2023年9月 鑑賞映画ひとことレビュー | (ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

(ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

月一で初鑑賞映画の感想を書いてます。
あくまで個人の感想です。立派な考察・評論は出来ませんのでご容赦下さい。

2023年9月 鑑賞映画ひとことレビュー

 

9月の鑑賞本数は22本。ちょっとお疲れ気味です。

 

■「少林寺 怒りの金剛拳」

 最近の中国産カンフー映画ってなんだか燃えないのはなぜなんでしょう。やっぱり大陸のおざなりさなのでしょうか。

 【50】

 

□「ホーンテッドマンション(2023)」

 ファミリー向けと言えば聞こえがいいけれど、あまりにも人畜無害過ぎて鑑賞後5分ですべてを忘れるという、いかにもザ・ディズニーなへなちょこ映画。ポリコレとレイティングに気を使いすぎるホラー映画になんの意味があるのかという事はとりあえず置いておいて、ホラーコメディとしても、アトラクションとしても、イベントとしてもすべてが中途半端なのは映画として致命的。キャストは超豪華だし(アカデミー俳優2人にダニー・デヴィ―ト…)、いかにも金掛かってますっていうCGもいいんですが、なぜにこうも薄っぺらいのか。これはもうAIが作ったといっても納得してしまうくらいの無個性さでしょう。

 笑えないギャグと、金のかかったハロウィンコスプレレベルのゴアさ、そして生意気な子供と大人になり切れないオトナたちが活躍してします的な安直すぎるシナリオ…すべてにおいてディズニーの悪い部分が出てしまってるという、ある意味今のハリウッドの現状を一番見せてくれる映画なのかもしれません。実際、「パイレーツ・オブ・カリビアン」とか前回の「ホーンテッドマンション」(出来としては全然ダメですが)には少なくとも何か変えてやろうとか、のし上がってやろう的な熱はあったのですが、それと比較してもここまで骨抜きにされるものなのかという切なさ。現状のハリウッド大手の混沌と停滞と衰退をまざまざと見せつけられる、非常に悲しい映画でした。まあディズニーランドのアトラクション好きなら別にそんな事はどうでもいいんでしょうけれど。

【60】

 

■「喰らう家」

 すごい真面目に作ってあるのですが、さすがに飽きがきているような…

【55】

 

■「極主夫道 ザ・シネマ」

 原作読了、ドラマ未見。というわけでこれはこれで別にいいのでは。

【55】

 

□「PATHAAN」

 インド、熱いです。気候も人も映画もほんとに熱い。そんな熱すぎるインド映画に現れた、これまた熱すぎるスーパースパイパターン様を主人公にした熱すぎるバカアクション映画(もちろん誉め言葉)。

 インドやパキスタンにまたがるカシミール地方の自治権をインド政府がはく奪し、それに怒ったパキスタンの将軍カーディルは、元インド軍人のジムと手を組みテロ攻撃を企てる。インドの諜報機関RAW (Research Analysis Wing of India) に所属するパターンは、ジムが計画する生物兵器での攻撃を阻止するため動き出すが、デリーの上空を飛行中の飛行機に生物兵器が仕掛けられたことが判明。残された時間はわずか6分という絶体絶命の状況下で、インド最高のエージェントであるパターンは、母国を守るため奮闘する…(映画.comより)

 とまあお話はそれこそよくあるお話(というかパターンですな)で、どうって事ないのですが、とにかくパターン様=シャー・ルク・カーン様の男の色気がもうムンムンしすぎていろんなところが爆発しそう。超絶イケメンで、割れた腹筋が眩しいマッチョで激ツヨ。壮絶な過去からくる影を帯びつつも、ユーモアもあり、なおかつ漢気溢れるというまさにザ・主人公(もちろんモテモテ)。なのに嫌味が無いのはこのお方の気品ある個性のおかげか(インド映画はほぼ無知なので、今更ですがこの方母国インドでは超絶ビッグスターなのですね。納得)。

 もうそんなパターン様を拝むだけでご飯3杯は行けそうなのですが、リアルって何?的CG全開のアクションと、ツボを押さえまくったキメキメシーンのオンパレードで大満足の大満腹。やたら美人なヒロイン(ほんとインド映画のヒロインの美人度はすさまじすぎ)や、滅法強いらいばるとの因縁など、エンタメとして必要な要素をすべて兼ね備えた(というか強引にねじ込んだ)熱すぎる146分でした。

 もちろんその熱さが空回りしていたり、やりすぎが下手なところもありで、完璧な映画(そんなものはありませんが)では無いですが、浮世のわずらわしさをすっかり浄化してくれるとにかく楽しい146分。それだけでもう十分です。

