雨の降る昼下がり
どんより曇った鉛の空がそこにあるのかどうかも
わからない
遠い時間の先を夢見て
遠い時間の昔を遠い目で見やるように思い出す
これは誰の目か
記憶の彼方
雨粒の降下する幾千幾億の垂線の向こう側に
もはや覚えてもいない出来事の雨に濡れた匂いがする
僕は誰だったか
小島の磯の流木と小さな貝が出会って生まれた
波の音だったのか
何をしていたか
誰かを恋したか愛したか
誰かを憎んだか怒ったか
遠い時間の彼方の潮の満ち干は既に感情の色香を失い
灰色の海となって
藻屑のように砂粒のように
今僕が死ぬようなことがあったなら
僕はきっとあの
色を失わないときの海に戻るのだろう
雨は心の遠い夢
見る間も見た後でも柔らかく色を失って
どこか時間の果てのほうへと流れていく
雨は心の遠い明日
余りにも確かな不確かさに色を失って
どこか時間の果てのほうへと流れていく
