その日には | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




『花の約束』





  それは寒い日

  水辺を歩くと風が鳴っていた

  痛いほどの冷たさで手が凍りそうだったけれど

  僕はその身を切るような冷たさを愛した

  生きている証のように思ったからだ

  鳥たちも風に乗って悠々と舞っていた

  部屋に戻ってから

  しばらく外を眺めていた

  灰色の雲の輪郭が銀色に耀いて

  それから僕は

  未来について考えた

  いろんな人の明日を遠い未来を

  それは花を思うことに似ていると思う

  説明はできない感覚だけれど

  それから僕は

  スクリーンに指を転がして

  絵の練習をしようと思った

  僕の未来

  できるならまた数多くの絵を描いて

  好きな本を読み耽(ふけ)り

  また幾ばくかの言葉を連ねて

  時間を測り直す

  そんな生き方を

  





  
『ふたつ』