【75】

 

■「マークスマン」

 安定のリーアム兄さん版「クライ・マッチョ」。それ以上でもそれ以下でも無し。

【65】

 

■「宇宙人東京に現わる」

 ようやく鑑賞。岡本太郎デザインの宇宙人が秀逸すぎ。ストーリーも今こそな感じで良。

【55】

 

□「ドラキュラ デメテル号最期の航海」

 何故今これを映画化・公開しようとしたのか、その意図が今一つわかりづらいゴシックホラー。原作のデメテル号が難破、崩壊していく様を元にオリジナルストーリーで映画化した訳ですが、さして目新しさも無いこの内容で、ヒットするとでも考えた制作陣の気持ちが正直わかりませんでした。

 とはいえ映画の出来としては上々。クローズトサークル内でどんどん人が襲われ死んでいく様をガチでマジなタッチで映画にしているので、結構遠慮なしのゴア描写も含め、やる気は本当に感じたし、実際ラストが決まっているストーリーの中、ここまできっちり、しかもかなり救いのない鬱展開を躊躇せずやり切り、今風の社会問題も散りばめつつ、ゴシックホラーとしてしっかり作りこんだ事に関しては素直に感動しました。だからこそドラキュラのデザインも含めたモンスターとしての立ち位置に疑問を感じたりもしました(これ絶対普通の人間風にキャラ立ちさせた方が面白かったと思います)。ホラー古典を現代に蘇らせようとする際のアプローチとしては奇をてらわない至極真っ当な方法を選択しているからこそ、ドラキュラをモンスターでは無く、怪人として描いてほしかった、それがなんとも残念な映画でした。

【65】

 

■「キラー・ブック・クラブ(Netflixオリジナル映画)」

 よくあるスラッシャーの粋を超える事が出来なかったごく普通のホラー。

【50】

 

□「グランツーリズモ」

 どうにも不遇の監督ニール・プロムカンプ久々の新作がまさかのゲーム実写映画化。なんとも切ない雇われ仕事だなあと思いききやさにあらず、監督ノリノリ、レース張りの超絶テンポで疾走しまくるハイスピード青春レース映画でした。

 元々ゲーム「グランツーリズモ」の世界ランカーが本物のレースに挑戦するという実話(あれ?「アライブフーン」…)を元にした映画なのですが、とにもかくにもテンポが異常。あれよあれよという間にサクサク物語が進むので、非常に見やすい反面、キャラたちの描写はおざなり気味。それでも野心溢れるオーランド・ブルーム(南ア繋がりですかね)や挫折を味わった元レーサーのデビッド・ハーバーの酸いも甘いも知り過ぎた人生からあふれ出す渋みなどは、ステレオタイプながらもそれぞれの役者たちの個性もあってなかなかに良い感じ。その分主役がどうにも弱いのが玉に瑕ですが。ありえない展開のようにも感じますが、いかんせん実話。事実は小説よりも奇なりを地で行くお話なので、あえて王道の青春サクセスストーリーとして余計なものを極力省いた分、シンプルに物語が入ってくるのは作戦勝ちかと思われます。

 まあそんなストーリー云々よりも、この映画に関しては作り手側のグランツーリズモ愛がもう崇拝にまで達しているのが何よりも素晴らしい。ゲーム開発からチーム立ち上げ、そして虎の穴からの本物のレースシーンまで、とにかくゲーム愛とリスペクトが半端なく、しかもそれがきちんと映画的な面白さ(ストーリーとシーンの連携とか絵的な興奮とか)に反映されているのが素晴らしい。一人のクリエイターの妄想が世界中を興奮させ、楽しませているという事のすばらしさをしっかり描いたという事にこの映画の良さが詰まっている気がしました。

 とにかくこの映画の成功によってプロムカンプがほんとにやりたいSF映画を撮れるようになる事を願うばかり。と思ったらまた計画頓挫というニュースが…がんばれプロムカンプ泣。

【80】

 

□「名探偵ポワロ ベネチアの亡霊」

 どうにもポワロ=ケネス・ブラナーのエゴが強すぎて今一つ乗れないシリーズ第3弾。大作感全開の前2作とは異なり、今回はちょっと地味めというか、オカルト要素強めの怪奇譚となっております。

 引退を考えてベネチアで過ごすポワロを、旧知の作家(また小生意気でいけ好かない女性)が知り合いのハロウィン交霊会に参加しトリックを暴いてほしいと訪問する。嫌々依頼を受けるポワロだが、その交霊会の最中、世にも奇妙な殺人事件が発生。おりしも洪水で閉じ込められた中、ポワロは幽霊の幻影に悩まされながらも事件の真相を暴いていく…

