2020年10月鑑賞映画ひとことレビュー | (ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

(ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

月一で初鑑賞映画の感想を書いてます。
あくまで個人の感想です。立派な考察・評論は出来ませんのでご容赦下さい。

2020年10月鑑賞映画ひとことレビュー

 

10月の鑑賞本数は27本。自分好みのハリウッド系大作が全滅の中、どうにも本数が伸び悩み。いつになったらこの状況が改善できるのやら…

では。今回も劇場鑑賞を中心に。

 

「フェアウェル」

昨年賞レースを席巻した、暖かくもほろ苦くも中々に奥の深いヒューマンドラマ。末期がんを患う祖母のため、祖国を離れて海外で暮らしていた親戚一同が、従兄弟の結婚式を理由に中国に戻ってくる。ニューヨークで育ったビリー(オークワフィナ)は、祖母が残りの人生を悔いなく過ごせるように病状を本人に明かした方がいいと主張するが、両親を含めたほかの親族たちは、中国では助からない病気は本人に告げない伝統があると反対する…(Yahoo映画より)。あらすじだけ見るとお涙頂戴の感動ものに思えるけれどさにあらず。これは居場所を探す1人の女性の成長物語。とにかく従兄弟の結婚式という設定がまず素晴らしい。それぞれ世界に散らばっている家族が集結する場所として中国の伝統的儀式を選ぶことにより、グローバルな世界での文化の違いが押し付けがましくなくごく自然に描かれるため、嫌悪感無く感じる事が出来る。それに加えて大好きな祖母に余命宣告をしない中国の文化に納得できない主人公の葛藤が、アイデンティティの揺らぎとして感情移入できるようになっているその構成の上手さ。猫背で自信なさげで自分勝手な主人公が、家族のそれぞれの様々な葛藤を理解し、成長していくにつれ背筋が伸びていく様子が妙に気持ちいいのはオークワフィナの等身大の女性像の演技がお見事だから。決していい人じゃあない祖母のキャラ設定(その嫌味っぷりが日本人的にもものすごくリアルなのがなんともうまい)や、中国から離れて異国で生活している家族達の葛藤などが、結婚式と死、伝統と改革などの対比の中で主人公の成長へと繋がるピースとして上手く機能しているその映画としての完成度の高さは本当にお見事。まあ日本人の扱いがどうにも…なところはあるけれど笑、それはそれ、中国マネーやらアジア云なんてくだらない事は置いておいて(個人的には絶対必須なオチも含め)非常に良くできた映画です。

【75】

 

「異端の鳥」

「炎628」に続く、戦争残酷地獄絵巻の傑作。第二次大戦中の東欧のどこかで、ホロコーストから疎開した少年の逃避行を描いた児童文学の映画化…なんだけれど、少年時代に読んだらトラウマ必至なこのストーリーが児童文学の名作として読み継がれているところに東欧諸国の闇が見えるような気がします。それはともかく、旅の途中で少年が出会う人々の全てが人間の醜い部分というか悪夢のような状況をよくもまあここまで徹底的に作り込んだモノだとまずはそこに震撼。それがまた超絶美しいモノクロ映像で描かれるものだから美醜の彼岸がわからなくなるような錯覚さえもしてしまう。どう考えても被害者であるはずの少年が人間の悪意に押しつぶされ、どんどん人間性を失っていく様は胸が痛くなるほどリアル。主人公の少年が物語が進むに従ってどんどん痩せ細り憔悴していき、そして心が死んでいく様子は戦争の悲惨さを否が応でも感じてしまうし、全く遠慮のない人間達の悪意と本能のままの姿や残酷さの描写はトラウマ級の凄まじさ。ひ弱であっても純真無垢に近かった少年が地獄の逃避行の中でどんどん心を病んでいく様子をここまでストレートの描く事には相当の覚悟が必要だったと思うのだけれど、それを真摯に正面から向き合って描き切った製作陣の信念に素直に拍手を送りたいと思います。欲を言えば美しすぎるモノクロ映像が果たしてこのストーリーにあっていたかというところの疑問(カラーでリアルに描いた方がテーマとして現実世界との共通項を見いだせたような気もするので)はあるけれど、それではあまりに厳しすぎるか。そんな優しさからトラウマ級のカルト映画には今一歩なところはあるけれど、真摯でストレートなメッセージが強烈に響く名作です。

