不完全な切り紙細工 -63ページ目

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある
























































 人がいる海

 同じ一つの海にさまざまな形で人は集まり

 決めていた目的を

 あるいは決めることもない望みを

 手に取ろうとして

 海辺で息をしているのが僕には聞こえる


 それぞれの人の

 それぞれの海

 よく見知った者も見知らぬ者も

 でも皆が一様に海の水に関わろうとする


 海に在るものは何か

 なぜ人は海にやってくるのか

 その本当の理由など誰も知りはしない

 ただ海が太古の昔よりそこに在り

 今もそこに在るということ以外に

 どんな理由があると言うのだろう


 個別の理由は如何様にも語れよう

 だが恋するように

 いつの間にか人が

 海辺に立って深い溜息をもらすのは


 海が太古の昔よりそこに在り

 今もそこに在るということ以外に

 どんな理由があると言うのだろう


 海から生まれた者は

 海に焦がれ

 海に還ることをいつも願っているに違いない










Sound Sketches by Graham Lynch