2020年11月鑑賞映画ひとことレビュー | (ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

(ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

月一で初鑑賞映画の感想を書いてます。
あくまで個人の感想です。立派な考察・評論は出来ませんのでご容赦下さい。

2020年11月鑑賞映画ひとことレビュー

 

11月の初見鑑賞映画は34本。

VODで微妙なB級映画や見逃していた(見れなかった)過去のB級ばかり見ていたせいか妙に本数が多かったのが11月。ネットでアナログ映画…最高ですな。

では。今回も劇場鑑賞を中心に。

 

「ザ・ハント」

やっぱり好物マンハントもの。悪趣味だなんだ言われようがやっぱり人体破壊と無慈悲な暴力が織りなす、素朴なスリルとサスペンスは映画ならではの醍醐味。今回も期待に違わずのスプラッタぶりは十分に堪能いたしました。とはいえ今回は昨今のアメリカの社会情勢を反映させまくったその内容をブラックと捉えるか真面目と捉えるかでこの映画に対する印象はかなり違かなと。いやかなりの浅はかさと知能指数低そうな過激な暴力描写はコメディ以外の何者でもないかとは思うけれど、かのトランプさんが怒り心頭っていうのは制作者サイド的にはしてやったりというか拍手喝采なんだろうなあと微笑ましく思ったりもしました。選ばれた狩られる者と狩る者の設定が結構な新機軸といえば言えるけれどその軽薄さとあからさまさが実は結構知的な思考から来るブラックコメディとして捉えてあげるのはお人好しすぎかとも思えるけれど、そういう裏読みまでしてしまいそうになるフットワークの軽さとちょっと捻ったストーリーの底意地の悪さがこの映画のキモ。妙に気合の入ったヒラリー・スワンクや正体不明なお色気ムンムンベティ姐さんのキャットファイトに苦笑しつつ、そんな黒い笑いとアメリカ人のおバカさを堪能するのがこの映画の正しい鑑賞方法かと思われます。

【70】

 

「スパイの妻」

祝・ベネチア国際映画祭監督賞受賞。世界のクロサワの金字塔!なんて聞くとどうにも小難しくて芸術的な雰囲気がしたりしていまいますが、いやいやどうして一流のサスペンス娯楽映画として大満足の1本でした。1940年、神戸で貿易会社を経営する優作(高橋一生)は満州に渡り、偶然恐ろしい国家機密を知る。正義のために一連の出来事を明るみに出そうとした彼は、反逆者とみなされてしまう。優作の妻の聡子(蒼井優)は反逆者と疑いの目で見られる夫を信じ、スパイの妻とそしりを受けても、愛する夫と手に手を取って生きていこうと決意する…(Yahoo映画より)。元々NHK8K用のドラマを劇場用にアップデートしたもので、公共放送のコネを駆使して作り上げた美術や映像は物語世界に浸かるには十二分な完成度。自由への憧憬と国家への反抗を品格を持って演じた高橋一生、この時代の女性像を根底に置きつつ世間知らずのお嬢様を独特の個性で演じきった蒼井優。横恋慕を隠しつつパラサイトばりの無感情・無表情で時代を象徴する軍人をやりきった東出昌大の存在感。弟子のシナリオの映画化という事もあったのか、今回の黒沢清は適度な力の抜き加減の按配がいつものアクの強さがほんのり緩和され、クラシカルかつリリカルな演出を楽しんでいる風な様子も窺えつつ、硬派なストーリーはしっかりととツボを押さえる、絶妙なバランスが秀逸。そんなクロサワ演出にそれぞれが見事に答え、懐かしくも品格に溢れた魅惑の世界を構築。不穏な空気が漂いまくる舞台の中、古き良き外国映画の伝統と格式を心ゆくまで堪能できる至極のラブストーリーです…と思って観ていたらラストにまさかまさかのどんでん返しが。蒼井優一世一代のメイ台詞とばたんきゅうーが炸裂するラストは、個人的にはエンタテインメントの真骨頂として後々まで語られるレベルの衝撃でした。快作!!

