水辺の早春賦(1) | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 春は名のみかと思わないでもないけれど
 けれどそれでも
 葉を落とした枝の広がりに
 何かしら冬と違うものがある
 広がろうとするような力を感じる





 竹の葉の色もどこかしら若い緑の色が光っている







 木を水没させた水の色も






 葦の頭が黄色く萌えるように見えるのは
 おそらくは光のせいなのだろうが







 そして水の色が何処か違うのは
 空の色が違うせいなのだろうとも思うけれど







 その陽の光の色合いが明るく感じられるのは
 もはや気のせいではない






 木々の枝の色が変わって見えるようになるとき
 枝にはこれから伸びだそうとする新芽の色が重なっている
 水さえもその新芽あるいはまだ蕾の色を引き受けるように
 青くなり始める

 





 早春の午後
 気づき得るものは早春の陽の光が
 沈むとき
 何かが昨日とは違うのだということ