注目のカードです。昨シーズン大きく飛躍したロゼルトデゼルビ監督率いるブライトンvsシティの一戦は、徹底して自分たちのコンセプトを貫くというブライトンのプライドが見てとれる一戦でした。
三苫選手も久々のウォーカーとのマッチアップとなりましたが、コンディションも良さそうです。試合自体はシティが2-1でブライトンを下しましたので、今回もシティに敗れる結果となりましたが、ブライトンのコンセプトである擬似カウンターに対して、巧みな対応をするシティなど見どころ満載でしたので、分析していきたいと思います。それでは参りましょう!
目次
・シティ布陣 ストーンズの偽CB
・ブライトン布陣 GKまで下げさせる守備
・シティ偽CBビルドアップ
・ブライトンのハイリスクハイリターンなビルドアップ
①基本形
②サイドバック立ち位置I
③サイドバック立ち位置II
・シティの守備対応
・総括
・シティ布陣 ストーンズの偽CB
シティはストーンズを右CBに入れます。
攻撃時はストーンズがボランチの位置まで上がり3-2-5もしくは2-3-5を形成します。ディフェンスラインからスルスルと上がってくることにより守備側としては捉えづらくなります。
・ブライトン布陣
シティ相手に守備的に構えることはせず、前からプレスをかけていきます。アーセナルの様に二度追いしてGKに猛烈なプレッシャーをかけていくことはしませんが、基本的には中央を使わせないように、中へのパスコースを切りながらプレスをかける、あるいはGKまでバックパスをさせる様に縦切りをしていきます。
GKがボールを持ったところで、ジリジリと近づいていき、ロングボールを蹴らせて回収するか、サイドに出した所でハメに行きます。
一点気になったのは、前線からプレスをかける際にブライトンのディフェンスラインがあまり高くなかった点です。
前からプレスをかける際、ディフェンスラインはできるだけコンパクトにすべく、ハーフウェアライン付近にラインを設定するのが常套手段ですが、ブライトンを見ているとディフェンスラインは自陣センターサークル頂点あたりに設定している様に見えます。
考えられるのは、FWハーランドに背後のスペースを与えない様にディフェンスラインを若干低めに設定しているか、逆にシティが背後を狙ってくるのでラインを下げざるを得ない状況を作らされているかです。個人的には前者で、ロングボール一蹴りで背後をやられない様に、ディフェンスラインを高く設定しすぎない様にしているのではないかと考えております。
・シティ偽CBビルドアップ
このプレスに対し、シティは偽CBを含めた中盤での数的優位で対応していきます。
ハーランドなど前線アタッカー陣はブライトン守備陣を留める役割を果たし、前方と後方の分断を図ります。分断された中央にはたくさんのスペースがありますので、相手の中盤のプレスを抜けさえすれば、一気に局面を打開できゴールまで進むことができます。
これは余談ですが、2種類のドリブル①運ぶドリブル②突破のドリブルのうち①の運ぶドリブルが海外の選手はとても上手だと感心させられます。しっかりと目線を上げ、姿勢を良くし周囲の状況を見ながら前に運びます。日本では突破のドリブルやキープのドリブルはよく指導されますが、この運ぶドリブルに関してはまだあまり多くは指導も評価もされていないように思えます。
・ブライトンのハイリスクハイリターンなビルドアップ
ブライトンもシティ同様、しっかりとボール保持をしながら局面を打開していきますが。シティと大きく異なる点は、中盤を省略した縦パスが多いことと、縦パスが入ってからのスピードアップが速いことです。
①基本形
基本はサイドバックが低い位置に立ち、ダブルボランチがセンターバックのやや内側、低い位置まで下がってきて相手中盤を引き付けます。
この6枚を自由にさせないために、相手もマークについてきますので、前方には広大なスペースが生まれます。
このスペースに縦パスを入れることを常に考えながらボールを動かしていきます。
そして縦パスが入るとワンタッチプレーやサイドに叩くことによって、一気にゴール前まで加速していきます。前線のハイプレスを掻い潜れれば、カウンターの様なスペースと数的優位な状況を作り出すことができます。そういった意味では、ベースとなるコンセプトはシティに似ている部分があります。
②サイドバック立ち位置I
サイドバックは常に低い位置をとるわけではありません。状況を見て中央まで入ってきます。中央に入ってくることによりマークは掴みにくくなるので、前を向ければ一気に局面を打開できます。
③サイドバック立ち位置II
2つ目は高い位置を取り、サイドで数的優位を作ろうというものです。
ロングボールをフリックすれば打開できますし、サイドバックが高い位置を取ることによりウィングが中央に移動してボールを受けることもできます。実際、後半は三苫選手が中央でボールを受けて前を向き、一気に加速していくシーンが見られました。
このように、基本形から、相手の状況次第で立ち位置を変えることによって、前進を試みていきます。ポジションに囚われないで、相手の状況を見てボールを受けることを常に意識しています。
・シティの守備対応
このような縦パスからのスピードアップに対しシティはどう対応したかと言うと、前線からプレスをかけ、曖昧な縦パスを出させる様に仕向けます。そして、縦パスが入ったらタイトにボールを奪いに行きます。
秀逸だったのはやはり守備陣の読みの能力の高さです。縦パスが入ったらフリックやワンタッチパスでスピードアップしてくるのはわかっているので、フリックしそうだと思ったらスッと引いたり、縦パスの後のワンタッチで落とした先に激しいプレスをかけます。
ワンタッチでフリックすると読み、パスコースに先回りをしボールを奪う賢い守備
もちろん中盤もプレスバックしてコンパクトネスを保ち、ブライトンに自由を与えません。ブライトンも昨シーズンとは異なりだいぶ対策されている印象です。ただ、ブライトン視点で見ると、今シーズンのブライトンはややビルドアップで自分たちのミスでボールを失ってからの失点が多い印象です。中盤の網を抜ければそこにはハイリターンが待ってますし、観ていてとても魅力的なサッカーをするのですが、個の能力が劣る場合はリスクが勝るサッカーになると感じます。
・総括
シティ相手に1-2と惜敗したブライトン、そのサッカーは美しいパスワークから得点を奪うようなとても魅力あるサッカーです。ただ、能力で劣る弱小チームがそのサッカーを取り入れようとした際に考えることは、ブライトンは中堅クラブとは言え、各国の代表クラスが集まっていて、技術的にとても高い選手が多いということです。
すなわち、能力が高い選手だからこそできるサッカーと言えるわけです。
ここで指導者は、選手の能力に関わらず、クラブ、チームの哲学を大切にするチーム作りをするのか、それとも選手の能力を考え、勝つ確率を上げることを優先したチーム作りをすべきかのジレンマに悩まされます。
選手の能力が低いのにチームの美学にこだわりすぎると、全く勝てずに選手は楽しくなくなりますし、コロコロ戦い方を変えると、チームのコンセプトがないという風に見られてしまいます。
サッカーの指導に関わる者にとって、非常に悩ましいところです。
しかし当ブログはあくまでジャイアントキリングするために何が必要なのかを考えるブログです。勝つ確率を上げるチーム戦術を愚直なまでに考えていきたいと思っておりますので、どうぞお付き合い頂ければと思います。
今回得たジャイアントキリングのための教訓
・個の能力を考えた上でチームの戦い方を考えよ。
・ボールを繋げば繋ぐほどミスは増える。
・縦パスが入った時、3人目、4人目が動き出せば擬似カウンターを発動できる。