えないし、せっかくのモモアマン=ロボはなんだかよくわからないただの暴れん坊だったりで、総じて書き込みの浅さが目立つ結果。まるで「スター・ウォーズ」な異星人だらけの冒険旅行は楽しいけれど、やっぱり全体の薄っぺらが残念な映画でした。

 ただエンタメとしては決してつまらないわけでは無く、ツッコミどころや勿体無い所は多々あれど(作劇的に太陽の色で能力が復活するのを待つだけっていうのはあまりに雑すぎる)、薄っペラいけれどはすっぱガールはそれなりに魅力的(容姿は見せ方の問題なので)だし前述したけど個性的な異星人たちが登場しまくるのは普通に楽しいし、退屈はしないけれど、敵の小物感も含め、全体としてツッコミ不足な映画でした。

 本国でコケたらしいので2作目で早くも正念場なガン版DCですが、色々動いてるプロジェクトの中でもやっぱりスーパーマンの続編が正念場。ミソがついたスーパーガール含め、どこまで盛り返してくるか注目です。

【70】

 

□「ツイン・ミュータント

 なんだかお兄さんが延々殴られてる印象しか…

【55】

 

□「COME TRUE/カム・トゥルー 戦慄の催眠実験

 雰囲気は良。主人公の少女がなかなか個性的でいい感じ。なんだか粗い感じだなあと思ったらまさかのオチ。でもそのオチは取って付けた感満載なのがなんとも。

【60】

 

■「ロングウォーク

 スティーブン・キング最初期のゼロサムゲーム小説の映画化。原作は大学生の時に読んで(翻訳されてるスティーブン・キング作品はほぼ読んでます。最近のハードカバーは高くて買えませんが…泣)マイベストに入ってるくらい好きな小説だったので、この映画化には期待と不安でいっぱいでした。

 戦争により国家が分断された近未来のアメリカでは、困窮する社会への光として「ロングウォーク」という競技が国をあげて開催されていた。ひたすら歩き続けるだけで破格の賞金と願いを1つかなえる権利を獲得できるこの競技に、選ばれた50人の若者たちが挑戦する。参加者に課されるのは「時速4.8キロをキープすること」「速度が下回ると警告開始」「3つの警告で即死」「最後の1人になるまで歩き続けること」という4つのルール。若者たちは装甲車に囲まれ、銃を向けられながら、休息も睡眠も許されない極限状態のなかで必死に歩き続けるが…(映画.comより)

 とにかく非常にハードでセンシティブな青春残酷物語。「銃撃戦がない戦争映画」という批評がある通り、絶えず死の恐怖がある極限状態の中で、それぞれのティーンエイジャーたちが織り成すドラマはまさに戦争映画そのもの。掛け替えのない友情もあれば、狂気に陥るもの、怒りに身を任せるもの、絶望に打ち震えるもの、それぞれの若者たちのリアルな感情や個性が、巨大な理不尽に飲み込まれ破滅して行く様はまさに戦争そのもの。映画は一切の容赦無く、徹底してリアルにその死の行軍を描いていきます(排便シーンは良くやった)。参加している若者もそれぞれ個性的で、演じた役者たちの飾らない好演(主人公二人を含め善人が本当にいい演技してます)が一層苦しみ悲しみを引き出し、若者特有の自由な空気感とその強烈な緊張感の対比が、映画をより一層重厚なものにしております。

 とにかく戦争映画としてアプローチの上、一切の妥協なく徹底してリアルにした事で、妙な設定のこの物語が悲壮で美しい青春映画として成功している最大の理由。もう感情がぐちゃぐちゃになる青春映画の傑作でした。

 ただ、ラストの改変だけは不要だったかなあと。あそこだけリアルから逸脱するのは、製作陣の覚悟が足りない気がしてほんと勿体無いのでマイナス5点。でも今年ベスト級の傑作です。キング原作映画、今年は大豊作…

 【80】

□「ザ・クレンジング 浄化者」

 悪くはないけれど、ちょっと展開がいかにもかと。でもしっかりとした良作。

【55】

 

□「バーチャル・ダイブ 偽りのエンバシー」

 やりたい事はわかるし、表現もなかなか面白いけれど、全体的にレベルがちょっと低めで勿体ないかと。

【55】

 

ここでお得なポッドキャストをご紹介!台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする映画やその他社会のもろもろについて私の友人であるアラフィフ男どもが熱く激しく語りまくるポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく、時に毒々しく、だけど基本は面白おかしく語りつくしておりますので、是非聞いてやってくださいませ。

よろしくお願いします‼