【75】

 

「スリー・フロム・ヘル」

地獄から来た悪魔のファミリー大活躍の「マーダー・ライド・ショー」シリーズ第3弾。前作で逮捕されたファイアフライ一家の脱獄からメキシコへの逃避行を描く。まあやってることは前2作とほぼ変わりなく、変態極悪家族(今回は腹違いの兄弟が加わりましたが)が本能と欲望のまま好き勝手する様を延々描いているだけっていやあだけなので、吹き飛ぶ手足!飛び散る脳漿!ぶち撒かれる内臓!エトセトラエトセトラ…そんなR-18な残酷スプラッタと、良識を一切排除したある意味清清しい彼らの行動に眉をひそめる良識ある方々には、端から相手にされない素晴らしい映画ではあります。このシリーズに関しては監督ロブ・ゾンビさんの憧れというか夢そのものなので、それにケチをつけるのは野暮ってもの。本能と欲望のまま行動し続ける彼らの生き様をある種ヒーローとして描いている時点である意味この映画はロックそのもの。反体制、反権力をここまでストレートにかつどぎつく描けるのはひとえに監督の努力と芯の強さの賜物。本当にリスペクトに値する漢です。とはいえ正直3本目となると飽きてきて、インパクトも薄らいできたのも事実。メインキャラが年齢を重ねてつらそうなのも見ていて切ないし、全体に工夫が無くなってきたのもちょっと厳しいか。まだまだ続きそうな雰囲気もするし、ライフワークと化しているんだろうけれど、キャプテン・スポルディングの死去もあった事だし、大幅なテコ入れは必須かなと感じました。まあ余計なお世話かもですが笑

【65】

 

「海底47m 古代マヤの死の迷宮」

真面目なサメ映画として結構な面白さだった「海底47m」のシリーズ第2弾。1作目とは直接な関係は無いのでこれ単独でも楽しめます。メキシコを舞台にマヤ文明の海底遺跡ダイビングに参加した若者たちを襲う恐怖を描いているのですが、今回はサメのみにあらず。落石、異常海流など自然界の脅威もプラスされ複合的な恐怖体験を演出しています。舞台としてもマヤの海底遺跡はなかなか魅力的でその神秘的な雰囲気はもとより、迷路状の閉鎖空間としての機能も充実。結構なアイデアだと関心しました。そして真打のサメもパワーアップ。大きさや凶暴さも桁違いになり、盲目(だったっけか?)のボスザメの迫力はモンスターとしてのキャラ立ちもばっちりで非常にいい感じなんですが…これがいかんせん全く面白くない。とにかく今何が起こっているのか、何が何やらかさっぱりわからないという、面白い・面白くない以前の状態が延々と続くという、映画以前の基本が全く分らないというすさまじい映画でした。動きが速かったり、編集がコマギレすぎたりとかならいいんです、それは演出っていう意味でまだ理解できます。だけどこの映画、暗すぎて何が写っているのかさっぱりわからなかったり、役者の動きが全く追えてなかったり(誰が今写っているのかすら不明な事が多い)、舞台設定というか、現状の位置関係が全く不明だったり、とにかくそういう当たり前が分らないことだらけ。なので誰がどうなったとか、これがどうなったとか殆ど理解できないというテネット並みに難解(笑)な映画でした。いやもちろん自分の理解力がおぼつかない面も多々あるとは思うけれど、これに関してはそれ以前。プロの仕事とは到底思えないその完成度はもはやカルトになるレベルの酷さでした。前作は結構しっかりしていたのにこの体たらく。スタローンの娘さんやらジェイミー・フォックスの娘さんやら面白そうなキャストも一杯いたのにどうしてこうなっちゃったのか、ほんともったいない映画です。

【60】

 

「ストックホルム・ケース」

個人的に「イーサン・ホーク主演B級映画に外れなし」っていうのがありまして、ことB級映画(アクション・SF・ホラーのみ)に関してのイーサン・ホークの作品選びの目利きは素晴らしいものがあると、信じている俳優さんの一人だったりします(ちなみに一番信用しているのはB級映画主演時のジェラルド・バトラー。ただし「ジオ・ストーム」は除く)。で、アクションだったり、ホラーだったりしないけれどこかしらB級臭漂うこの映画、ひそかな期待に胸膨らませていたわけですが、期待を裏切らない良作でした。かの有名なストックホルム症候群の元になった事件を映画化なのですが、とにかくイーサン・ホークの魅力爆発。そりゃあ好きになっても仕方ないなあって感じなあからさまにいい奴なので、それはそれであざとい気もするけれど、そんな愛すべき小悪党に説得力を持たせるストーリー、演出がストレートでブレがないからある意味爽快感。長髪なびかせるマーク・ストロング(笑)の悪党っぷりや、恐怖から同情、果ては愛情にまで突き抜けてしまうこじらせ女子を嬉々として演じたノオミ・パラスなど、それぞれが適度に力の抜けた好演を披露。実話ベースの割には全体に緩い感じで進むのでリアリティとしては?なところもあるけれど、それを含めて気合を入れすぎないでのんびりと観れる掘り出しB級映画の見本のような佳作です。

【75】

 