 とまあ前2作と比べて今回はかなり暗め。蠟燭の灯の中、暗闇を生かしたオカルト怪談演出過剰で前回との違いを明確にしつつ、相変わらずの自意識過剰ポワロのドヤ顔推理が展開されます。今とはいえ今回はそれほど余裕がないためか、はたまたお話自体がじめじめしているせいか爽快感は皆無。謎解きの快感も今一つで、伏線の張り方も含めミステリとしてはなんとも不細工な出来となっております。

 とはいえ映像的にはものすごく美しく、何かが潜んでそうな意味ありげな暗闇など、雰囲気的にはかなりグッとくる映像だらけで、そこはさすがの面目躍如といったところ。ベネチアの美しすぎる風景もシリーズ恒例CGで蘇る世界遺産(だけじゃないけれど)で、あまりに暗すぎる映画の中で一服の清涼剤としてうっとりします。

 前2作といいどうしてもポアロの主人公っぷりが肌に合わない(探偵はストーリの中では部外者であるっていうのがミステリの基本と考えているので)のですが、ミステリというよりポアロが主役の人間ドラマとしてみればこれはこれでアリなんでしょう。

【70】

 

■「エンド・オブ・アース 地球最期の日」

 チープCG祭りな、なんちゃってアポカリプスもの。多分この世界なら生き残れる気がします。

【50】

 

□「ヒンターラント」

 第一次世界大戦終結後、長く苦しいロシアでの捕虜収容所生活から開放され、ようやく故郷にたどり着いた元刑事ペーターとその戦友たち。しかし帰国した彼らを待ち受けていたのは変わり果てた祖国だった。敗戦国となり皇帝は国外逃亡。愛する国と家族を守るために戦った彼ら兵士たちに対するねぎらいの言葉すらない。そして帰宅した家に愛する家族の姿はなく、行き場をなくすペーター。そんな最中、河原で奇妙な遺体が発見される。被害者はペーターのかつての戦友だった。遺体には相手に苦痛を与えることを目的に仕掛けられた拷問の跡、そしてその痕跡は、犯人もペーターと同じ帰還兵であろうことを告げていた。ペーターは自身の心の闇と向き合うために、自らの手で真相を暴くべくボロボロの心身に鞭打って動き始めるのだが…(公式HPより)

 というストーリー以上に強烈な印象を残す怪作ミステリー。

というのもこの映画とにかくビジュアルが強烈。全編グリーンバックで撮影された映像は主人公の目に映る狂った世界をそのまま映像化。すべてが歪み、誇張され、正確さが全くないその悪夢世界は監督いうところのまんま「カリガリ博士」VFX版。その世界観が非常に魅力的かつ蠱惑的。その世界に浸るだけでこの映画を観る価値大。悪夢のような戦争と捕虜生活を経験した帰還兵の体感がそのまま映像化されているそのコンセプトがとにかく面白いし、かっこいい(語彙力…)。非常に暗く、陰鬱なストーリーと相まって、ある種独特のダークワールドが形成されており、サイコスリラーとしても、歴史の暗黒時代を描いた社会派ドラマとしても、また帰還兵の苦悩を描いた反戦ドラマとしても見ごたえのある1本となっております。

 とはいえその手法に頼りすぎなのか物語には結構なアラがあるし、必要以上なグロ描写(個人的には好みですが)や、延々と鬱々とした映像しかないその世界はやっぱり好みの問題も出てくるし、観る人を選ぶ映画ではありますが、それでもここまで帰還兵の心情を視覚的にした映画はそうあるものではないので、そういう意味でも一見の価値はある映画です。

【75】

 

□「ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!」

 「スパイダーマン:スパイダーバース」の影響力のすごさを改めて思い知った1本。リアル思考では無く、あくまで物語を語る表現の手段としてCGアニメ。その反対側の極北にある「君たちはどう生きるか」も含め、その可能性がさらに大きく広がった事はほんとこれからの楽しみが増えたなあと思います。

 というわけでこの映画。グラフィックノベルの絵柄(っていうのかしら)をそのままアニメ化。違和感なくクネクネ動きまくるアメコミそのまんまの映像はなんというかその違和感無しがかえって違和感。何にってるかわかりませんが元来の”アニメ”を見てきたおっさんからすれば、もう違うジャンルの映像表現なんだなあと感じ入ってしまいました。モーション・キャプチャーでリアルに動くカメってもうギャグでしかないという気もしますが。とにかくそんな世界観を完璧に表現した映像はもうそれだけで一見の価値はあります。