【80】

 

「ウィッカーマン Final Cut」

ずっと観たかった至極のカルト映画。ようやく映画館で鑑賞出来てほんと幸せでした。で、その感想はといえば、なるほどカルト。とはいえそれはキリスト圏内での他宗教の扱いというか、その思想によってのカルトという意味合いが強いかと。他の宗教に対して寛容さが微塵もないキリスト教に対してここまでアッケラカンと反旗を翻すのはなかなかに痛快。異様な島の排他的ホラーっていう括りではラブクラフト臭も結構濃厚。どちらかといえばその手触りが近いかと。いやもちろんケルト系云々のバックボーンがあるのだろうけれど、勉強不足でその辺りはわかりませんが、そんなこんなは置いておいて、尋常ではない異様な空気が充満する雰囲気、ミステリーとしてしっかり引っ張り続けるストーリー展開など、全体の構成も踏まえなかなかにお見事。観る前はこの手のカルトにありがちな大雑把な映画かと思っていたのですが、どうしてしっかりと練られ作られた映画だと感じました。主人公が一貫して理解を示そうとしない所や、島の人々のいっちゃってる目など、”異世界ホラー”の中に社会的な目線をいそれとなく紛れ込ませるホラーとしてのツボもきっちり抑えつつ、ラストのさもありなんな展開が作り手の信念を感じてまた良い感じ。知的な要素が色々隠れているのでそういう意味でも賛否両論ある映画かと思うけれど、純粋にホラーエンタメとして十分堪能できる映画でした。

【80】

 

「ストレイ・ドッグ(2018)」

うーん…確かにニコール・キッドマンの新境地という意味では張り切っているのはわかるし、映画としてこういうの目指しましたっていう意図は非常にわかるのですが、いかんせん演出というか映画作りが下手すぎ。確かに雰囲気はいい。ロサンゼルスの闇というか、街としての魅力は確かに感じるし、それをきっちり捉えたカメラもいい仕事してるのはわかるのですが、どうにもこうにもそれが見えにくいというか、それを観たいんじゃなんだよ的な絵が多すぎで肝心のストーリーが全然心に響かない。キッドマンの熱演はわかるけれど、特殊メイクのやりすぎか、必要以上に怪人化しているのはいかがなものかと。そのせいかどうにも感情移入出来ないし、あまりに身勝手なそのキャラは逆に嫌悪感を感じる程なのは映画として致命的なのではと。アクションも冴えがなくヌボっとした野暮ったい感じだし、思わせぶりなシーンやセリフが効果を発揮していないのもどうにも。総じて演出…この手の映画を撮るにはこの監督はちょっと力不足かなっていうのが正直な感想でした。マイケル・マン並みにスタイリッシュかつ的確な距離感が保てればこの手の映画は素晴らしいものになるのだけれど、この監督の距離感はあまりに近すぎだし、下手な策を講じてるところもどうにも嫌悪感。そういう意味でもどうにももったいない映画でした。

【65】

 

