初秋の夕空を
空鯨船が飛んでいた
もう飛ぶことはないと思っていた空鯨船
轟轟と雲と風とをかき分けて
いつか楽器を抱えて小走りに
コンサートに向かう道の上空を悠々と飛んでいた
それ以来もう何年も見かけない
キール震わして飛ぶあの船が
何を告げに来たのだろう
何を歌っているのだろう
あの身体に似合わぬ悲しげな高い声
時の大海(おおうみ)航(わた)る船
お前の母港はどこにある
遥か海神(わたつみ)の懐の
時を忘れた島の陰
人魚たちの霧のようなコラールに包まれて
ああまた空鯨船が飛んでいく