水辺の早春賦(2)水くぐる | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 鳥の背の水滴のように
 気づかないほど小さな波紋が鳥たちの前に

 鳥が立てたものではないらしい
 小雨でもない

 何か目に見えない小動物なのだろうか

 





 そう思っていると

 そこここで






 夕暮れ近くまで水をくぐる







 まるで動きのあるままに凍りつきでもしたような

 あるいは水飴に似て甘やかな
 春の匂いでもするような

 そしてまた水に潜った鳥の形を想わせる水の形



 それでもこの形はすぐに消えて

 なめらかな水面になる



 そして

 また







 この繰り返し
 その回数が次第に次第に増して

 春へ辿りつく