同じ一つながりの海岸線であっても
それぞれの場所で海は違った顔をする
岩場の多い「磯」と砂の「浜」は
文字の違い以上に大きく違う様相を持つ
海に向かって突出した岩場や陸は
大きければ「岬」
小さければ「崎」
いずれも大小によらず岩場が多いから磯になりやすく
磯釣りを楽しむ人が立っている姿を見ることもある
この辺りの浜の水は透き通っているというほどではない
汚れているということでなくても
いろいろな栄養素の混じる海水は透明度が減るのだろうし
浜であれば打ち寄せる波が砂や諸々の粒子を巻き上げるのかもしれない
磯は浜と違って波が砂や砂の中の諸々のものを巻き上げないので
水は比較的澄んでいる
もっともこれは日本海と太平洋でも異なるし
海岸線の形や潮の流れによっても違ってくるのは周知のことだろう
そもそも岬や崎は
陸が海に突出している地形で潮の流れを遮る傾向にあり
遠浅の砂地を経ることなく外洋の水が打ち当たる
消波ブロックが崎の突端から浜までの間に何列か並んで波を受け止めていた
崎から最も外側の消波ブロックまでの間の磯は
この辺りでも水流と波が強く水が澄んでいる
しかしまた同じ理由から海水浴客はやっては来ないので
海はなおさら自然のままに保たれることになる
だからなのか
そしてまた崎の峰のちょうど陰になる時間が長いせいでもあるのか
その一帯は海とそこで生きた生物の姿を
揺らめいて柔らかに光を反射する透明な水面の下に見せてくれる場所だった

そのことは時が移っていった今もなお変わることがなかった
磯の水は変わらず透明なまま
水底にはかってと何一つ変わらぬ
揺らめく水面の作り出す光の文様が揺れている
以前は乱雑に置かれていたように思えたテトラポッドは姿を消していたが
海は変わらなかったのだ
人間の時間の短さと海の時間の長さとの鮮やかな差異が
歳月の後に戻ってきた僕の胸を殊のほか熱くした