水の調べ | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 幽(かそけ)きは水の調べ
 秋陽の隅をからころと
 土手の上まで昇り来る

 揺らめいて草に広がる
 片時の調べよ

 目に迫りくるレースの光の
 刻(とき)を照り返す眩しさに
 心うばわれて

 願わくはこのままに
 いつまでも燦めいてあれと
 祈り同化して歌おうか



 われはなんじとともにいこいなん
 かたときのながきねむりを