爾来夜 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 夜が野辺に女を落としていった

 雪うさぎのような乳房に月がくちづけると

 秋が生まれた



 そのせいかどうかは知らないが

 爾来



 夜は恋も悲しく色づいて

 白み始めたしののめに

 胸の上はらりと葉の落ちてくる夢を見る