なぜ雨が | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 なぜ僕は雨が好きなのだろう
 ずぶ濡れになったり
 冷たかったりするのに
 川を溢れさせ土砂を押し流し
 みんなを困らせたりするのに

 なぜ僕は雨が好きなのだろう
 暗い空と長い雨宿り
 歩くのに邪魔な傘
 水溜りを弾き飛ばしてくる車
 それなのに

 なぜ僕は雨が好きなのだろう
 それはきっと僕が人が嫌いだから
 お愛想笑いや怒鳴り声
 みんな遠ざけてしまうから
 誰も遊びにこないから

 なぜ僕は雨が好きなのだろう
 きっとそれは
 灰色に濡れたカーテンに
 「向こう側」があると思うから
 もうすぐ何処かに行けると思うから