大きさと小ささに | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 大きなものの小ささと
 小さなものの大きさを

 宙に舞う砂一粒が土になり
 海は陽に熱せられ風になり
 
 星の粒
 月の海
 銀河の端の名もない星の欠片が歌った歌が
 宇宙の果てまで広がっていき

 子どもの小さな手が覆(くつがえ)す空から
 大笑いが落ちてくる

 この星は熱砂のように膨れ上がり
 朝露の水晶玉に吸い込まれて光り出す

 平衡と混乱の絶妙なコンビネーション
 街中にぶちまけられた花の香り

 木陰に置き忘れられた自転車の
 サドルの上の二頭の蝶がひいていく風の馬車

 小枝の上の鳥たちの煌(きら)めくシンフォニー
 大樹がそよ風に微かに揺らぐ緩(ゆる)やかな音

 初夏の大扉の前の蟻の隊列
 また夜が来て
 森の傍(かたわ)らの泉から出る小川を囲む蛍の平野

 大きなものの小ささと
 小さなものの大きさを
 代わる代わる知ることになる
 この季節

 それこそは
 生きる意味をそのままに具現する時間