鳥と枝とは太古から一緒に生きてきたのではないかと
ふと思った
空を飛ぶようになり身体は軽くなり
しなやかな翼を得たが
その分だけ鳥たちは非力になった
地上を歩いていたのでは必ずしも安全ではなくなり
それでも地の実りあるいは地に生きる生き物を食べなければならないなら
天空と大地の間に中継点が必要だったのかもしれない
木が花や実を鳥たちに示して
枝の上でも食べることができると誘い
鳥たちが種子を運んでくれるようにと願ったこともあっただろう
とまれる枝は木と鳥たちの相互に不可欠なものになった
水鳥と言われる鳥たちも
水の中の魚を漁る夏は水辺に憩いの場所を見つけもしたが
凍てつく冬
弱くなった光では水中の魚の影は見にくいのかもしれない
冬になってから
水面をつついている鷺は何度も見たが
見事にダイブして漁る姿は見かけなくなった
理由はわからないけれど
それが季節ということなのかとも思う
数が減ったという事実は変わらないが
予想以上に多くの鷺たちが残留していた
そしてその多くは樹上に場所を見つけたかのようだ
静かに舞い降りて枝に憩う
そういう光景を僕は期待していたのだけれど
そんな例は実は稀なのだった

なぜなら
少なくともここの木々は大樹は少なく
その枝々もまた鳥たちの脚のように細く
しかも狭い空間を争うように密集している
それでも
雀やそのくらいの大きさの鳥であれば
身軽に枝と枝の間をくぐっては
安息の枝にすぐにも到達できるのだが
鷺ほどの大きさになると
密集した枝に羽を絡めとられないように
あるいはつい体当りして羽を傷めぬように
ちょうど自分にあった空間を提供してくれる枝ぶりを探さねばならない
木の頂きで眠るのは
外敵や強風を考えれば安全とは言えないだろうし
それに鷺たちは歩いてやってきて枝にとまるのではない
空を勢いよく舞って木に近づくので
それなり急ブレーキが必要にもなるのだろう
しかもあの長い脚だ
小鳥のように身体のすぐ傍にある短い脚とは違って
身体ごと枝に近づいてから
ちょんと脚を伸ばして枝にとまるというわけにはいかない
だから鷺たちは
水や平坦な土地に降りるより遥かに難しい動作を必要とする
飛び立つのとは反対に羽で空気抵抗を作り出し
そうしながらあの長い脚を速やかに伸ばして
目的の枝を捉えなければならないのだ

夕暮れには
仲間たちが次々に枝を求めて降り立ってくる
速度を誤れば体当たりも起きかねず
ときには前に降り立とうとしている仲間の頭上をかすめて追い抜いてから
安定な枝を確保しなければならなくなる


その鷺たちの有様は
枝という乱流に巻かれながら
お互いに衝突すまいと必死で狭い滑走路を見つめ
安全な着陸地点を探している
パイロットたちのようにさえ見えるのだ
鷺たちはかなりの夕闇でも飛ぶ姿を見ることがあるから
夕闇で急に盲(めしい)てしまうわけではないのだろうが
枝たちの微妙で複雑な伸び上がりの総てが見えるわけでもないだろう
ときにはバランスを失って慌て
今一度舞い上がってから
再着陸を試みなければならなくこともあった
音も絶えた冬の夕暮れに
ふわりとやってきたかに見える鷺たちの羽音が
さわさわさわと何度となく繰り返す
鷺にとってはいささか苦労の多い帰投ではあるけれど
それに集中している彼らを僕は枝の下から脅かすことなく眺めやり
水面を飛ぶときには余り見ることのなかった
少し奇妙な
この上なく美しい飛翔の形を鮮やかなままに記憶に刻もうとしていた

大池は幾層もの木に囲まれていて木には事欠かないのだが
そのすべての木が鷺たちの休息場所になるわけではないらしい
広い池の周囲のほんの何箇所かに二三羽ずつの姿が白い点のように見える
その中でも
この一隅は十数羽も鷺たちが集まる場所だった
池が少し奥まった入江のようになっていて
周囲から少し見えにくい場所でもあるから
外敵が来ない安心できる場所なのかと思ったりしたが
多くないにせよ人通りが全くないわけではない
理由は他にあったのだ







