相手の守備を見ればサッカーは100倍上手くなる、ジャイアントキリングの教科書  〜最新サッカー戦術考察ブログ〜

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技術があるのに上達しない?相手の守備を見れていないことが原因です。年間300試合は観るサッカー観戦大好き指導者が、M・シティの試合を中心に、各チームがどのように挑むのか、そしてどのようにプレスを剥がすのかを分析します。サッカーが上達するヒント満載です。

シティを苦しめる王道4-4-2
エバートンの守備



第18節エバートンvsマンチェスター・シティ。エバートンのショーン・ダイチ監督はイングランドの元プロサッカー選手だそう。エバートンはプレミアリーグの財務規定違反で勝ち点10を剥奪されてたり、さぞ意気消沈かと思いきや、試合を見る限り吹っ切れているのか選手全員が同じ意識を持ち、一体感を持ってプレーしている印象を受けました。王道の4-4-2の守り方ですが、力量差があるチームが5バックを敷くのに対し、ハイラインハイプレス、リスクを負った守備でこれほどシティを苦しめるなんて!!しかし、それでも後半逆転してしまうシティには圧巻です。この前線からのハイプレスvsプレス回避、見応えたっぷりでした。

目次
・シティ布陣
・エバートン布陣
・エバートン守備
・シティプレス回避
・総括


・シティ布陣

シティは変わらず攻撃時3-2-5、ハーランド不在なのでアルバレスのワントップです。


アルバレスはハーランドと全く異なるタイプですので、ロングボール裏抜けというよりは昔のバルサ時代メッシの偽9番戦術を思い出させるような流動的な動きでビルドアップにも参加します。


自陣まで落ちて数的優位を作り、ビルドアップに参加する動き。



・エバートン布陣

このシティに対しエバートンは怯まず4バック2トップの4-4-2で挑みます。


ハーランドやスピードタイプのドクがいないので、シティもロングボールで一発裏抜けという攻撃はあまりなかったです。それを踏まえてなのか、リスクを承知でハイプレスを仕掛けていきます。


・エバートン守備

さぁ、エバートンの守備です。シティの3-2-5に対してエバートンは前線からのハイプレス4-4-2で挑みます。守備の仕方は、基本的に2つのパターンがあります。1つ目は、2トップがボランチへのパスコースを消しながらFWにプレスをかけていくパターン。


ボランチへのパスコースを消しながら外に追いだすようにプレスをかける。



サイドに追い込んだところで全体がインターセプトを狙います。


パスコースが限定されたところで全体で奪いにいく。


もう1つのパターンは、サイドハーフが3CBの一角に対し、縦からプレスをかけ奪いにいくパターンです。




GKに下げたところを2度追い、あるいはFWがプレスに行き、GKからの配球を狙います。



ですので、サイドハーフは①ハーフスペースのパスコースを消しながら、②ワイドに張った選手にアプローチにいけるように③CBにいつでもプレスをかけられるような立ち位置を取り続けます。




エバートンの守備は自陣に引いて守るのではなく、ミドルサードで構え、1人の選手が守備のスイッチを入れた瞬間に全体がまるで魚の群れのようにボールを奪いに行きます。

4-4-2の守備の仕方としては、王道な守り方ですのでシティとしては剥がし方もわかっていたはずですが、エバートンの1人1人の献身性、全体の意思統一によってボールを失う機会は多かったです。その証拠にエバートンは前半1-0で折り返すという成果を上げています。


・シティプレス回避

前半ビハインドでも動じないシティです。相手のプレスを回避する術を個々が高いレベルで持っています。ではどのように回避していくのか。
1つのパターンが、3バックがワイドに開き、その間にボランチが落ちてくるパターン。




このようにしてマークのずれを生じさせフリーな選手を作り出します。

ボランチがくいつくと中央パスコースを空けてしまう。



サイドは3対2の数的優位ができている。



3バックが中央に位置する場合は、そもそも2トップに対し数的優位はできているので、ボランチは落ちて来ずに中央に立ち位置を取ります。




また。対角のロングボールは常に意識します。というのも守備のスライドでコンパクトさを保とうとすると、4バックの場合逆サイドがフリーになってしまうからです。



ウイングにボールが渡れば後はポケットを狙いつつゴールに迫る、シティの得意パターンです。




ところが、エバートンは後半途中で3-4-3(5-4-1)の形にシステムを変えます。すると、シティの5枚がちょうどマンツーマン的に守られますので、パスが繋がらなくなります。


前線5枚を5バックの5枚で見る。



最初の数分は守備がハマりボールを失うことが多くなる。


このシステム変更に対するシティの修正は早かったです。それまであまり落ちて来なかったフォーデンやアルバレスが積極的に下がってきて数的優位を作り出します。



右サイドに張っていたベルナルドシウバもどんどん中に入ってきて、1人が2人を見なくてはならない状況を作り出し、フリーになります。


5バックを察知し、流動的に動くB.シウバ


このように、局地的な数的優位を作り出すことによって、ボールを前進させていきます。



つまり、特別なフェイントやトリッキーなプレイで不確定要素の高いサッカーをするのではなく、賢い立ち位置を取り続け、シンプルに止める、蹴る、運ぶを繰り返しながら前進していくわけです。
シティ1点目はミドルシュート、2点目はPK、3点目はショートカウンターでしたが。やはりジワジワと相手を押し込み、相手陣内でプレーすることによりPKなどのチャンスを得ていきます。


・総括

強いチーム相手に挑むとなると4バックで前線からプレスをかけていくのか、ある程度前線では自由にやらせて5バックで挑むか迷うところです。しかし、4バックでも選手がチームとして同じ方向を向いていれば、戦えることを示してくれた試合でもありました。それと同時に、シティのサッカーは合気道のように、向かってきた相手の力を利用して技を繰り出します。前線からプレスを仕掛けてくれば、一の手、二の手、三の手とボランチが落ちる、インサイドハーフが落ちる、FWが落ちる、と数的優位を作りながらプレスを回避していきます。B.シウバ選手が、自身の長所をサッカー理解度が高いことを述べていましたが、思考の部分を伸ばせば、サッカーは驚くほど上達することをシティのサッカーは教えてくれている気がします。守備の進化と並行して、攻撃の戦術も参加していますので、これからはますます、サッカー脳があり、技術的フィジカル的に優れた選手が求められていくことは間違いないでしょう。