シャンパーニュを造るにはまず収穫したぶどうから白ワインを造ります。ぶどうを搾った果汁には野生の酵母のほかに細菌、果梗の破片、微細な果肉などを含んでいます。白ワインを造るには、発酵の前にこれらを除去します。

 圧搾してタンクに入れた果汁には、亜硫酸塩を加えます。亜硫酸塩は果汁の酸化を防ぎ、細菌の繁殖を抑え、発酵時に出るアセトアルデヒドと結合して不快な香りを消す働きをします。

 その後、微細な固形物を沈殿させ、澄んだ果汁のみを取り出します。この工程をフランス語ではデブルバージュ(debourbage)と言います。泥(bourbe)を除くという意味です。英語では沈殿という意味のsettlingという言葉を使います。

 重力で沈殿させるには12~24時間の時間がかかるので、時間を短縮したい場合は遠心分離機を利用します。小さな固形物を大きな塊に成長させるためにベントナイトという粘土を加えます。ベントナイトは固形物だけでなく黒ぶどうの色素も吸着します。

 澄んだ果汁が得られたら、酵母を加えて1回目のアルコール発酵を行います。これでシャンパーニュの元になる白ワインができます。
 シャンパーニュ地方ではピエス(Piece)という205リットルの樽を使っていましたが、一番搾りはピエス10個分、二番搾りがピエス2個分、三番搾りはピエス1個分と決めていました。合計すると、4000キログラムのぶどうから2665リットルの果汁を搾っていました。

 ルールは1990年に改められ、搾る果汁の容量は少し少なくなりました。一番搾りの容量は変わりませんが、三番搾りを廃止し、二番搾りまでにしたのです。その代わり、二番搾りの容量は500リットルにしました。この結果、4000キログラムのぶどうから搾る果汁の容量は2550リットルになりました。

 ぶどう4000キログラムから2550リットルを搾るのですから、1キログラム当たり638ミリリットルです。ワインの平均的な圧搾率は1キログラム当たり600~800ミリリットルです。シャンパーニュの圧搾はかなり軽めです。

 シャンパーニュには白ぶどうだけでなく、ピノ・ノワールとムニエという黒ぶどうも使います。強く圧搾すると黒ぶどうの皮による色が出てしまいます。
 ぶどうの果梗(かこう:ぶどうの房を構成している軸の部分)には酸やタンニンなどのポリフェノールが豊富に含まれています。通常のワインを造るときは、酸やタンニンが不足する場合を除き、通常は果梗を除いて圧搾します。ところが、シャンパーニュは果梗に果実がついた房をそのまま圧搾します。これを全房圧搾(whole bunch press)と言います。

 シャンパーニュ地方では昔から垂直バスケット型という手動の圧搾機を使ってきました。メーカーの名にちなんでコカール(Coquard)プレスとも呼ばれています。この圧搾機が1度にプレスできる量は4000キログラムでした。そこでぶどう4000キログラムを1マール(Marc)と言います。ちなみに、フランスではぶどうの搾りかすから造った蒸留酒や搾りかすもマールと呼びます。
 シャンパーニュ地方のぶどう収穫日をきめるのCIVC(Comite Interprofessionnel du Vin de Champagne、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会)です。ぶどうの色、重さ、糖度、酸度などを測定し、各村のぶどう品種ごとに収穫日を決めます。平均的な収穫日は9月半ばです。

 シャンパーニュ地方のぶどう収穫は手作業で行う決まりです。機械を使う収穫は許されていません。手摘みと機械収穫にはコストと収穫したぶどうの品質の点でいろんな議論があります。手摘みの方が収穫したぶどうの品質が良いとは限りません。

 機械収穫は房からぶどうの実が落ちてしまったり、腐った果実や葉や時には虫や小動物も取り込む欠点があります。一方で、最近のぶどう収穫機械は、未熟なぶどうを摘み取らないような工夫もなされており、品質よりも摘み取り量の多さにこだわる作業者よりも質の高い収穫ができる場合もあると言われます。

 手摘みで収穫したぶどうは収穫用のかごから専用の容器に移され、速やかに圧搾所に搬送されます。収穫から圧搾までの時間が長引くことのないように、約1900もの圧搾所がシャンパーニュの全域に分散して配置されています。
 シャンパーニュに使われている主なぶどうの品種はピノ・ノワール(Pinot Noir)、シャルドネ(Chardonnay)、ムニエ(Meunier)です。ほかに、プティ・メリエ(Petit Meslier)、アルバンヌ(Arbane)、ピノ・ブラン(Pinot Blanc)、ピノ・グリ(Pinot Gris)などの品種を使うこともできます。

 シャンパーニュを造るにはシャンパーニュ地方全域のぶどうを混ぜて使うことができます。また、醸造の過程で収穫年の違うワインを混ぜることもできます。ブルゴーニュ地方のワイン造りはぶどうの品種をブレンドすることはなく、さらに使うぶどうの収穫場所を地方→地区→村→畑と区切る範囲が狭くなるほどワインの価値が高いとするのと対照的です。

 シャンパーニュ地方はブルゴーニュの最北端にあるシャブリ地区よりもさらに北に位置します。多種類のぶどうや収穫年の違うワインをブレンドすることは、厳しい気候の中で毎年、安定した量のワインを造るのに役立っています。