雲よ | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 雲よ

 この碧き水の星の子にして友よ

 球形の荒野を包み

 ときには怒ることもある

 鬱勃たる力よ

 光の翳り

 嵐の申し子

 雨と雪の母

 烈しき風の日の今日も

 空に浮かぶ巨塊

 陽光までがお前に遠慮する










 飛ぶ者たちの遥かなる遠景

 荒々しくないときはお前はいつも柔らかに

 寄り添ってくれる恋人ですらある

 










 この日

 木々の遥か上

 真っ青な空に立ち上がって

 春に呼びかけているようなお前に

 僕はこの身のすべてを委ねてしまおうとさえ思うのだ