星を見る | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




 嵐の夜の揺れる船べりに座ったまま

 雲垂れこめた空を見上げて星を見る

 見上げた僕の顔には重い雨が落ちかかり
 
 僕の乾いていた目は

 瞼の中をするすると通り過ぎていく雨粒に濡らされて

 透明になる

 雲の奥底で一心に輝いている星がひとつ

 僕の目の透明な井戸に落ちてくる

 嵐のなかで僕は君を抱(いだ)き続けて

 そのまま幾星霜の夜を過ぎ

 嵐が去った煌めく朝に笑うだろう

 その星のまだ僕の目の井戸の奥に揺れているのに驚いて