それぞれの海 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある
























































 人がいる海

 同じ一つの海にさまざまな形で人は集まり

 決めていた目的を

 あるいは決めることもない望みを

 手に取ろうとして

 海辺で息をしているのが僕には聞こえる


 それぞれの人の

 それぞれの海

 よく見知った者も見知らぬ者も

 でも皆が一様に海の水に関わろうとする


 海に在るものは何か

 なぜ人は海にやってくるのか

 その本当の理由など誰も知りはしない

 ただ海が太古の昔よりそこに在り

 今もそこに在るということ以外に

 どんな理由があると言うのだろう


 個別の理由は如何様にも語れよう

 だが恋するように

 いつの間にか人が

 海辺に立って深い溜息をもらすのは


 海が太古の昔よりそこに在り

 今もそこに在るということ以外に

 どんな理由があると言うのだろう


 海から生まれた者は

 海に焦がれ

 海に還ることをいつも願っているに違いない










Sound Sketches by Graham Lynch