まだカーディガンも着ていない | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある











  夏が遠ざかり

  秋の小さな実が自分の色を見つける頃には

  ときどき光の泡が

  裸の君を包むことがあるだろう


  まだカーディガンも着ていない

  夏の名残りの服のなかで

  乾いた小さな日溜まりが

  くるくると笑いながら君を愛撫する


  くすぐったくて君も笑い

  光の泡を胸に押さえてとどめようとするけれど

  泡はまるで夏の昼下がりのサイダーみたいに

  君をほんの少しだけ愛したら


  瞬く間に

  秋の陽射しに広がって

  今度は空をくすぐりに行ってしまう


  そんな気ままな光の泡を

  君はやさしく微笑んで

  静かに見送る秋のようなひと

  それとも秋陽のなかに駆け出していく