秋のブラウス | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




  どこまでも音が聞こえない光の日

  物干し棹の
  仄かにベージュの白いブラウスが

  風に誘われて
  野原を飛んでいった

  彷徨(さまよ)う人になり

  ときどき
  秋の木々の葉と色を競いあい
  午後二時半過ぎの太陽に話しかけたりもした

  やがて水気は消えて
  透き通るほどにやわらかに乾いたので
  女主人のもとに戻ることにした

  風と陽の残り香が匂うように
  すっぽりと身体を包んであげて
 

  ふくらんだ秋を彼女の肌に届けよう