孤独であるということは | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 孤独であるということは
 一冊の楽譜のようなものかもしれない

 すべての生の出来事を
 ただ一冊の中に書き留めて
 そこに在る音だけを
 ひたすらに奏で続ける
 最後のページが終わるまで
 休むことを知らずに

 悲しき歌も喜びの歌も
 晴れ渡る朝も雨降る夜も
 連打される音の煌き
 長き沈黙の休止符も
 時とともに繰られていくページの
 上で踊って消えてゆく

 もはやそれを開いて
 歌う者
 奏でる者が訪れなくなった後にさえ
 静かな部屋の古い机の上に置かれて
 閉じられたまま
 いのちの証(あかし)を抱き続ける

 そのために生きた者たちの記録
 すべての生の出来事を受けとめた
 音のない音楽

 乾いて軽い紙の碑(いしぶみ)