「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」

果てしない手間隙と時間をかけて超絶技術の粋を尽くす至極のストップモーションアニメのスタジオライカの最新作。今回はヴォクトリア朝時代のロンドンを舞台に、孤独で風変わりな冒険家ヒュー・ジャックマンと伝説のビックフット:Mr.リンクの自分探しの大冒険を描いたピクサーばりの文科相特選映画となっております。とにかくそのストップモーションの凄さときたら!どう見てもCGとしか見えない動きをどう見ても人形にしか見えないキャラ達が実在感を持って生き生きと演じているその細やかさ、気の使い方。もうそれだけで1900円の価値はあります。前作のクボもそうだったけれど、ストップモーション独特の動きをしっかりと見せつつここまで滑らかに違和感無く観れるのは本当に素晴らしい技術。1コマ1コマに気を抜かず、きっちり作り上げるその職人達の心意気にほんと頭が下がる思いです。まあストーリーがどうにも道徳的すぎるのがオッサンにはちょっと小っ恥ずかしいし、主人公のヒュー・ジャックマン(役名は違うけれどそうにしか見えないので笑)の癖の強さやビックフットさんの朗らかなおバカさが鼻についたりはするんだけれど、それを差し置いてもとにかく映像のお見事さに感動。最近のピクサー化に少し物足りなさを感じたりするけれど、とにかくこのご時世にストップモーションアニメを作り続ける意義を感じ、継続してるライカの心意気をこれからも応援していきたいと思わせる出来でした。しかしこの映画、初日まさかのアローン鑑賞。コロナ禍とはいえ映画館に1人はあまりに切なかったです…

【70】

 

「博士と狂人」

世界最大の辞典”オックスフォード英語大辞典”誕生を巡る実話をショーン・ペン、メル・ギブソンの問題児2人で映画化した至極の人間ドラマ。貧しい生い立ちで学士号を持たない異端のイギリス人学者マレー(メル・ギブソン)と、精神を病んだアメリカ人の元軍医マイナー(ショーン・ペン)は、世界最大の英語辞典の編さんを通じて盟友となっていく。しかし、英国の威信をかけたプロジェクトに犯罪者が協力していることが判明すると、編さん事業は行き詰まってしまう。やがて、時の内務大臣ウィンストン・チャーチルやイギリス王室をも巻き込む事態へと発展していく…(Yahoo映画より)アクションスターのイメージが強いメル・ギブソンが実は繊細なお芝居のできる名優だった事を再確認。精神病の犯罪者を憑依演技で演じきったショーン・ペンは相変わらずの激演でそれはそれで物凄いのだけれど、メルの物静かで家族愛に溢れた善人の中に潜むあくなき情熱と狂気を感じさせる演技が素晴らしい。他にもマイナーを裏から静かに支え続けた看守、マイナーの事件の被害者の妻として徐々に赦しを愛を与えていく女性など脇役もそれぞれを熱演。事実は小説よりも奇なりな変人達の変態事業のストーリーをそれぞれが熱意と愛を持って真面目に真摯に描いているのが好感度大。ラストに向かってかなり駆け足なのがちょっともったいないけれど、博士号を持たない異端の学者と精神病の言語の天才の狂気を共にした友情は素直に感動できる物語でした。ほんとメル・ギブソンいい役者です…

【75】

 

「ホワイト・ストーム」

アンディ・ラウさん・ルイス・クーさん主演、安心・安定の香港ブランド大活劇。過去に麻薬に手を出した義兄弟に制裁を加えた元香港マフィアで現実業家兼麻薬撲滅運動家のラウさんと、香港麻薬四天王にまで登りつめた義兄弟のクーさんの血で血を争う闘争を描いたノワールタッチのストーリーの中、絶対4〜5人死んでるとしか思えないアクションシーンが炸裂しまくるまさにザ・香港映画。全体に詰め込みすぎでとっ散らかってるのもご愛敬。ラウさんに降りかかる不幸やクーさんの狂犬ぶりもとにかくやりすぎ盛り込みすぎでもう胸焼けを起こすレベルだし、そのせいか強弱がない分逆に盛り上がりにかけたりもするのだけれど、それはもう中華を毎日食べたらそうなるよねなレベルの好みの問題。漢気とアクションの満漢全席のラストを飾る怒涛の地下鉄カーチェイスは映画史に残るアクションシーン。ほんと絶対人死んでると思います。スタッフ・キャストの生死のギリギリ、極限の生き様がストーリーに宿る、香港映画の魅力を体現している快作です。

【75】

 

