ましろ部屋、ひととおり掃除と補修が終わりました。
ロッキングチェアを書斎からここに移してきたのは、ただの僕の願望です。
ましろを膝に乗せて読書するの、夢だったから(笑)。
大きな変更点はそれくらいかな。
他はほとんどそのままだよ。
最後は僕たちと同じ部屋に居ることを選んでくれたましろですが、それまでは大半の時間をこの窓辺で過ごしていました。
爽やかな朝の光が、新しい1日のはじまりに届く窓。
隣の公園のキラキラした緑。
通り向かいの奥さんが、ローズガーデンのお世話をしている。
外稽古している僕ともよく目が合ったね。
夕方、帰ってくる僕たちの姿が近付いてくるのを、ここでちょこんと座って待って。
夜には月を追いかけ、四季のうつろいを写す窓。
反対側に視線を移せば、丸ドアからはパタパタと行き交う僕たちが見える。
「どしたの、まっちゃん。なにニコニコしてるのー」
って訊くと、目を細めて、ますますニッコリして、
『アッアッ』
って返事してくれて。
ましろが嬉しそうだから、わざわざドアの前で鍛練したりもしたね。
(「四股テレビのお時間です」とか言って(T▽T))
ましろが居なくなってから、僕ははじめて朝から夜までをここで過ごしてみて、この部屋での時間の経過を体感しました。
ましろが見ていた風景が、僕の視界に重なって見える。
あの子が幸せだったかを、勝手に決めることはできない。
通りすがりの余計なお世話さん(笑)からは
「可愛い可愛いだけでなく、強引にでも人馴れ訓練をしたほうがいいですよ」
なんて言われたことも途中数度あったし、最期にも
もし無理やりにでも病院に連れていっていたら…
という『選ばなかったほうの選択肢』というものは、いつでも必ず存在する。
しかし、別れのときに『選ばなかったほうの選択肢』へのそういう後悔がうっすらとでもつきまとうのは、出会いの瞬間から織り込み済みだから。
だから、幸せだったかは勝手に決められないけれど、ましろの声にできるだけ耳を傾けながら、たくさん悩んで迷って考えてきたつもりで、それでも色々と至らなかったらごめんよ…って、ましろにもずっとリアルタイムで伝えてきた。
それに応えてくれた彼の返事が
ナワバリを出て、僕たちが見守る中で最期を迎える、
その信頼、だったんじゃないかな…って。
昔は自責することが愛の深さの証明だと思い込んでいたときもあったけど、それは違うよと、これまでにも旅立った我が子たちが僕に教えていってくれた。
この子たちの愛に、僕は絶対にかなわないのだ。
ルームナンバー046は、『ましろのおしろ』として永遠に保存されることになりました。
四畳半の、小さな白いお城。
想いがいっぱい詰まった 大切な部屋。