今を | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 冬のさなかに
 不意に感じる春めいた暖かさ
 その奇妙さに沸き上がってくるもの

 冬が終わるのか
 
 冬よ終わるな
 そして春が来るのなら
 春よ終わるな
 夏よ終わるな
 秋よ終わるな

 過ぎゆくことを怖れるのではなく
 やがて来ることを

 冬を止めるな
 それでも春が生まれ来るなら
 春を止めるな
 夏を止めるな
 秋を止めるな

 そうだ
 今を止めるな
 やがて来るもののためなどに

 この意味のない
 充たされていない
 空白の今を