柿の挿し木、完全に根っこスイッチが入りました。
専門家たちによる【柿】の挿し木に関する研究は、ネット上で見つけられる論文を遡る限りでも、少なくとも70年ほど前から行われていたようです。
その結果、【柿】が植物学的に「挿し木での発根率ほぼ0%」とされた根拠は、主に挿し穂内部の化学物質と組織の構造にあるようでした。
(以下はド素人(私)の理解の範囲内でまとめてみたものですので、誤りや不足があるかもしれませんが、そこはご容赦ください)
・高濃度のタンニンによる酸化
柿の特徴である「タンニン」が挿し穂の切り口から分泌され、この酸化物質が根の素となる不定根を形成する細胞を傷つけたり、水分の吸い上げを阻害したりする。
多くの論文で、柿の挿し木成功率が低い最大の要因として、この「酸化抑制の難しさ」が挙げられていました。
・根原基へ分化する能力の欠如、または不活性
根を出すには茎の中にある細胞が「根の細胞」に作り変わる必要があるが、カキ属の植物はこの細胞の変化(分化)が他の樹種に比べて極めて起こりにくい。
柿の中でも「豆柿(リュウキュウマメ柿)」などは比較的発根しやすいことが知られているが、「食柿」の品種は発根に関与する植物ホルモン(オーキシン)への反応が非常に鈍い。
・栄養の消費スピード
柿の枝は、発根するまでに必要なエネルギー(貯蔵養分)を維持するのが難しい。
温度や湿度の管理が完璧であっても、枝の中のエネルギーが枯渇しやすい。
さて、上記を把握はしたものの、それを踏まえたところで何をどうしたらいいのかさっぱり見当もつかない上、そもそもそんなものは専門家が長年ありとあらゆる対策を試した上で「不可能」と言ってるんだから...
という、ここからが私の今回の「実験」になります。
以下に、私が実行した《柿の挿し木》の方法をまとめておきます。
先に言ってしまえば、以下の①②まではごく一般的な挿し木の方法。
③がおそらく核心で、柿の挿し穂本人から伝わってきた環境管理の要望を私が聴いて、都度実行したことです。
↑もし『柿 挿し木 成功』等の検索からお越しくださった方がいらっしゃったら、ワケが分からなくてごめんなさい。
これは元々は柿の挿し木を成功させるための実験ではなく、私の「動植物の生命に対するヘンテコ能力?」を可視化するための実験だったので…。
③の内容自体には具体的な再現性があるはずなので、よろしければそこだけ参考になさってください。
①挿し穂の基本情報
母木の品種
・品種不明の食柿
・地上2m位置の枝を採取
(=ひこばえではない)
採取時期:
・2024年10月(落葉期直前)
発根までの期間
・挿し木から約1年間
②挿し穂の処理と用土
処理(前処理):
・発根促進剤 不使用
・すべての葉を除去
・採穂後、6時間ほど吸水
用土:
・赤玉土と鹿沼土のミックス
容器:
・プラスチック製カップの底に穴を開けたもの
➂環境管理
灌水方法
・基本は朝、底から古い水がすべて流れ出るまでたっぷりと(雑菌除去目的)
・水温を地温に近づけて灌水(温度ショックの回避)
湿度管理
・乾燥時:プラカップで密閉(高湿度環境維持)
・湿度がある時:カップを外し通気(カビ/腐敗予防)
光環境:
・室内の日光の当たらない場所に設置(蒸散抑制)
地温管理:
・11月頃から小動物用パネルヒーターで地下部だけを加温(寒冷期の地温維持)
④
上記の➂の項目をさらに毎日「挿し穂本人に訊きながら、都度」調整する。
※根らしきものを目視した2025年11月からは、通常の苗木としての管理に切り替えました。
「地温の維持(パネルヒーター)」と「光の遮断」の組み合わせ、個人的にはこれが第一の勝因かと思います。
光を当てないことで芽の動き(蒸散)を極限まで抑えつつ、パネルヒーターで地温だけを上げることで、枝を眠らせたまま根の細胞分裂(カルス形成と発根)だけを促す。
この冬場の「上冷下温」の状態が、通常発根する前に枝のエネルギーが尽きるか、芽が先に動いて水分を使い果たして枯れる柿でも、1年という長期戦を可能にしたのではないでしょうか。
「水温を土温に近づける」という点も、柿本人が教えてくれました。
地温を人工的に高めてあるのに、冬場の水道水をそのまま注いでしまうと、挿し穂が「うっ」と言って動きを止めてしまうんですよ。
これは冷たい水が挿し穂の代謝を一時停止させてしまった状態かと思います。
温度ショックを避け、地下部の細胞分裂を止めなかったことも、柿の「動かない細胞」を動かした要因のひとつではないかと…。
これらのケアを毎日数回挿し穂の様子を見ることで判断し、環境を常に最適化することで、難発根の柿の挿し穂の内部条件が整うまでを生存させられたのではないかと考えています。
この【柿】だけは他の伐採樹の挿し木とは事情が違い、特に伐られる予定もない樹から、思い付きで私の実験のためにと一枝もらってきたもの…のはずでした。
ところがその翌休日明けに出勤してみると、なんの前触れもなくその柿の樹が切り倒され、切り株に穴を開けられ、根まで完全に枯らすための除草剤がすでに注がれていました。
この世に残っているのは、私の手の中にある、生命のほんのひとかけらだけ…。
どうしてあのとき、あの樹の横を通ったときに、枝をもらって実験してみようなんて考えたんだろう?
もともと計画していたことではなかった。
本当にその場の思い付きだった。
樹に呼び止められ、知らずと託されたのかな…と思います。
たぶんこの挿し木の奇跡の成功は、私の功績ではなく、親樹がずっと護ってくれていたのでしょう。
ありがとう。
繋がったよ。








