前半戦ベストマッチ!?壮絶な打ち合い イングランドプレミアリーグ第11節 チェルシーvsM・シティ
現在10位と中位に位置しているチェルシーですが、これで中位ですか!?と思いたくなるような能力の高さ、チームの質の高さを見せつける試合内容でした。改めてイングランドプレミアリーグのレベルの高さを感じたと同時に、後半に向けてチェルシーも順位を上げてくるのではないか?と期待させてくれるスリリングな試合でした。
個の質の高さを考えると、勝ってもジャイアントキリングとはならないかと思いますが、前半には一時2-1とリードし、シティを苦しめたチェルシーの戦い方を見ていきたいと思います。それでは、参りましょう!
目次
・チェルシー布陣
・シティ布陣
・4-4-2 チェルシー ハイプレスの仕組み
・プレス回避 パス&ムーブ
・シティの修正
・攻め残りという駆け引き
・4得点4失点という撃ち合い
・総括
・チェルシー布陣
チェルシーは4-2-3-1です。
・シティ布陣
対するシティはいつも通り4-2-3-1から攻撃時、アカンジ偽CBの3-2-5、守備時4-4-2です。
後述しますが後半は4-3-3気味になります。
・4-4-2 チェルシー ハイプレスの仕組み
チェルシーには能力の高い選手が集まっていますので、5バックで引いて守る、という戦い方はしません。
チェルシーの4-4-2の特徴は、まず前線2枚でボランチへのパスコースを遮断する点です。
上の図のようにボールとボランチであるロドリ、アカンジの間に立つことによってボランチへのパスコースを遮断します。
たとえ斜めのパスでアカンジ、ロドリに渡ってもカイセド、フェルナンデスがプレスをかけ、自由にやらせません。
このようにして、シティ中盤、特にボールの出どころであるロドリの自由を奪います。
もう一つの特徴は中盤4枚の広範な守備です。中間ポジションに立ち、1人で2人~3人を守ります。
こうすることによってGKエデルソンも、中央CBディアスもパスコースがなかなか見つかりません。
中盤の数的優位を確保するためB.シウバ、アルバレスが落ちたらカイセド、フェルナンデスが素早くプレスをかけます。
スペースを空けないことを優先しますので、奪えなかったら自分の守るべきスペースに戻ります。
ボクシングで言うなら、ヒットアンドアウェイ、です。パンチを当てた後、スッと相手から離れて相手のカウンターパンチを喰らわないようにします。では、守備のスイッチはどこで入れるのでしょうか。
守備のスイッチ
守備のスイッチとは、いわば、チーム全体でボールを奪いに行くためのプレス発動ボタンです。誰の発動ボタンをきっかけに、いつ、どこでボールを奪おうとしているのかを見ると、チームの特徴が見えてきます。
アーセナルは、相手がバックパスしたのを合図に全体でプレッシングをかけ、前からハメに行くスタイルでシティに勝利しました。
チェルシーは相手がGKにバックパスをした際に守備のスイッチを入れることもありますが、回数としてはあまり多くありません。
むしろ、自分の守るスペースを空けないことを優先しますので、GKエデルソン、中央CBディアスにある程度ボールを持たせて、縦パスやロングボールを放ってきたときにアグレッシブにボールを奪いに行きます。
・プレス回避 パス&ムーブ
こうして、ショートカウンター、ロングカウンターに繋げるチェルシーですが、攻撃はワンタッチ、ツータッチのパスでプレスを回避し、選手もどんどんランニングで追い越していきます。シティはマンツーマン気味のハイプレスなので、そのプレスを回避すればゴール前まで一気に加速することができます。前半は一時2-1とシティ相手にリードする展開となりました。
・シティ修正
シティのプレスは4-4-2をベースに、GKにも積極的にプレスをかけていきます。
とにかく人を捕まえ、早くボールを奪って自分たちがボールを保持する時間を増やします。そのため、敵陣深く下がっていった選手にもついていきます。
ロドリもB.シウバも出ていってしまうと、中盤にポッカリとスペースを空けてしまいます。
チェルシーの4-2-3-1に対し4-4-2でハメに行く場合、構造上縦関係のFW(トップ下)がフリーになりやすく、プレス回避される可能性が高まります。上手くいけばショートカウンターになりますが、ハマらなければ、一気に攻撃を加速されるリスクがあります。
前半のシティは、先ほど述べたように、攻撃時には中央CBディアスがパスコースがなくて困り、守備時には前から奪いに行くもプレス回避される場面が多くありました。
そこでシティは4-3-3という形にして解決を図ります。
攻撃時には後方で数的優位を確保します。
もちろん、前半にも攻撃時はロドリが落ちて数的優位を作ろうとするなど、自然と4バックの形になる時もありましたが、後半はそれを明確な指示の元、一人ひとりの役割をハッキリさせた印象です。
そのため、後半シティはボールを保持しながらゴールに迫るチャンスが増えました。
CBを増やすことによりフリーになる中盤
・攻め残りという駆け引き
自陣まで押し込まれた時、例えばスターリングは自陣深くまで下がることはあまりありません。
チェルシーとは異なり、11人全員でガチガチに守るチームもあります。
もともとスターリングのマークは右SBウォーカーですので、ウォーカーが上がってこなければそこまで下がる必要はありませんし、ものすごい高い位置をとってきた場合は左SBのククレジャにマークを受け渡します。
逆に、攻め残ることによって相手はカウンターを警戒し、高い位置を取りにくくなります。
スターリングほどの能力がある選手が前線に残っている場合、1人で対応するのにはリスクがありますから、後方に人数を確保しておくのは必然です。
この攻め残りによって、相手の攻撃枚数を減らす、という効果があります。
・4得点4失点という打ち合い
内容としては攻守の入れ替わりが激しいスリリングな展開でした。その中でも得点シーンでいくつか目を見張るものがありました。
まず1点目
デザインされた『留める』コーナーキックです。
そして2点目
相手を引き付けた上での、ロングボール→セカンドボール奪取→オーバーラップ、クロス→得点
・総括
シティ中盤ダブルボランチのパスコースを消すやり方はフラムの4-3-2-1の守り方と似ていますが、チェルシーの場合、中盤を4枚にすることによってワイドに幅を取るウォーカー、ドクにも対応できていました。それに対して後半、システムを変更して対応するシティの戦い方はまさに現代サッカーを象徴しているような戦術的な駆け引きがあり、とても観ていてワクワクしました。自チームに運動量豊富で、技術的にも個で打開できるようなウイングがいる場合はチェルシーのような戦い方もありだと感じました。ただ同時に、やはり強豪相手に4バックで挑むにはロングボールや背後に蹴られても対応できる質の高いCBの存在が必要不可欠であり、背後に蹴られてもGKが対応できるように、ディフェンスラインの高さ設定など守備を整理する必要性も感じました。やはり、ジャイアントキリングを起こすためには、守備の整備が大事ですね。
今回学んだジャイアントキリングのための教訓
・パスの出所、キープレーヤーを消す。
(シティで言うとロドリ)
・後半は相手のシステム変更にも対応できる準備をしておく。
・カウンター狙いの攻め残りで駆け引きもあり。