行きつ戻りつ | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 温かいと思っていると寒くなり

 また暖かくなり

 今度は本当に暖かくなると思っていると底冷える


 
 桜咲く前の花冷え

 奇妙な気候が繰り返す

 そしてまた僕も行きつ戻りつ繰り返し


 人生は大事件より小さな日々の反復が決めるのだと

 言われて育ち

 そう思っているもけれど


 今年のこの反復は何だろう

 終わりそうで終わらない

 始まりそうで始まらない


 
 そうして逡巡していると

 忽然とすべての花が開くのか

 それとも驚くべきほど強烈な寒の戻りが


 ああそうなったら

 きっと桜吹雪の中に

 雪まみれのマンモスが降ってくるに違いない

 
 しょうがない

 そんなときは僕は椅子に座って

 ただ音だけに向き合って沈黙することにする


 しんしんと降る桜の花を夢に見て







 
 音:『繰り返しの不安』