【3分書籍解説】サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質 | 相手の守備を見ればサッカーは100倍上手くなる、ジャイアントキリングの教科書  〜最新サッカー戦術考察ブログ〜

相手の守備を見ればサッカーは100倍上手くなる、ジャイアントキリングの教科書  〜最新サッカー戦術考察ブログ〜

技術があるのに上達しない?相手の守備を見れていないことが原因です。年間300試合は観るサッカー観戦大好き指導者が、M・シティの試合を中心に、各チームがどのように挑むのか、そしてどのようにプレスを剥がすのかを分析します。サッカーが上達するヒント満載です。

自分の子どもに、『サッカーをもっと好きになって上手になってほしい。』と思っている親御さん、『教えている子どもたちに更に上のステージで活躍してほしい。』そう思っている指導者、そんな方々にとって必読と言える一冊です。

 

本書は現役時代は元日本代表、ヴェルディでラモス瑠偉選手らとプレーし、引退後はU-15,16,17日本代表のコーチを歴任した菊原志郎氏と、仲山考材株式会社 代表取締役 楽天株式会社楽天大学学長を務める仲山進也氏との対談形式で記されています。

 

当時のヴェルディは三浦知良、武田修宏、ラモス瑠偉擁するスター中のスター軍団です。その華々しさ、ファンで溢れかえるほどの人気の中、菊原氏はなんと15歳でプロ契約して、16歳で日本サッカーリーグ最年少デビューしました。チームメイトのなかでも突出した技術で、「天才」と称されたサッカープレイヤーです。20歳で日本代表にも選出されています。

 

引退後指導者となった菊原氏が、これぞ育成の本質!と言える内容を余すことなく伝えた本書は、育成に関わる全ての人が教科書にすべき本ではないでしょうか。

 

構成は

第1章『天才の育ち方』

第2章『強いチームを育む組織文化』

第3章『組織の育成ー自走するチームの作り方』

第4章『個の育成①ー伸びる子と伸びない子の違い』

第5章『個の育成②ー自走人の増やし方』

第6章『個を伸ばす指導者・保護者』と『個をつぶす指導者・保護者』の違い

第7章『グローバル時代の育成』

第8章『サッカーから学んだことを通して幸せになる』

となっております。

 

今回は私なりに、個の育成において大切だと思うことを厳選して4つお伝えさせて頂ければと思います。それでは見ていきましょう!

 

 

①”夢中”を見つけさせる〜選択肢を与える〜

 

『プロの選手になるために必要な資質は何ですか。』

 

保護者がする代表的な質問だそうです。

そのような質問に対して菊原氏は以下のように答えます。

 

『一番大事なのは、サッカーに夢中になることです。夢中になることができれば、つらいことや苦しいことがあっても乗り越えられます。 夢中になるためには、サッカーの面白さ、楽しみ方を知る必要があります。』

 

では、子どもが夢中になれる状態はどのように作れるのでしょうか。

 

幼少期、菊原氏の父親は、

 

「失敗してもいいから、いろいろなことを経験しなさい。小学6年生まではサッカー以外にもたくさんのことにチャレンジして、いろいろな失敗や成功を経験することが大事だ。中学からは自分に合うもの、自分の好きなものにだんだん集中していく。高校くらいからやりたいことを専門的にやっていけばいい。」

 

と言い、菊原氏は小学6年生までは、空手、水泳、スキー、卓球、サッカー、野球など、いろいろなことを習ったそうです。

 

日本代表になるくらいですから、てっきり子供の頃からサッカー漬けの毎日なのかと思いきや、意外に色々なことにチャレンジしていたことに驚きでした。

 

親の立場からしたら、サッカー選手になりたいと子どもが言うなら、サッカーを思いっきりできる環境を整えたいと思いますよね。

 

しかし、そうではなくてたくさんの選択肢を与えてあげて、その中から子ども自身に選ばせる。初めは強制的にやらされているという感覚が伴うかもしれませんが、子どもが自らやりたいことを最終的に選び、主体的に取り組むことが、一流になれる近道ということなのでしょう。

 

時に、子どもの試合を観に行った親の方が熱くなってしまい、色々と指示を出し、ダメ出しをしてしまうという話を聞きます。親の言うことをプレッシャーに感じてしまい、不安に思ってしまった子どもは心からサッカーを楽しみ、夢中になることができなくなってしまいます。特に、プロ選手になることや、試合に勝つという結果にこだわりすぎると、子どもは心からサッカーを楽しむことができなくなってしまいます。

 

きっかけは親が与えるものかもしれませんが、最終的には子どもが、夢中になれるものを自分自身で選び、それを応援してあげることが、子どもが幸せになるために親にができることなのでしょう。

 

②小さい頃は成功しすぎない方が良い

 〜小・中学校で全国優勝した選手は伸びにくい〜

 

本書では以下のように述べられています。

 

『サッカーの世界では、小・中学校で全国優勝して、高校・大学でもプロでも成功して幸せになっている選手って、そんなにはいません。子どものときに成功体験が多く、うまくいかなかった経験が極端に少なくて、でも高校生くらいになって急にうまくいかないことが増えて、それに耐えられなくてやめてしまう人がいます。一生ずっと上に居続けられる人はほとんどいないんです。だから小・中学校のときに圧倒的に勝つよりも、大人に近づくにつれて少しずつ勝っていけるほうがいい。』

 

成功しすぎでは勘違いしてしまうし、失敗ばかりではやる気がわかなくなってしまいます。

 

例えばサッカーのトレーニングでボール回しをさせる際、グリッドのサイズを極端に大きくし過ぎると、子供たちは簡単すぎてつまらなくなってしまいます。反対に、小さすぎると今度はパスが回らなさすぎてつまらなくなってしまいます。

