震えていた天使の手 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 天使が降りてきて

 その子の身体を浄めて抱きあげようとした

 閉じた瞼の奥に

 明日を夢見るような美しい瞳が見えて

 天使の手は震え
 
 連れ去ることができなくなって

 翼を羽撃(ばた)かせたまま立っていた

 おかげでその子は

 今も行きどころがなくて

 白い山の上で静かに眠っている

 その子は天使の

 震える手の夢を見るのだろうか

 それとも羽撃(ばた)く翼の夢を

 見るのだろうか

 飛び上がれなかった天使は

 山の花になり

 今でもその子の傍に咲いている