雨を見ていた | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



       『 butterfly beyond the rain 』   




 磯伝いに歩いて
 降り続ける雨が風に押されて
 陸の奥までも濡らしていく

 秋

 濡れて重くなれば葉はおびただしく落ちる
 もっと集めねば
 集めねば温(ぬく)もれぬ手がまだ雨に冷たいと

 夏

 破屋の雨樋を揺らして
 流れ落ちる雨の唇の先の小さな花の
 匂いが波のように巻き上がった

 春

 仄かに増した暖かさのなかを
 氷雨を思い出したように
 咲きかけた花の上で青い蝶が翅を閉じる

 冬

 雨と波濤が真っ白な吹雪になって
 世界を包もうとする咆哮の姿を
 海辺の駅で凍てついたまま見ていた








Legends' Mist by Kourosh Dini