 

成功と言えるプレー現象が6〜8割くらい起きるグリッドのサイズだと、子供たちは楽しそうに生き生きと練習に取り組んでくれます。

 

そのような成功と失敗を繰り返しながら、学び、経験を得ていくことが大切だと菊原氏は述べています。そのため、小さい頃の勝ち負けは大したことはないそうです。

 

 『人生は長い。人生の本当の勝負は、人生が終わるまでわからない。重要なのは最期に「ああ、いい人生だったな」って思えるかどうかですよね。それで人生の勝ち負けが決まる。小学生のときの勝ったとか負けたとかは、本当に小さくてどうでもいいことなんです。そんなことよりも、そのときに何を学んで、どう成長したかということのほうが大切です。』

 

私は負けず嫌いな性格で、勝ちにこだわって熱くなってしまうことが多々ありましたので、もう反省ばかり出てくるのですが、確かに小学生の頃勝った記憶ってぼんやりとしているというか、なんだかハッキリと覚えていません。むしろ、PKを蹴る勇気がなくて負けたり、自分がダメで負けた時の方が、悔し涙を流すなど記憶にハッキリと残っています。

大切なのはそこから学ぶことだったんですね。そんなことを次の世代を担う子どもたちに伝えていきたいですね。

 

③評価しすぎない

 

ダメ出し、改善点を述べてあたかも評論家のように振る舞ってしまうと、子どもが心から楽しみ成長できなくなってしまいます。

 

『特に若い指導者だと、子どもの将来を担っているという感覚よりも、自分の指導法を確立したいという思いや、結果を出さないと長く指導者としてやっていけないというプレッシャー、認められて上のカテゴリーにステップアップしたいという欲求もあるから、どうしても勝つことが最優先になってしまいます。だから勝ちにこだわりすぎてダメ出しやプレーへの評価が起きてしまう。』と菊原氏は考えております。

 

『みんな人のことを評価するのが好きですよね。しかもあとから評論する。休日にプールや海へ泳ぎに行ったとき、保護者は「もっとこうやって泳いだほうがよかった」とか言わないですよね。でもサッカーになると、そうなるでしょう。みんな評論家になってしまう。「あのときこうしたのがよくなかった」とか「誰を代えたほうがよかった」とか。あとからなら誰でも何でも言えますよね。  

3日くらい放っておいて、自分たちで少し考えさせればいいんです。大人抜きで子どもたち同士で試合をやっていると、みんな自分で考えていろいろなことを試しているけれど、いざコーチが入るととたんに硬いサッカーになってしまう。  

(中略)

でも、指導者が「何もしないで見守る」って難しくてなかなかできないんですよね。やはり保護者から見られているということもあるし、積極的に指導したほうが「一生懸命、子どもたちにぶつかってます、教えています」という「やってる感」をアピールできて楽ですからね。 

 

ヨーロッパでは、すごく年配の指導者がいて、いろいろなことを知っているから、基本的にはじっと見守っていて、大事なところだけちょっと話をしたりします。』

 

これ!まさにこれなんです!指導してると保護者や同じ指導者の目が気になって、ついつい常に指導してないと、ダメだと思われるんじゃないかと思って何か言いがちなんですよね。そのことに育成年代の指導者の意識が行き過ぎてしまうと、子どもが自ら考え行動するという、人生において大切な、成長する機会を奪ってしまうことになります。大事なのは、考えるきっかけを与えてあげること、そして見守ってあげること、育成の本質って、これですよね。

 

④損得を考えない姿勢を育む

 

サッカーの本質、それはチームスポーツだということです。チームのためにプレーせず、自分のことばかり考えてプレーする選手は結局評価されなくなってしまいます。

 

『他人のために何か貢献をすることで、こちらも満足感を得られます。電車の中で他人に席を譲ったときに、いいことをしたなと思っていい気分になる、みたいな。 

 

サッカーでも同じで、「どうして他人のためにこんなことしなきゃいけないんだよ」という感覚ではなくて、自然に他人のために何かができたり、それを「おお、いいね」「ありがとう」と言えたりする感覚が身につけば、いい人間関係が増えてくると思うんですよね。 

 

だから、僕は子どもたちにいつも「まずは自分から人のために動いてみよう。いいパスをして、いいサポートをして、いいカバーをして、いい声をかけてあげなさい。そうすると、相手も同じようにしてくれると思うよ。お互いのためにサポートし合う関係が増えてくればいいよね」と指導するんです。

 

実際にそうしてみると、たいていの子はちゃんと返してくれるから、それを仲間みんなとやればサッカーが楽しくなり、チーム全体がすごくいい人間関係になるんです。』

 

ここまでくると、サッカーの枠組みを超えて、生き方を教えられている感覚です。三苫選手のように活躍している日本人を見ると、うちの子もあんな風に!と思ってしまいそうですが、それは親のエゴで、子どもが人間的に成長してくれることが第一ですよね。チームスポーツであるサッカーを通じて仲間と協力する姿勢や損得を考えずに行動する力を養う、失敗や成功を経験して頑張れる精神力を養う、そのような人間的成長が第一なのだと考えさせられます。

 

 

まとめ

以上、本書サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質の中で語られる大切な要素

 

①”夢中”を見つけさせる〜選択肢を与える〜

②小さい頃は成功しすぎない方が良い

 〜小・中学校で全国優勝した選手は伸びにくい〜

③評価しすぎない

④損得を考えない姿勢を育む

 

について述べさせて頂きました。子どもの未来を担う、育成の現場から届いた貴重なメッセージです。是非ともご指導の際の参考になさってください!

 

サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質 才能が開花する環境のつくり方