それを失った日
僕は月を見ていた
冴え冴えとした美しい満月
よりにもよってこんな夜に
そんなことは少しも考えなかった
月がさせてくれなかった
その深々と夜空から照らす光で
そのおかげで僕は失ったことを
悲しんだりはしなかった
月
ただの満月がそれから
僕の
何かに
月でありながら
月以上のものになった
物である月が
物以上のものになったのだ
長い何千年もの年月の後に
月が失われる日が来るなら
そのときこそ土になっている僕は
あの世の神に言うだろう
あの月を僕の代わりに蘇らせてほしいと
何億何千という僕が僕と同じように
救われるはずだからと
物である月が
物以上のものになったのだ
ただ
あの日
僕のような人間を
ただ明るく照らしたことによって