きものの日に経済産業省にて「第3回 和装振興協議会」が行なわれました。

 

過去の議事要旨、配布資料などは経済産業省のHPからみることができます。これらをみる限り、経済産業省も現在の着物業界の問題点を見据えており、なぜその先に進まないのか…?常々疑問に思っておりましたが、はじめて会議を傍聴し、少しだけその理由はわかったように思います。(第2回にもお声がけいただきましたがスケジュールがあわず、今回がはじめての傍聴でした)

 

委員の方々お一人お一人がおっしゃることは、一々御尤もですが、意見が噛み合っていません。問題提起はなされていますが、その先をどうするかという発展的な意見交換はできていないというのが率直な感想です。過去の配布資料をみると、討議はむしろ逆行しているのでは…ぐらいに思いました。

 

今回の協議会の主題は「和装業界の商慣行」について。

 

事業者間での委託販売、長期手形、歩引き。消費者視点からの、不透明な価格、不十分なスペック表示、不適切な販売手法。

 

着物業界だけでなく消費者にもヒヤリングを実施されただけあって、問題点の背景と要因、取組み事例があげられています。経済産業省の担当の方には、様々な着物イベントで度々お会いしましたし、意見も聞かれておりますので、実際に足を運ばれて情報を集められていたことを知っています。

下請代金支払遅延等防止法、商取引の改革に関する宣言、についても詳細にまとめられています。着物業界の問屋や小売店ならば知っていて当然のことであり、なぜ守られていないのか。守られていないから、つくり手は食べていけず後継者ができない、着物の価格は高騰してしまい消費者の手に届かないものとなっている、という状況なのではないか…と、今の状況から疑ってみておりますが、どうなのでしょう?

 

問題提起のその先に一歩進んだ提言がされたのは、委員であるアトキンソン氏による「素材のスペック表示」の実現について。これは私もきものエンドユーザーとして前々から望んでいることでした。

 

呉服屋さんに求めるもの にまとめております。

 

しかし「国産の絹でないものを着物というのか。中国産なら文字通り呉服であって着物ではない。これを世界遺産へ登録というのは詐欺に等しいのではないか。」という、極論というか、本物の着物は何か?という話題になり話がズレてしまいました。

 

日本の歴史では、国風文化の平安時代から鎖国下の江戸時代でも良質の絹は中国から輸入され、身分の高い人の装束につかわれています。戦国武将も舶来の生地を好んで装束としました。良いものは素材として取り入れる文化を持っています。委員である丸山伸彦先生が説明してくださればいいのに…と後ろの傍聴席から思っていたのですが…。このことについては、丸山先生とアトキンソン氏と会議後にチラッと話しましたが、アトキンソン氏の着物業界への不信感はとても大きいようです。国産生糸の生産量が1%に満たないのが現状ですし、それについての説明は不明瞭でした。会議に参加し問題提起をしても着物業界では何の改革もなされない状況ならば、そのお気持ちもよくわかります。

 

小西美術工藝社のデーヴィット•アトキンソン氏と丸山伸彦先生と日本の衣服装飾史研究家の丸山伸彦先生とカメラ

 

協議会では論じられませんでしたが、例えば、大日本蚕糸会の登録商標の「日本の絹」というシールとスタンプがあります。これは生糸は海外産であっても日本で織られたものなら「日本の絹」とされています。こういったものをどこからを国産と認識するかという売る側と消費者側の考え方もあると思います。

 

< 追記 >

2008年より、国産の繭から繰糸した生糸(紬糸も含む)を用いて日本で織られたものには「日本の絹 -純国産-」マークがつきます。「純国産絹マーク」の使用許諾申請が別途必要となっています。この辺りもまぎらわしい。。。

 

ちなみに私は、着物というのは衣服の形式のこと だと思っておりますので、国産であれ、海外産であれ、素材が何であれ、着物は着物だと思っています。

 

産地や素材に拘らずファッションとして楽しむこと、素材や技法を知った上でその良さや違いを楽しむこと、どちらもあります。私は用途によってどちらも楽しんでいるエンドユーザーです。

 

好ましい素材と技法が生みだした布は、たとえお高くても着てみたいと思います。そしてそれについて深く知りたい。だからこそ、素材と技法の「スペック表示が必要」と訴えている1人です。

 

お安いものは偽物? 久留米絣の例ですが、歴史、重要無形文化財指定条件、伝統的工芸品の指定条件、量産化されているもの、についてまとめています。

 

「中国産であろうが国産であろうが、消費者にとって関係ない」とおっしゃる方がいらっしゃいましたが、そんなことはありません。それなら「日本の絹」という製品などつくられないことでしょう。この情報化社会においては、正しい情報が求められるのです。国産よりも海外産のほうが品質が良い例もあります。情報を正確にし、着物業界への不信感を少しでも取り除くことが必要だと思います。

まして着物はお安いものではありません。素材や人の手間は価格に反映されますが、売っている人が売っているものが何であるのかを把握できていない状況、知識がない消費者を騙すような状況があるとしたら由々しき問題なのです。

 

上質のものをつくりづつけていくためには、人材を含めてそれを守らなければなりません。糸、染料、絣、染め、織りなどのスペック表示を明示することは、真っ当につくられているもの全てを守ることにつながるはずなのです。例えば友禅の技法を模造したインクジェットなどはハッキリとそれとわかるようにすべきです。消費者側も眼を養うことが求められますが、お金を払うのは消費者ですので、見る眼が無ければイタい目にあうのも消費者であり、不信感もつのれば買わなくなってしまうのは当たり前なのです。

 

これも協議会では話題になっていませんが、農林水産省のJAS規格のようなものが、経済産業省でつくられることを期待しています。ただそういった枠組みに縛られるのがいいのかどうかはよくわかりません。

 

例えば、白生地の伊と幸は、QRコードで、企画、蚕品種、繭、製糸、製織まで、工程に携わった職人のトレーサビリティ(流通経路)を明確にしています。伊と幸のHPから確認することが可能です。各社がこういった独自のシステムをつくり、きものエンドユーザー自身が調べていく、という時代になるかもしれません。

 

この辺りを論じていただきたかったのですが…。次回に期待しています。

 

烏滸がましいことを承知で申しあげれば、傍聴席からも発言できる機会が欲しかったです。

 

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私は心から着物が大好きですので、できることなら着物業界の方に嫌われたくはありません。ですが、着物関連を商売にしていないからこそ、みえることも、書くことができることもあります。
ただ、経済産業省へいきました〜というようなことにはしたくございませんので、思うところを書かせていただきました。

 

 

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