トスカーナはイタリア中部の州で、ティレニア海に面しています。州都はフィレンツエです。この州で造られるワインの85%は赤ワイン。主力のぶどう品種はサンジョヴェーゼ(Sangiovese)です。
 
州の約70%は丘陵地です。ぶどうは海抜150~500の斜面で栽培されています。石灰質の多く、やせた土壌。昼の十分な日当たり。昼と夜の大きい寒暖差。こうしたトスカーナの風土は、香りの良いサンジョヴェーゼの栽培に向いていると言われます。
 
サンジョヴェーゼは昔からカナイオーロ(Canaiolo)やマルヴァジア(Malvasia)と一緒に混醸されてきました。さらに、20世紀になると、白ブドウのトレッビアーノ (Trebbiano)とも混醸されるようになりました。
 
1963年にイタリアのワイン法が成立すると、その数年後にはDOCに格付けされてはいるものの、質の劣ったワインを造る動きも出てきました。
 
しかし、1970年代になると、キャンティ・クラシコと名付けられた地域やモンテプルチャーノ村(Montepulciano)ではサンジョヴェーゼを中心に据えて、質の高いワインの追求が始まりました。さらに、80年代になると、他の地域でもサンジョヴェーゼに焦点を当てて、品質の高いワイン造りが始まりました。
 

 エミリア・ロマーニャ州は北部にポー(Po)川が流れ、南はイタリア半島を縦に貫くアペニン(Appennini)山脈が占めています。州の半分を占める平野では、小麦や果物類の農業や畜産業が営まれています。食品産業も盛んで、特に生ハム、チーズ、コテキーノ(Cotechino)という豚肉ソーセージなどが、よく知られています。


 エミリア・ロマーニャ州にはフェラーリ、ランボルギーニ、マセラッティなどの自動車メーカーの本社があり、自動車産業の地としても知られています。


 ワインの生産量では、イタリアではトップクラスのヴェネト州、プーリア州、シシリア州などに次ぐ位置にあります。しかし、州で造られるワイン全体の中でDOCGまたはDOCの格付けを持つワインが占める比率は約15%に過ぎません。質より量を求めるワイン造りです。
 脂肪分の多い料理が好まれるエミリア・ロマーニャ州。ワインは静かにじっくり味わう飲み物としてではなく、脂っこい料理に欠かせない飲み物として位置づけられてきたと思われます。


 州全体に微発泡のワインが好まれています。特に、内陸部のエミリア地方では発泡性ワインが好まれます。その中で、知名度が比較的高いのはランブルスコ(Lambrusco)という品種を使った微発泡性赤ワインです。


 州の西北部に位置するコッリ(Colli)地方の丘陵では、バルベーラ(Barbera)という品種やボナルダ(Bonarda)という品種をつかった赤ワイン、マルヴァジア(Malvasia)という品種をつかった白ワインが造られています。


 州の東側に位置するロマーニャ地方ではアルバーナ(Albana)という品種を使う白ワインが造られています。「ロマーニャ・アルバーナ」は1987年にDOCGに認定されました。辛口のセッコ(Secco)、中甘口のアマービレ(Amabile)、甘口のドルチェ(Dolce)のほか、陰干ししたぶどうを使うパッシートという種類も造られています。


 ロマーニャ地方では、サンジョヴェーゼ(Sangiovese)系の品種であるサンジョヴェーゼ・ディ・ロマーニャを使った質の高い赤ワインも造られています。

 

 

 

 

 

 

 

 イタリア北東部の州、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州は国境に面しています。北はオーストリア、東はスロベニアです。この州がイタリアに編入されたのは第一次世界大戦後です。昔から、イタリアとドイツとスロベニアの人と文化が合流してきた地域です。
 領有権を巡る争いが繰り返されたこの地域には、多くの品種のぶどうが持ち込まれました。19世紀にハプスブルク家がこの地を支配した時代に、ピノ・グリ、ピノ・ブラン、シャルドネ、メルロー、ピノ・ネロ、など、フランス系品種の栽培が始まりました。フィロキセラによる害を受け、その後、ぶどう畑を再建するときに、フランス系品種の栽培が広がりました。一方で、フリウラーノ、ピコリット、スキオペッティーノなど、多くの土着品種が現在も栽培されています。
 1960年半ばまで、この州で造られるワインは、平凡な品質で、現地で消費されるようなワインばかりでした。
 フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のワイン造りを変えるきっかけを作ったのは、マリオ・スキオペット(Mario Schiopetto)という人です。
 イタリア語で「タヴェルナ」と呼ぶ大衆的なレストラン経営者の息子として生まれたマリオ・スキオペットは、フランスやドイツのワイン造りを見学してまわり、1965年に教会からぶどう畑を借りてワイン造りを始めました。ドイツのワイン造りを参考に、イタリアで最初にクリーンでフレッシュでフルーティな白ワインを造りました。
 フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州には4つのDOCGがありますが、すべて白ワインのDOCGです。
 
