嵐が夜を | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 嵐が夜を掻き回していった

 鉛のように重い雨と
 荒々しい神のような風が闇を突き破って
 枕に置かれた僕の頭を
 小石のように巻き上げた

 耳元で叫んで地団駄踏んで
 逞しい木を揺さぶりながら
 草の葉を吹き鳴らし
 家々の頬を平手で打って止まらなかった

 安寧の日を疑いもせずに生きている
 非力な僕たち人間の眠りを
 今こそ断ち切る時だと言わんばかりに
 
 轟々と

 けれど嵐が過ぎ去ると

 明るい秋の日が街や野をふくふくと満たしている
 もうこれで目的は果たしたのだと言うこともなく