キャンティは1967年にDOCを取得しました。キャンティ・クラシコは質の高いワインに位置づけられていましたが、DOCとしては独立していませんでした。クラシコではないエリアで栽培したぶどうで、質を求めたキャンティは「スプリオーレ」(Superiore)を名乗ることができました。
 
クラシコとスプリオーレは質の高さを求めたキャンティですが、1967年に成立したDOCは質よりも量を求める内容のルールでした。多くの消費者が安価なワインを求めていた時代でした。
 
DOCの成立と同時にキャンティの指定エリアは拡大されました。また、DOCに定めるルールは収穫量の多いぶどう品種の混醸を認める内容でした。サンジョヴェーゼをベースにマルヴァジア(Malvasia)や白ぶどうのトレッビアーノ(Trebbiano)を10~30%ブレンドするというものです。
 
キャンティが質の向上を追求し始めたのは1980年代に入ってからです。DOCの定めるルールにこだわらず質の高いワインを造る動きがトスカーナ州で始まり、「スーパータスカン」として米国消費者に歓迎されました。その動きを受けて、キャンティは1984年に質の向上を求めてルールを改め、DOCからDOCGに格を上げました。
 
質を追求する動きが続く中で、キャンティ・クラシコは1996年にキャンティDOCGから独立したDOCGを取得しました。2年を超える期間の長期熟成を行ったクラシコは「リゼルヴァ」とラベルに記すことができます。また、2014年には通常のクラシコよりも特に吟味したぶどうを使ったワインとして「キャンティ クラシコ グラン セレツィオーネ」(Chianti Classico Gran Selezione)というカテゴリーが誕生しています。
 
 
 
キャンティ(Chainti)は元々は山の名前でした。その丘陵地帯では古くからぶどうが栽培されワインが造られていました。
 
キャンティを造るぶどうの品種に最初の明確な指針が与えられたのは1872年です。ベッティーノ・リカーゾリ(Bettino Ricasoli) 男爵が、サンジョヴェーゼ(Sangiovese)70%、カナイオーロ(Canaiolo)15%、マルヴァジア(Malvasia)15%という割合を提案しました。マルヴァジアは白ブドウです。リカーゾリ男爵は後にイタリア王国の第二代首相を務めました。
 
キャンティは1990年代半ばまで、高い評価を受けることができるワインではありませんでした。
 
ボトルをわら(トウモロコシの皮)で包んだ「キャンティ・フィアスコ」というワインがあります。なぜこのような名前にしたのでしょうか。

 

 

 

 

 

フィアスコ(fiasco)には「失敗」という意味があります。ガラス職人が売り物にはならないガラス瓶の失敗作をfiascoと呼んだと言われます。ボトルの強度不足を補うためにわらの覆いをほどこしたワイン。「キャンティ・フィアスコ」のイメージでした。
 
「キャンティ・フィアスコ」は現在も販売されています。わらで包まれたボトルには装飾性があり、そこに目を引かれる人もいます。安価で気軽に飲めるワインです。

イタリア・トスカーナ州ワインの代表格「キャンティ」の近代史は、1716年にメディチ家出身の第6代トスカーナ大公だったコジモ3世が「キャンティ」というワイン名を名乗ることのできるぶどうの生産エリアを設定することから始まりました。

 

現在のイタリア共和国が成立したのは第二次世界大戦後の1946年です。その前身となるイタリア王国が成立したのは1861年です。イタリア北西部とサルデーニャ島を領有していたサルデーニャ王国が北イタリアからシチリア島まで領域を広げ、王国としてイタリア統一を果たしました。

 

トスカーナ大公がイタリアの統一前に定めた「キャンティ」エリアに関するルールを定めたのはイタリア王国が成立する145年も前のことです。ルールは次第に守られなくなっていきました。指定されていないエリアで栽培されたぶどうを使ってワインを造り、「キャンティ」を名乗ることが横行しました。

 

現実を追認する形で、「キャンティ」エリアは1932年に大きく拡大されました。指定エリアを拡大したことで、「キャンティ」には多様なワインが含まれることになりました。キャンティ・エリアは7つのサブエリアに分けられ、1917年に設定した地域を含むサブエリアは「キャンティ・クラシコ」(Chianti Classico)という名前になりました。

 

1963年にイタリアのワイン法が施行されました。このワイン法による格付けでは「キャンティ・クラシコ」を名乗っていたワインは「キャンティ」ワインに含まれることになりました。「キャンティ・クラシコ」が「キャンティ」から独立した呼称になったのは1996年です。

 

現在の各サブエリアの面積は次の通りです。周辺地域を除くと、Classicoはサブエリアの中で最大の面積を持っています。なお、サブエリアの一つColli Fiorentini2002年にColli FiorentiniMontespertoliの二つに分かれました。

 

Classico 7,142ha

Colli Senesi 3,550 ha

Colli Fiorentini 905 ha

Rufina 740 ha

Colli Aretini 649 ha

Montalbano 318 ha

Colline Pisane 150 ha

Montespertoli 57 ha

周辺地域 10,324 ha

 

キャンティの指定地域はトスカーナ州に広がっており、赤ワインの「Brunello di Montalcino」や Vino Nobile di Montepulciano」、白ワインの「Vernaccia di San Gimignano」の指定地域と重なっています。

 

 

 

 

 

 

 

トスカーナ州の赤ワインを造るぶどう品種、サンジョヴェーゼ(Sangiovese)の名前は、「ユピテルの血」を意味するラテン語、Sanguis Jovisに由来します。ユピテル(ラテン語ではJuppiterまたはJovis、英語でJupiterまたはJove)は、ローマ神話に登場する数多くの神の中で主神となる神です。
 
サンジョヴェーゼはネッビオーロとともにイタリアを代表するぶどう品種です。サンジョヴェーゼには、様々な変異種があります。また、呼び名も数え多くあります。それぞれの変異種に応じて、ワインも様々です。高級ワインもあれば、気軽に飲めるワインもあります。
 
サンジョヴェーゼだけで造られる高級ワインとして有名なのは、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」(Brunello di Montalcino)です。このワインはブルネッロという名前のぶどうだけで造られています。ブルネッロはサンジョヴェーゼ・グロッソとも呼ばれ、サンジョヴェーゼの一種です。「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」という銘柄を名乗るワインは、最短でも2年間のオーク樽熟成を含み、50カ月以上の熟成期間を必要とします。
 
サンジョヴェーゼをベースに他の品種をブレンドするワインもあります。よく知られた銘柄としては「キャンティ」(Chianti)や「ヴィーノ・ノビレ・モンテプルチアーノ」Vino Nobile di Montepulciano などがあります。
 
1950年代まで、トスカーナのぶどう畑を所有していたのは地方の裕福な一族でした。畑で作業をするのは小作人でした。この時代から、今も続いているファミリー名として有名なのは、アンティノリ(Antinori)、フレスコバルディ(Frescobaldi)、リカーゾリ(Ricasoli)などです。
 
しかし、小作制度は1950年代から崩壊し始め、ぶどう畑の維持が次第に困難になっていきます。トスカーナ出身の富裕な一族が保有していたぶどう畑は次々と売りに出されます。
 
ぶどう畑を買い取ったのはミラノやローマやジェノバから人たちです。トスカーナのワイン造りは、トスカーナの外から来た新しいオーナーたちによって再生されます。