 イタリア北部のヴェネト州。主要なぶどう品種は3つです。
 コルヴィナ・ヴェロネーゼ(Corvina Veronese)
 グレーラ(Glera)
 ガルガーネガ(Garganega)
 
 ガルガーネガで造る白ワイン、(Soave)は米国で1970年代に、イタリア産ワインとして、トスカーナ州の赤ワイン、キャンティとともに人気を博しました。
 ヴェネト州の他のぶどうと同様、ガルガーネガの生産量も第二次世界大戦後、大幅に増やされました。元々は丘陵地帯の斜面にだけあったぶどう畑は、アディジェ(Adige)川が形成した沖積土の平野にまで広がりました。
 
 ソアーヴェにはDOCとDOCGがあります。さらに、DOCGの中にもランクがあります。
 丘陵地帯の斜面にある昔からの畑で収穫したぶどうだけを使ったソアーヴェには「Classico Supuriore」(クラシコ・スプリオーレ)の名がつき、最高級とされます。
 
 昔からの畑ではないが、丘陵地帯の斜面にある畑で収穫したぶどうを使ったソアーヴェには「Colli Scaligere Supuriore」(コッリ・スカリージェリ・スプリオーレ)の名がつきます。
 平地にあるぶどうを使ったソアーヴェのDOCGワインには何も形容詞はつかず、DOCGのみを名乗ります。
 
 ソアーヴェはガルガーネガを70%以上、残りをトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ(Trebiano di Soave)、シャルドネ、ピノ・ビアンコなどで混醸します。
 
  ヴェネト州には1960年代にトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェに置き換わる形でトレッビアーノ・トスカーノ(Trebiano Toscano)が入り込みました。トレッビアーノ種は収穫量が多い特長を持つ白ぶどうです。DOCGのつくソアーヴェはトレッビアーノ・トスカーノを混醸しない規則です。
 
 
 
 
 イタリアではスパークリング・ワインをスプマンテ(Spumante)と呼びます。プロセッコ(Prosecco)はヴェネト州で造られているスプマンテです。
 
 プロセッコはもともとはぶどう品種の名前でした。2009年にぶどう品種の呼び名をプロセッコからグレーラ(Glera)に改め、プロセッコはグレーラで造ったスプマンテの名前に改めました。
 同じ品種を使ってオーストラリアやブラジルなどで造られたスパークリング・ワインとヴェネト州で造るスプマンテを区別する狙いがあったようです。
 
 プロセッコにはDOCと、2010年にDOCプロセッコから昇格しDOCGがあります。DOCGにはぶどう畑のある地域の名前がつきます。「コネリアーノ・ヴァルドッビアデーネ・プロセッコ・スペリオーレ」(Conegliano Valdobbiadene Prosecco Superiore )がよく知られています。
 
 スパークリング・ワインはアルコール発酵が済んだワインに糖分を加え、密閉されたタンクあるいはボトル内で2次発酵させることで二酸化炭素を発生させて造ります。ボトル内で2次発酵する方法をトラディショナル方式(Traditional method)と言います。タンク内で2次発酵する方法はシャルマ方式(Charmat method)と言います。シャルマ方式はトラディショナル方式に比べ製造コストが低くなります。
 
 プロセッコも含め、スプマンテのほとんどはシャルマ方式で造ります。しかし、ボトル内で2次発酵させ、澱引きせずに出荷しているプロセッコもあります。アンチェストラーレ(Ancestrale)方式と呼ばれます。
 
 澱になった酵母は分解するとアミノ酸が溶け出し、ワインに豊かな風味を加えます。澱のある状態で熟成する方式は、フランスではシュール・リー(Sur Lie)と言います。
 
 澱引きせずにタンク内で3カ月以上をかけて熟成したタイプのプロセッコもあります。シャルマ・ルンゴ(Charuma Lungo)方式と呼ばれています。