 内容的にはなんというかティーンというよりはクソガキレベル。ウ○コ、チ○コでひたすら笑ってるようなそんな下品でバカな幼稚さ全開。スタッフの中心であろうセス・ローゲンの個性爆発な感じなので、個人的にはあまり好みではないのですが、これはこれでこの手の映画にはぴったり。さすがに手練れな感じがします。計算されたやりすぎというか、ティーン(なぜに大人が考える子供って実年齢よりも幼くなるのでしょうか。入れ替わりものを観た時いつも感じてしまいます)悪ふざけそのままな(ある意味原作へのリスペクトに満ちた)世界が妙に眩しく感じてしまうのは自分が歳をとった証拠なのかもで少し悲しくなりました。

 ルッキズムへの反証やLGBTなどの社会問題もチラッと覗かせつつ(あくまで高校生の自由研究レベルですが)、大いなるおふざけで全編を彩るその悪ふざけかんがまさにティーンエイジといったところ。少々精神年齢が低い気もしますが、まあそれも含めての「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」なのでしょう。

【70】

 

■「キック・オーバー」

 メルギブさんはやっぱりこういうちょい悪ふざけオヤジ(ちょいじゃないですが)が似合います。いやもちろん重厚ヒゲなメルギブさんもいいのですが。

【65】

 

□「ジョン・ウィック:コンセクエンス」

 待ちに待ったジョン・ウィックさんの大虐殺逃亡劇第4弾にして(多分)完結編。犬と車への復讐から始まったジョンさんの世界をまたにかけた過剰防衛すぎる大冒険もついにクライマックスを迎えます。

 この映画に関してはストーリー云々は二の次三の次で、とにかく知恵と体力と筋肉と痛覚オフを最速フル回転した超絶アクションが全て。今回はもう映画史100年の全てのアクションシーンを網羅、超越した世にも恐ろしい暴力の博覧会となっております。とにかく新しい事、凄い事を見せてやろうという狂気のチャレンジ精神と、偉大なる先達たちへの多大なリスペクトに満ち溢れた169分。一瞬のダレもなくハイスピードで進むアクションの羅列はもはや芸術の域に達しておりました。というか正直これがこの手のバイオレンスアクション映画の最高峰であり、エポックメイキングとなってしまった事により、以降アクションのハードルが自分の中で相当高くなってしまったのがどうにも恐ろしかったりもしました。

 長い手足を不器用そうに振り回す色男キアヌの型崩れリアルファイトと、きっちり美しすぎる至高の殺陣を披露する真田さん、荒削りだけど若い身体をフルに使って未来を感じさせるリナ・サワヤマさん、歴史と伝統をその仕草と形で見せつけるドニーさん(まさかの準主役でびっくり)、そしてザ・西洋な肉体派アドキンズのそれぞれの個性を、それを数多の職人スタントマンさんたちがプライド(と命)を賭けて作り込みまくり、そしてそんなアクションに精通しまくりで、見せ方を心得まくっている監督以下スタッフの職人芸でまとめあげた(凱旋門のシーンは自分史上過去最高のアクションシーンかもです)、そんな全てが融合し、新たなる高みへと昇華したそんな傑作でありました。

 よくよく考えるとハテナだらけだけどやたらスケールが大きい世界観(コンチネンタル絡みの格調の高さや、裏世界のネットワーク的なディティールがいちいち大袈裟なのがまた最高)を構築する、ノリノリの役者陣(相変わらずカッコよすぎなイアン・マクシェーンと小物っぷりが絶妙なビル・スカルスガルドが最高でした)の熱演も妙に説得力とリアリティをもたらしているのがまた絶妙。ジョン・ウィックさんのチタン合金の骨格とセラミックの皮膚に辛うじてリアリティを持たせるいい仕事をしています。

 どんどんミナミの帝王化してるキアヌさんを含め(っていうか彼にここまで恩義を感じる要素が一切見えないのはある意味すごい)ここまでやってしまうとかなりハードルが高いので物語的にもちょうどいい結末かなとは思いますが、バスター・キートンの後継(の一人)としてまだまだ死なない男の活躍を見て見たい気もします。

【80】

 

■「ダブル・エネミー ロンドン崩壊の日」

 スケールの大きすぎる物語に予算と力量がついていけてない見本のような映画。切ない。

【50】

 

■「バトル・オブ・アース 闇の種族と光の戦士」

 同上(苦笑)。

【50】

 

■「援助交際撲滅運動 地獄変」

 エンケンさん楽しそうで何より。

【55】

 

