梅咲けば | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




 花咲くを喜びて
 喜びてまた悲し花咲くは
 名のみのうちの春や往く

 開こうとして
 開きゆく花の
 悲しきは
 なにゆえか

 時いまだ
 時いまだしと思いしを
 見事に咲くを
 悲しむはなにゆえか

 花咲くを喜びて
 喜びてまた悲し花咲くは
 名のみのうちの春や往く





















 何かを今か今かと待ちわびていて
 それが今まさに実現するというときになって
 急に不安になったり悲しく感じたりするのはいったい何故なのだろう

 結局すべてのことは「これから」と思い
 そのためにエネルギーを使っているとき
 何かの「ために」生きているときが素晴らしくエクサイティングなのであって
 その「何か」は起きてしまえば
 起こるべくして起こることだったかのように変わっていってしまうのだろう

 そしてその「何か」が休息に色を失い意味を見いだせなくなることさえある

 そうなのだとしたら
 その「何か」ではなくて「何かのため」の時間こそが生きるということなのだ