「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」

とりあえず立ち位置を説明しておきますと、映画鑑賞時はアニメ全話のみ視聴、コミックは未読。話題の映画をとりあえず映画を見る前にアニメ観とこうかなっていう感じで全話を一気見。あまりのクオリティの高さに絶句&悶絶。結構な興奮状態の中の映画鑑賞でした。いやー面白い。おっさん映画館で号泣でした。我に返るとそこまでか?という気もしないでもないし、実際、昨今の日本のアニメの排他的で独特な共通言語化した方向性からは逸脱出来ていないというかそのものっていうのもあったりして、そういう一ジャンルとしての日本製アニメへの抵抗感は否めないのだけれど、それでもこの映画が万人に素直に受け入れられている理由はもうストーリーの面白さと登場人物の真摯さに尽きるかと思います。実際キャラのビジュアルなんかはもろヲタクって感じもあったりするし、声優の演技も仰々しい(ダメだしではなく、それが声優っていう演技の本質だし存在意義だと思うのでそれはそれでOK)ので、結構慣れてるおっさんでさえもちょっと苦痛だったりもしますが、そんな抵抗感が馬鹿らしく思えるほど真っ直ぐなメッセージを奇をてらうこと無く堂々と語り上げるその真面目さがものすごく気持ち良い。実際、原作かテレビアニメを見ていない人には全く理解できないこの映画が興行収入歴代1位になろうかという大ヒットを記録しているのはなんだかんだでそういう真面目さが一番受け入れられているのではないか思ってしまいます。それはもうアニメの作り手の”原作の良さを最大限に引き出す”ため、変な色気を出さすにコミックのコマとコマの間を埋めつつ、アクションなどの動きのみを魅せる演出を徹底的に突き詰めている事からもわかるように、原作の”人間賛歌”(余談だけど、この作者本当にジョジョへのリスペクトが半端無いなあと。いやもちろん呼吸法とかそういうそのそうだけれど、それよりも荒木先生か一貫して描いているテーマへの共感がものすごく見えるのがジョジョラーとしてはうれしい限り)をほんとストレートにやってくれているからこそのこのヒットなのでしょう。まあひねくれ映画ヲタクとしては”これ以上面白い映画な無い!”的な意見を見てしまうといやいやいや…て言いたくなってしまうけれど、それでもこのご時勢の中、映画館が少しでも救われるなら声を大にして観にいくべきっていいたいです。

【80】

 

その他の鑑賞映画

「アドリフト 41日間の漂流」 リアルだけれどそれ以上でもそれ以下でも…【65】

「シークレット・ジョブ」 ちょっと荒唐無稽すぎ。でもナイスアイデア【60】

「エノーラ・ホームズの事件簿(NETFLIXオリジナル映画)」 とにかく主人公にイライラ…【60】

「凱里ブルース」 すごくよく出来た幻想譚だけれど、それが鼻につきすぎる【65】

「ファイナル・デッドブリッジ」 安定の死のピタゴラスイッチ。でももうおなか一杯…【60】

「ファイナル・デッドコースター」 同上。おかわりしたら胃がもたれました…【60】

「スマホを落としただけなのに」 学芸会…ってどうしてこんなのしか出来ないのでしょうか…【50】

「不能犯」 松坂桃李はこういう感じが絶対合ってる【65】

「劇場版 ファイナルファンタジーⅩⅣ 光のお父さん」 スクエニのCMだけどそれなりに楽しみました【65】

「山猫は眠らない3 決別の照準」 スナイパーってほんと映画的【60】

「劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明」 キャラと内容のミスマッチが異様過ぎていい感じ【75】

「前田建設ファンタジー営業部」 TVドラマとしては面白いです【65】

「劇場版 屍囚獄 起ノ篇」 いろんな意味で中途半端なのが切ない…【50】

「劇場版 屍囚獄 結ノ篇」 同上【50】

「MONSTERZ モンスターズ」 もったいない。藤原竜也ってもうキャラだな【50】

「南極料理人」 評価高いのも納得。生瀬さんがめちゃいい感じ【70】

「グレタ GRETA」 さすがのニール・ジョーダン。イザベル・ユベールのバレエステップがめちゃ怖い【70】

「記憶にございません!」 三谷幸喜って映画作るの下手だなあって改めて思いました【60】

「あやしい彼女」 日本版。多部ちゃんのアイドル映画としては最高【65】

「ライアーゲーム 再生」 学芸会PART2。もう役者たちに笑うしか…【50】

「トモダチゲーム 劇場版」 学芸会PART3…【60】

「トモダチゲーム 劇場版FINAL」 学芸会PART4。とにかく命が軽すぎて…【60】

 

ここでお得なポッドキャストをご紹介‼台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする映画やその他社会のもろもろについて私の友人であるアラフィフ男どもが熱く激しく語りまくるポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく、時に毒々しく、だけど基本は面白おかしく語りつくしておりますので、是非聞いてやってくださいませ。

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