柊さんの夜明け前の写真に
陽はまだ昇っていない
なめらかに静止する田植え前の水面
何故か「生きた鏡」という言葉を連想する
鏡はかすかに色づき始める空を映しているけれど
その面はガラスのようには頑(かたく)なではない
流動する力のようなものを秘めている
昇り来る陽のかすかに小豆色の光と
夜を支配していた闇が
争うことなく今は揺れあって
空と水との濡れた暗い藍色を描き始める
街はまだ眠っている
野も己の覚醒にまだ気づかない
愛すべき人たちの遠い眠りに
沈黙して聞く自らの吐息を送りたいと
束の間の間だけ願う時間
すべての人がやがて自らの生を生きていくのを
明るい金色の朝日が照らし出す前に
祈るように押し黙って夜明け前を眺める