くちづけの理由 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある








 あなたの胸にくちづけたのは
 愛していたからでもなければ
 あなたが欲しかったからでもない

 あなたの胸にくちづけたのは
 桜色の二つの蕾に触れたかったからでも
 パンの柔らかな膨らみを忘れまいとしたからでもない

 ただあまりに白く冷たい肌の悲しさに
 唇とこの心の震えが止まらずに
 どうすればどうすればよいのかただ分からずに

 投げ出されたまま過ぎてゆく時の姿の悲しさに
 近づいてくる降誕祭の夜の明るさに
 どうすればどうすればよいのかただ分からずに