「バクラウ 地図から消された村」

カンヌ映画祭審査員賞を受賞した異色サスペンスブラジル映画。テレサは村の長老カルメリータが亡くなったことを受けて、故郷の村バクラウに戻ってくる。しかしその日以降、インターネットの地図上から村が消え、謎の飛行物体が上空に出現し、村の命ともいえる給水車のタンクが銃撃を受けるなど、村では異変が続発。やがて村外れで村人が殺害され、それまでほとんど見かけなかったよそ者の来訪によって、村は血なまぐさい暴力の渦に巻き込まれていく…(Yahoo映画より)。ホラー、SF、サスペンス、バイオレンス、アクション、ミステリーなどなどが入り組んだなんともジャンル分けできないような異様なストーリーが展開されていくのだけれど、貧困や格差といった現在ブラジルが抱える社会問題を根底なのは確か。格差や偏見が無く、老若男女、どんな職業、性癖の人々も平等に扱われるある意味桃源郷のような村。前半はそんな村が地図から消され、村人が斬殺されUFOが飛び回る異様な展開。そんなSFチックな前半から一転、後半は怒涛のマンハントスプラッタホラーへ。その後半がとにかく異常で、人体破壊はもちろん、生首飛び交う異様な儀式やら生き埋めの拷問やらとにかく異様なパワーが溢れまくる開放感。南米独特のアシッドかつ乾いた酩酊感に支配されたその雰囲気は「悪魔のいけにえ」とはまた別のカラッとした狂気が満載。アメリカ人(であろう)傭兵部隊が土着人に次々に虐殺されていく様は、過去の食人族のようなビザールな魅力もあり、それを計算で表現している監督の演出力はただものではない事を判らせてくれます。ジャンル分け不可能な異様な魅力に満ち溢れたカルト映画として後世語られるであろう怪作です…とは思いつつ、エンドクレジットでカーペンターのオリジナルアルバムの1曲が嬉々として流れた時、実はただ単に悪ノリB級映画が作りたかっただけなんではとも思いましたが笑

【80】

 

その他の鑑賞映画

「アイネクライネナハトムジーク」

 相変わらずの伊坂節。三浦春馬…【70】

「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」

 おっさん達がカッコよすぎ。楽しい【75】

「地獄のデビルトラック」

 遥昔に観て覚えていなかったので再見。これはこれでどしたものか笑【55】

「猛獣大脱走」本物の迫力【55】

「ウィッカーマン(2006)」ハリウッド映画の見本【55】

「悪魔のしたたり ブラッドサッキング・クリークス」

 トロマ製悪趣味映画。それ以上でもそれ以下でも無し【50】

「2000人の狂人」

 きちんと観たのは初めてだったので。楽しいけれどそうでもなかった【65】

「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」

 日本風悪趣味満載で楽しい。川谷拓三さすがの名演【50】

「悪魔の存在を証明した男」思わせぶりすぎ【50】

「アウトランダー」もったいない【60】

「ライブリポート」

 良作。アーロン・エッカートはもっと評価されていいと思うのですが。【75】

「S.W.A.T(2019)」

 悪くはないけれど、ハリウッドまんまなのはどうかと…【60】

「シェイクスピアの庭」ケネス・ブラナー渾身の愛と尊敬に溢れた快作。【75】

「機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER」

 アッガイがかっこいいです。【65】

「ホモ・サピエンスの涙」

 やりたい事はわかるし、素晴らしいのはわかるけれど、これを面白いとか素晴らしいとかいうのは物語への冒涜だと思うので。【50】

「TRANSPORT トランスポート」自主映画。【50】

「スナッチャーズ・フィーバー 喰われた街」コケおどし演出は上手かった。【60】

「丑三の村」

 きちんと観たのは初めてだったので。古尾谷雅人素晴らしすぎ。【65】

「処刑男爵」雰囲気は素晴らしい。【60】

「アンチグラビティ」

 ロシア製ハリウッド映画では1番の出来。素直に面白い。【65】

「ドクター・ドリトル(2020)」

 良くも悪くもハリウッド映画。【60】

「バード・インフェルノ 死鳥菌」正直内容覚えてません笑【50】

「新少林寺/SHAOLIN」アンディさんとカンフーの一挙両得。【70】

「Another アナザー(2012)」綾辻行人は好きなのですが…【50】

「八十万年後の世界へ タイムマシン」古典ならではの面白さ。【65】

 

ここでお得なポッドキャストをご紹介!台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする映画やその他社会のもろもろについて私の友人であるアラフィフ男どもが熱く激しく語りまくるポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく、時に毒々しく、だけど基本は面白おかしく語りつくしておりますので、是非聞いてやってくださいませ。

よろしくお願いします!