とことん軽声が少ない台湾華語 | 台湾華語と台湾語、 ときどき台湾ひとり旅

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※2020年6月の記事に加筆しました。

 

台湾華語の発音に関しての3大特徴(中国の普通話との違い)は

 

 1、軽声が少ない。
 2、捲舌音が少ない。
 3、アル化語が少ない。
ということだろう(ピッチの幅が狭く且つ第3声が低め。という特徴もある)。ま、2と3は「舌を巻かない」という点で共通しているので、大きく分けると「軽声が少ない」ことと「舌を巻かない」こと、となる。

これは、日本や中国で中国語を勉強した人が台湾に行ったり台湾のドラマを見たり台湾の人と話したりするとすぐに気づく大きな違いである。

「舌を巻かない」に関してはほぼ台湾語の影響。というか中国でも南方の人はあまり舌を巻かない。南方方言には捲舌音がないものが多いから。

台湾華語に軽声が少ないことの要因は台湾語だけの影響ではなく(台湾語にも少ないけど軽声はある)、複合的な要因が存在しているようだ。
 
台湾華語の軽声の少なさは、そりゃもう徹底している。

1)まず、軽声があってもなくても意味には影響しないことば、当然ながら軽声にはならない。例えば“沒關係”。普通話では最後の“係”は軽声になって“Méi guān xi”「めいぐあんし」とかるーく発音する。

それが台湾では規範としても“係”は4声で“Méi guān xì”だし、実際には“Méi guān xī”「めいぐあんしーー」と最後の「しー」が高くて伸びる音になる。

2)そして、軽声のあるなしで意味を区別することばでさえ、台湾では軽声で発音しないことが多い。

例えば“地方(dìfāng)”と“地方(dìfang)”、“東西(dōngxī)”と“東西(dōngxi)”。意味はそれぞれ前者は「地方(ちほう)」、後者は「ところ」。前者は「東西(とうざい)」、後者は「もの」、となる。

しかし、台湾ではこの手の語彙に関しても軽声で発音することは少ない。“買東西(買い物する)”は、普通話では“mǎi dōngxi”で、上の「めいぐあんし」と同じように「まいどんし」、最後の「し」はかるーく発音する。でも台湾ではほぼ、確実に、“mǎi dōngxī” である。「まいどんしーー」、最後は高くて平らな「しーー」になるのである。

3)さらに、これだけでは済まないのが台湾のすごいところで、おかあさんの“媽媽(māma)”や、お兄さんの“哥哥(gēge)”など、重ね型の名詞でさえも、普通話のように後が軽声になったりしない。これは台湾語の影響が大きそうだが、いや、かなりすごいことである。

わたしの学生時代の恩師は台湾人、70代。1949年に大陸から渡ってきた外省人である。捲舌音もちゃんとあって大陸の普通話にかなり近い。その先生が"媽媽”を“māmā”「マーマー」と発音するのである!かなり前のことだが、これには相当な衝撃を受けたたまりであった。
 
逆に一定期間台湾華語への接触を主とした生活を送っていると、中国のドラマや映画を久しぶりに見たときの違和感もハンパない(↓の過去記事)。巻き舌もそうだが、中国の軽声の多さが、もう気になって気になって。慣れとは恐ろしい。