■「援助交際撲滅運動 STOP THE BITCH CAMPAIGN」

 エンケンさん本当に楽しそうで何より。

【55】

 

□「バーナデット ママは行方不明」

 ケイト・ブランシェット様が「TAR」の前に主演したちょっと奇妙なホームドラマ。最近あまり追えていなかったお気に入り監督リチャード・リンクレイターの作品という事で鑑賞。さすがの職人監督というオーソドックスにまとめあげられた良い映画でした。

 シアトルに暮らす専業主婦のバーナデットは、一流企業に勤める夫や親友のような関係の愛娘に囲まれ、幸せな毎日を送っているかにみえた。しかし彼女は極度の人間嫌いで、隣人やママ友たちと上手くつきあうことができない。かつて天才建築家として活躍しながらも夢を諦めた過去を持つ彼女は、現在の退屈な日々に次第に息苦しさを募らせていく。やがてある事件をきっかけについに限界を感じたバーナデットは、家族の前からこつ然と姿を消し、南極へと向かう…(映画.comより)

 とにかくケイト様演じるバーナデットのキャラが強烈。極度の人嫌いでコミュ障。のくせにプライドが高く才能豊かでお金持ち。そんな癖ありまくりのキャラをケイト様が抜群の演技力で演じ切ってしまうものだからもう説得力が半端無し。なので実際かなり不快なキャラとなってしまっております。だからこそ後半からの怒涛の展開が結構はちゃめちゃなのにそれなりにリアルティがあって面白くなっているのも事実で、その辺りのさじ加減はさすがのリンクレイターの腕前。

 こんなめんどくさい人に付き合う家族の方々や周りの人々の苦労や(主に家族の)愛情については結構おざなりというか適当な感じも否めませんが、ビリー・クラダップ(この方の誠実そうなお顔は本当貴重)をはじめとする芸達者さんたちの力量で観られるレベルになっております。

 ケイト様はこのあとの「TAR」でこの手のキャラの集大成を演じられるわけですが、こんな面倒な日人々をチャーミングかつ魅力的に演じられるケイト様の才能に改めて敬服させられる1本です。

 しかしリンクレイター、ほんと芸達者。器用貧乏にならないのが素晴らしいです。

【75】

 

□「PIGGY ピギー」

非常に胸糞の悪い、それでいて後味すっきりという、なんとも言いようのない、だからこそ優れたホラー映画。

 肥満体型の肉屋の娘を主人公に、自分を虐める3人の女性グループ(そのうち1人は幼なじみ)の誘拐事件を目撃、助けを求められても無視してしまう。罪悪感と恐怖に苛まれながらも、自分に好意を持ってくれているような誘拐犯に対して彼女が取る行動が状況をますます悪くしていく…

(ここからネタバレ)

 というお話的には本当に救いのないイヤミスな感じで進むのですが(実際だれも幸せにはならない)、クライマックスでの主人公の行動に一筋の光明を見出せるところがこの映画の優しさか。肥満体である事にものすごいコンプレックスを持ち、それなのにどうしようもない自分への自己嫌悪と、家族(特に強圧的な母親)への嫌悪感と恐怖心、そんな抑圧されまくった世界の中でたった1人自分を愛してくれている残酷な殺人鬼。そんな現代の寓話をサイコサスペンスな悪夢世界できっちり描ききったのは好印象。スペインの風光明美だけれどなんとも空虚で汚くてジトッとした雰囲気もまたこの世界観にぴったりで、やっぱりこの手のホラーには空気感が大事だなと改めて感じました。

 主人公をまさに体当たりで演じきったラウラ・ガラン嬢の熱演ももとより、殺人鬼や家族、3人のいじめっこなどみんな絶妙なキャスティングで、特に母親の鬼婆ぶりがたまらなく強烈でした。

 ラストの展開をどう見るかでだいぶ印象が違うのでしょうが、個人的にはこれで正解かと。原作版「ハンニバル」じゃあるまいし、童話に逃げず現実と向き合う主人公の成長に感想したいと思う事は罪ではないはずです。

 途中の携帯電話の使い方とか、いろいろ細部でハテナと思うところも多々あり、決して完成度が高い映画ではないのですが、主人公の成長ものとして、また結構グロなスプラッタとしても安心して観れる佳作です。

【75】

 

【おすすめポッドキャストのご紹介】

なんと10年めを迎えた台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする映画やその他社会のもろもろについて、一癖も二癖もあるおっさん四人が縦横無尽に語りまくる老舗ポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。激動の時代を生き抜いてきたワタクシの友人四人の生き様をぜひ!