呉服屋さんに求めるものは人によって違います。

それは、センスであったり、専門的な知識であったり、仕立てや悉皆などのアフターケアであったり、サービスであったり、お人柄であったり…。同じ商品でも呉服屋さんによって価格が違うことは、私は<あり>だと思っています。

 

ですが消費者であるきものエンドユーザーの「お得なものを買いたい!」という気持ちを利用するような二重価格表示はやめていただきたい。これは「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」にあたいし罰則があります。着物業界は不当な二重価格表示が未だに罷り通っている不思議な世界です。

 

どこの産地でも時代によって効率化されたモノづくりがされていきます。産業革命以降、機械化によって量産化されていき、手仕事の技によるもののいくつかは、文化財保護法に基づいて重要無形文化財に指定されています。さらにややこしいのですが、重要無形文化財の技の指定条件と経済産業省による伝統的工芸品の指定条件は異なります。なので、化学染料をつかった染色や力織機で織ったものだから、偽物というわけではありません。重要無形文化財や伝統的産業品の指定条件を満たし昔ながらのつくり方を伝承しているものと、生産効率をあげて実現した手頃な価格帯でつくられているものがあるということです。

「本物か偽物かではなく」て「売り手がその違いをきちんと把握し消費者に伝えることができているのか?」ということが重要かと思います。

 

文化庁の重要無形文化財の選定保存技術と経済産業省の伝統的工芸品の指定要件の違いを知らない呉服屋さんはかなり多くていらっしゃいます。伝統的工芸品の証紙や組合の証紙はそれぞれのお墨付きですので、参考になりますが、それ以外が偽物というわけではありません。

 

糸 (国産かそれ以外か、生繭か乾繭か、手引きの座繰りか機械繰糸か、など)

染料 (草木染め、化学染料、大まかな比率)

絣(手括り、締機、捺染、など)

織機 (手織り、足踏み織機、高機、いざり機、力織機、など)

 

これらは価格に反映しますので、こういったスペック表示があることが望ましいと思っています。

 

売り手の方は、把握していないのであれば「わからない」と伝えてほしいです。

 

きものはファッションですので、自分が着たいと思えば本来はそれで良いものだと思います。いい加減な希少価値のようなものをつけるから結果的に虚偽になり、呉服屋さんへの不信感のようなものが生まれているように感じています。売らんがためのようなことは、情報化社会において通用しません。きもの好きはきものについて調べます。

 

「きものカンタービレ♪」でご紹介しているものは、朝香沙都子が着ているもの、着たいと思っているもの(願望含む)、自分は着こなせないけれども素敵!!!と思っているもの(たくさんあります)、後世に残ってほしいもの、ふと眼にとまったものです。

 

きものにハマりだした頃、こんな情報があったら良かったな…というようなことを中心にレポートしています。

 

しつこいようですが、金銭をいただいての広告宣伝は一切ございません。なけなしの私財を投じてやっております。それゆえのきものエンドユーザーの方への知名度と信頼であると自負いたしております。

 

かといって「仕事でないから…」というような言い訳や逃げることもいたしません。生業ではありませんが、自分で買って着用するという、きもの愛好家にとって何より必要となる検証もしております。

 

同業他社の方の記事をさげるようにという要望?をいただきましたが、間違いがあるようでしたら、具体的にご説明いただければと思います。業界内の悪口の応酬には関与いたしません。

 

こういうことを書くと、着物業界の方に嫌厭されるのは承知しておりますし、きものエンドユーザーから着物業界への信頼が無くなるようなネガティブなことを書くまいと思っておりました。

しかし黙っていることによって<勘違い>がさらに横行することは回避したいと思います。

 

朝香沙都子拝

 

「きものカンタービレ♪」のFacebookページ矢印