春の小径 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




 細小井(いさらい)を出でて小春の細小川(いささがわ)  酔鯨子






 小さな林を回り込む細道を散策して
 ふと見れば
 茂みの形どおりに鮮やかな影に隠れるように小さな泉
 そのきららと澄み切った水の
 小刻みに揺れながら流れて
 乾いた土の上で
 小さな流れになっていたのを
 ああ春なのだと思って眺めている


 そういうことができる春
 うたかたのときであったとしても
 こころ躍るものだと思っては
 また径を行く











       いさらい いささがわ
       小さな泉 小さな川
       いずれもの「いさ」の音のやさしさと煌めきにうたれて