踊るとき | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 
 踊るとき
 膝から下は別の生き物にして
 勝手にステップを踏んで行くように
 太腿は帆が風に鳴るように
 ぶんぶんと

 踊るとき
 腕は二本とも身体から切り離し
 宙に螺旋を描く二羽の鳥にして
 あなたの海を舞うように
 はらはらと

 踊るとき意識は捨てて
 必要なら瓶一本ほどのワインを空けて
 頭はどこか遠くにあるように
 何も要らない何も考えない
 マリオネットのように軽々と

 踊る姿の影絵のように
 光の中に翻(ひるがえ)る
 風のような生き方を我がものにして
 あなたの空を行くように
 時のずっと向こうまで揚々(ようよう)と

 踊るとき
 こういうことでなければ
 どのような時どのような場所で踊ろうと
 自由でなければ踊ったことにはならないと

 それが踊るということさ